自律神経を整える生活習慣
編集部
自律神経を整えるには、まず何から始めたらいいですか?
中村先生
多くの人が職場や家庭でなんらかのストレスを抱えており、通勤や業務の場面で症状が出現する人も少なくありません。そうしたときに大切なのは、我慢するのではなく、自分を守る行動をとることです。胸の痛みや動悸を感じたら1人で抱え込まず、職場の産業医や専門機関に相談する、配置転換や働き方の調整を上司に伝えるといった工夫が有効です。
編集部
そのほかのストレスには、どのように対処したらいいでしょうか?
中村先生
ストレスに強い心を育てることは、心臓神経症の予防に大切です。そのとき、助けになるのは「漢方薬」です。例えば、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)や苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)などの漢方薬はストレスを和らげ、自律神経の乱れからくる心身の不調に効果が期待できます。そうした漢方薬を利用しながら心を安定させ、ストレスに強くなるようなメンタルづくりが、心臓神経症の発症の予防につながります。
編集部
日常的にできることはありますか?
中村先生
上質な睡眠はストレスを和らげる効果が期待できるので、まずは睡眠の質を高めることが重要です。自律神経は昼夜のリズムに深く関わっており、睡眠が乱れると交感神経が過剰に働きやすくなります。寝る前のスマホ使用を控える、照明を暗くする、毎日決まった時間に寝起きするなど、生活リズムを整えることが第一歩になります。
編集部
そのほかにもあれば教えてください。
中村先生
食事や運動も重要です。特に、腸内環境を整える発酵食品や食物繊維を摂ることは、自律神経の調整に役立ちます。また、過剰なカフェインやアルコールは自律神経を乱すため注意が必要です。運動については激しいものを避け、ゆったりしたウォーキングやヨガ、ストレッチなど、リラックスを促す内容がおすすめです。
編集部
ストレスを溜めないコツはありますか?
中村先生
深呼吸や瞑想、軽い散歩、好きな音楽を聴くなど、気持ちが落ち着く習慣を取り入れましょう。趣味を持つのもいいと思います。
編集部
漢方薬などを使いながら、生活習慣を整えるのがいいのですね。
中村先生
当院では、心臓神経症の患者さんの約半数に漢方薬を処方しており、多くの人が効果を実感しています。特に基礎疾患のない若い人の場合は効果を感じやすいことに加え、体への負担も少ないため妊娠中の女性でも使いやすいメリットもあります。漢方薬は保険適用が可能なので、気になる人は医師に聞いてみてください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
中村先生
心臓神経症は心臓そのものに大きな異常が認められないため、「大したことはない」「そのうち良くなる」と軽く考えられてしまうことも少なくありません。しかし、胸の痛みやドキッとするような動悸の裏には、狭心症や心筋梗塞など重大な心疾患が隠れている可能性もあります。そのため、「気のせいだろう」と放置せず、症状が繰り返し起こる場合や強く不安を感じるときには、早めに循環器内科の専門医に相談することが大切です。
編集部まとめ
精神的な負担が増えると、心臓へ悪影響を及ぼすことがわかりました。適切な検査や診断を受けることで安心できるだけでなく、万が一の病気を早期に発見し、治療につなげることができます。気になる症状があれば、早めに医師に相談しましょう。

