
松嶋菜々子が主演を務めるドラマ「おコメの女-国税局資料調査課・雑国室-」テレビ朝日系/TVerにて配信)。同作は、テレビ朝日系列の連続ドラマ初主演となる松嶋が、“決して脱税を許さない”東京国税局の敏腕国税調査官・米田正子(よねだせいこ)を演じる社会派・痛快エンターテイメントドラマで、3月5日のの放送で最終回を迎えた。
今作は脚本家チーム『g . O . A . T』(ゴート)が脚本を担当し、“チームライティング”で執筆。近年日本でも取り入れられつつある手法ではあるが、まだまだ先駆けとなる挑戦的な方法で物語を描き切った。
このたびWEBザテレビジョンでは、『g . O . A . T』の一員である脚本家の山田能龍氏と熊本浩武氏にインタビューを実施。“チームライティング”の魅力や裏側を明かしてくれた。
■導入され始めている“チームライティング”という手法
ーーはじめに、『g . O . A . T』という脚本チームについて改めて教えてください。
株式会社gに所属する脚本家のチーム名です。GOATとは、Greatest Of All Time(史上最高)の頭文字を取ったスラングで、そういった気持ちでチームライティングに取り組もうと名付けられました。
今回、チームで書いた脚本が好評いただいているとのことなので、もし今後も継続するようであれば、『g . O . A . T』という屋号の元に、毎回選手を変えても面白いのではないかとも考えています。僕ら以外にも面白い脚本家がたくさん所属する事務所なので。
ーー脚本家の皆さんでチームを組んで書かれるのは、そもそも珍しいことなのでしょうか?
山田能龍氏(以下、山田):どちらかというとまだ珍しい方なのではないでしょうか。
第1話からラストまで一人で書き切る形や、複数人入っていても話ごとに区切って完全分業で書く形が主流です。僕らはそれとは性質が違うので、珍しいと思います。
ーー今作では、国税局が舞台という専門性のある難しいテーマを扱っていたかと思います。チームでどのように脚本を組み立てていったのですか?
熊本浩武氏(以下、熊本):実際にせりふを書くなど脚本に取り掛かる側と、国税関係や税金関係の難しい知識を調べるメンバーがいて、みんなで調べたり書いたりしたものを組み合わせて作っていました。
ーー1話の中でもいろいろな方が協力して作られていたのですね。
山田:そうですね。基本的には熊本さんと僕が中心として筆を入れていたのですが、話によっては僕らではない人が初稿を書いて、そこから引き取ることもありました。
途中で上手くいかなくなった際には、プロデューサーや監督から頂いたフィードバックを元にもう一度分解し、それぞれのシークエンスごとに担当して書き直すこともありましたね。
他にも、例えば熊本さんと僕で前半と後半に分けて書いたものを、交換してローラーをかけるなどして進めていたのですが、これは今の日本での脚本の作り方としては少ない方かなと思います。
■「視点が多く多面的に作れること」が魅力

ーーチームライティングだからこその良さはどんなところに感じましたか?
山田:我々脚本家だけではなく、監督やP(プロデューサー)部、俳優部からのアイデアなど、視点が多く多面的に作られていく良さの一つだと感じます。
映画であれば、誰か一人の感覚で一枚絵を作るのが美学とされているところがありますが、木曜夜9時の国民的な枠において、たくさんの方の目に耐えうるには立体的である必要があると思うんです。そういった面で、いろいろな人の視点と気づきが入ることは大きいと思います。
熊本:誰か一人が中心となって進んでいくと、意外と意見が出しにくくて。「それでいいのかな?」と思いつつ進んでしまうことがあるんです。その点、チームでやっているとアイデアの出しやすさは感じました。
ただ、みんなの意見を平等に取り入れるのも、それはそれで中途半端なものが出来て良くないのですが…。中心になる人が存在しつつ、みんなで足りないものを補っていく形で進めていたので、自分が想定していたよりもプラスアルファされているな、良い作り方だなと思いました。
山田:あとは、やってみて初めて分かったのですが、連ドラに向いているなと。こういった職業を扱うときは特に、いろいろな視点が入って良いなと思います。
熊本:そうですね。
■「こうなっていたんだ!と知るのが面白かった」
ーー実際に出来上がった映像を見てどう感じられましたか?
山田:やはり「あのキャラクターたちが動いている!」と思うので、シンプルにうれしいですね。さらに今作はとんでもなく素晴らしい俳優陣が出演していたので、見ていてテンションが上がりました。
熊本:ザッコク事務所の間取りは書く段階では決まっておらず、「こっちに台所があるんだろうな」「ここで米を炊いているんだろうな」とふわっとイメージしながら書いていたので、映像になったときに「こうなっていたんだ!」と知るのが面白かったです。
ーー個人的に好きなシーンや気に入っているせりふはありますか?

山田:どれもこれもお気に入りですね。熊本さんはどうですか?
熊本:第3話の(長濱ねるさん演じる)優香はとても良かったと思いました。ピンポイントで言うと、池田(鉄洋)さん、あんなに遊んでいたんですね、と(笑)。
山田:確かに面白かったです。
あとは全体として、もちろんベストを尽くして書いているのですが「先バレしてしまわないかな?」と少しウィークに感じていたところも、演出や俳優部の演技で全然そう感じさせない仕上がりにしてくれていて。
熊本:書いているときは先々の答えを知っているから「バレてしまわないかな?」と思うんですよね。
山田:「ここは俳優部に負担をかけるかな?」「演出のパワーで持っていってもらうことになるかな?」と感じていた部分も、そんな心配はいらなかったなという映像になっていて。
本当はすべてを隅から隅まで書きたいですが、限られた尺の中で優先順位をつけていくので、ショートカットすることもあり…。そこをちゃんと演技と演出で繋いでくれているところを見るとやはりうれしく感じます。
ーーSNSをはじめとした反響はいかがでしたか?

山田:SNSでエゴサをしていたら、物語の前半段階では「企業の人間じゃなくて政治家にメスを入れろよ」という感想をよく見かけていました。
熊本:「製作陣は今の政治を見てどう感じているのだろうか」みたいな。
山田:そうそう。後半にかけてしっかり政治家の方に寄っていっていたので、当時は「もうすぐそうなるから待っててよ」と思いながら感想を読んでいました(笑)。
とにかくP部の世の中を読む力がすごいなと。とてもありがたかったです。

