政権の政策を批判するだけで「日本人でない」認定される? 参政党草案の危険性、憲法訴訟のプロが分析

政権の政策を批判するだけで「日本人でない」認定される? 参政党草案の危険性、憲法訴訟のプロが分析

先の参院選で15議席を確保し、存在感を増している参政党。「日本人ファースト」というキャッチコピーは保守層に広く受け入れられた。

同党の主張は、憲法草案「新日本国憲法」に色濃く反映されている。中でも注目を集めるのが、国民の要件として「日本を大切にする心」を明記した点だ。

憲法訴訟を多く手がける平裕介弁護士は「極めて抽象的。政権批判をしたら国民ではないという認定もできてしまう文言になっていると言わざるを得ない」と強い危機感を示す。

●「日本を大切にする心」に潜むリスク

草案第5条第1項は、国民の要件として「父または母が日本人であり、日本語を母国語とし、日本を大切にする心を有することを基準として、法律で定める」と規定している。

これについて平弁護士は「たとえば、時の政権の政策を批判するだけで『日本を大切にする心を有していない』と認定されかねない」と指摘する。

この条文の脚注には「我が国に対する害意がないことをもって足りると解すべきである」という説明があるが、平弁護士は「これは一つの見解に過ぎず、変更される可能性があるので、そう考えているのであれば本文に書く必要があるし、『害意がない』というのも基準としてはなお漠然不明確であり、問題が解消されることにはならない」と懸念を示した。

抽象的な「国民」の要件は恣意的に広く解釈され、国民が有するとされる権利・自由の剥奪につながりかねないため、「立憲的な憲法として機能しない。第2案を作成する際は削除を含めた見直しが必要」と強調した。

●理屈の上では「治安維持法」のような法律制定も可能に

参政党の草案には、現行憲法が保障する「現行犯以外の令状なしの逮捕禁止」「拷問の禁止」といった人権規定が存在しない。

平弁護士は「戦前の治安維持法のような法律も、理屈の上では制定可能になる」と危険性を語る。

たとえば「参政党の憲法草案に断固反対」と書かれたプラカードを掲げる平穏なデモであっても、逮捕や拷問が理屈の上では可能となってしまうというのだ。

「近代憲法の基本は国家に対する猜疑心。(参政党案は)『自分たちは悪用しない』という前提で作られており、根本的な視点が欠落している」と断じた。

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