入り口は、ちょっと見逃しそうになる。けど、一度のぞいたら、もう忘れられない。
布施の商店街の一角に、週4日・1日たった3時間だけ開く立ち飲み屋がある。
「立呑処おおにし」。
その扉の向こうには、あたたかい笑い声と、「よう来たな」の空気が満ちている。
ここでは、知らない人同士が、いつのまにか「つれ」になる。そんな魔法みたいな時間が、ちゃんと現実にある。

扉の向こうに広がる、“ただいま”の景色
夕方、布施の商店街をふらふら歩いていると、どこからか笑い声が聞こえてくる。立ち止まって耳を澄ますと、その声は、目立たない小さな扉の奥から漏れていた。
それが、「立呑処おおにし」。

週4日、たった3時間だけ。看板も控えめで、知らないと見逃してしまうほどの佇まい。だけど、扉を開けるとすぐに、ぎゅっと詰まった空間に人と人の距離がにじんでいる。
L字のカウンターにぎゅっと集まる常連たち。初めて訪れても、不思議と「よぉ来たな」と迎えられる。たまたま隣になった人と話し込むうちに、あっという間に「つれ」になってしまう。そんな場所。
「おかあさん、忘れてるで!」

まるでテレビで見たようなお笑い劇場?そんな日常が、この店にはある。
ある夜、カウンター越しに聞こえた声。「レンジでチンしたの、出すの忘れてるで!」と笑う常連さんに、ママさんが「ほんまやわ、ごめんごめん」と笑い返す。そのやりとりがあたたかくて、思わず頬がゆるんだ。
ここにあるのは、飾らない日常。特別なサービスも演出もない。けれど、ふとしたやりとりのなかに、この町のリズムが宿っている気がする。
