「神の舌を持つ男」と呼ばれる石神秀幸さん。実は、小学生の頃は偏食が多い子供だったそうです。そんな少年を変えたのは、一冊の漫画でした。クックパッドのポッドキャスト番組「ぼくらはみんな食べている」で、石神さんが自身の原点を語ってくれました。
『美味しんぼ』が変えた人生
「小学校の高学年から中学生の頃、漫画『美味しんぼ』を読んで一気に食に目覚めました。主人公の山岡士郎に憧れて、『究極のメニュー』を自分なりに追い求めていたんです」
中学2年からは本格的に食べ歩きを開始。蕎麦やうどん、とんかつ、カレーといった親しみやすいジャンルから、時には大人に混じってカウンターの寿司店まで。ジャンルを問わず、一人で各地の名店を巡っていたといいます。
「今思うと、少し変わった子供だったかもしれません(笑)。友達を誘うこともありましたが、予算が続かなかったり、僕ほどの熱量がなかったりで、結局1回きり。だから、自分のペースで楽しめる一人歩きが基本になりました」
当時は、中学生なりに工夫して、食べ歩きの資金を自ら工面していた石神さん。周囲の友人がそのお金をファッションに注ぎ込む中、石神さんはそのすべてを「食」への投資に充てていたそうです。当時、料理人になるという選択肢は考えていなかったそうですが、「好きな食に関わって生きていくんだろうな」という予感のようなものは、当時からぼんやりと抱いていたそうです。
「どうやって作るんだろう」という好奇心
石神さんは、食べ歩きの際に一切メモを取らないといいます。
「メモを取ると、取ったことで安心して忘れちゃうっていうのもあるんじゃないかなと思ってて。意識して食べると、割と記憶するんですよ。嗅覚って記憶に残りやすいらしくて、子供の頃のおじいちゃんの家のタンスの匂いとか覚えてたりするじゃないですか。だから味とか香りも記憶できるんじゃないかなと」
食べたものを家で再現することも、味覚を鍛えることに繋がったと言います。
「目黒の『とんき』で食べて『おお、これはすごい』と思って、それを再現しようとしたり。カレー屋さんに行ったら、色んなスパイス買ってきて再現したり。どうしたらこんな料理になるんだろうな、っていう好奇心ですね。『美味しんぼ』を読んで、料理がこんなに深いものなんだと思ったから、やってみたくなっちゃう」
自分で作ってみることで、「あの時の味はこういうのを入れたから、これぐらいのしょっぱさだったんだな」「醤油の角が丸く感じるな」といったことが分かるようになる。何で構成されているのか、どんな調理工程でどんな変化があるのか。それが分かると、食べながら「多分こういう調理法なんだろうな」と推測するようになり、より深く脳に刻み込まれるそうです。

