混合性結合組織病(MCTD)という名前を聞いたことがないという人も多いのではないでしょうか。
混合性結合組織病(MCTD)とは、女性に多く発症する指定難病の1つです。メカニズムや原因など解明されていない部分が多く、根本治療も見つかっていません。
症状には個人差がありますが、肺高血圧症を合併すると命を落とす可能性もあるため、早期発見・早期治療が重要です。
本記事では混合性結合組織病(MCTD)の症状について紹介します。
※この記事はメディカルドックにて『混合性結合組織病(MCTD)の症状と原因』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。
混合性結合組織病(MCTD)の症状と原因

混合性結合組織病(MCTD)とはどのような病気ですか?
混合性結合組織病(MCTD)は全身性エリテマトーデス様・強皮症様・多発性筋炎/皮膚筋炎様のうち2つ以上の症状が混在し、血液検査で抗UI-RNP値が高値陽性となる病気です。日本で1993年に厚生労働省から特定疾患の認定を受けた難病の1つで、男女比は1:13〜16と女性の発症割合が圧倒的に多いです。
発症年齢は30〜40歳代に多くみられますが、小児から高齢者まで幅広く発症します。米国では全身性強皮症の亜系や複数の膠原病が重なった病気の1つとみなされています。小児が発症した場合は、全身性エリテマトーデス様症状が強く出て、ほかの強皮症様・多発性筋炎/皮膚筋炎様の比率は少ないです。
混合性結合組織病(MCTD)にはどのような症状がありますか?
症状は、共通してみられる症状と全身性エリテマトーデス様・強皮症様・多発性筋炎/皮膚筋炎様の症状が混ざる混合症状・合併症があり、どの症状が出現するかは個人差があります。共通症状としては、レイノー現象が約80〜90%の人にみられます。レイノー現象は混合性結合組織病(MCTD)の特徴的な初期症状です。寒冷刺激や精神的な緊張によって手足の血管が収縮することで、手足が白くなった後に紫色・赤色と変色を経て元の状態に戻るのが特徴です。末梢への血流量が減少することで症状が出現し、手足の冷感・しびれ・手指の腫脹がみられます。
全身性エリテマトーデス様症状としては、多発関節炎・リンパ節腫脹・顔面紅潮・心膜炎、胸膜炎・腎炎がみられます。関節炎は、関節リウマチのような手指の変形を伴う場合もあり、区別がつきにくいです。腎炎は全身性エリテマトーデスより軽症であることが多く、ネフローゼ症候群や腎不全にまで至ることは少ないとされています。
強皮症様は手指に限局した皮膚硬化・間質性肺炎・食道機能低下が出現し、全身性強皮症と酷似しています。食道機能低下の自覚症状は、胸やけ・つかえ感などです。
多発性筋炎様症状は体幹に近い手足の筋力低下が見られますが、自覚症状は少ない傾向にあります。立てなくなってしまったり、寝たきりになってしまったりするほど重症化するのは稀です。
ほかにも無菌性髄膜炎や三叉神経障害だけでなく、生命に影響を及ぼす肺高血圧症を合併することもあります。疲れやすい・動作時の息切れ・動悸が初期の自覚症状として現れるので、症状が出現した場合は早期発見・早期治療が重要になります。
混合性結合組織病(MCTD)の主な原因は何でしょうか?
混合性結合組織病(MCTD)を発症した人の血液中に、抗UI-RNPという自己抗体が検出されるため、自己免疫疾患の1つに分類されています。しかしほかの膠原病と同様に、何故この抗UI-RNPができるのかはまだ解明されていません。また抗UI-RNPが自分自身の体に障害をきたしている証拠もなく、混合性結合組織病(MCTD)のメカニズムは不明です。しかし遺伝的要因が関係しているのではないかと考えられています。
編集部まとめ

混合性結合組織病(MCTD)は原因不明の病気で、予防法も分かっていません。
もし発症した場合には周りの理解・協力を得ながら、上手く付き合っていく必要があります。
また重篤な合併症である肺高血圧症予防も、とても重要です。
もしレイノー現象・風邪症状のない発熱・息切れ・動悸などが1日に何度も出るようであれば、早めに医療機関を受診してください。
早期発見・早期治療を行うことで、合併症を予防し辛い症状も緩和できるでしょう。
参考文献
混合性結合組織病(MCTD)(日本リウマチ学会)
混合性結合組織病の診断と治療の進歩
混合性結合組織病の診療ガイドライン(改訂第3版)

