圧迫骨折が寝たきり高齢者に与える影響

圧迫骨折は強い痛みで身体を動かしにくくし、さらに筋力低下や関節拘縮を進めて介護量を増やす原因です。また、姿勢の悪化や呼吸機能・食欲の低下などから、生活の質が大きく損なわれ、寝たきり状態が固定化しやすいです。
痛みや姿勢変化による生活の質の低下
圧迫骨折を起こすと、強い痛みのために寝返りや起き上がり、座位保持などの基本的な動きがつらくなり、活動量が大きく低下します。その結果、ベッド上で同じ姿勢が続き、背中が丸くなる(円背:えんぱい)・身長が低くなるなどの姿勢変化が進行し、服の着替えや洗面、排泄動作など日常生活の多くに制限がかかることで、生活の質が大きく損なわれてしまいます。
参照:『高齢者の圧迫骨折対策|症状から治療まで 』(もりぐち清水会病院)
呼吸や内臓機能への影響
圧迫骨折によって背骨の前方がつぶれると、背中が丸くなり胸郭が圧迫されるため、肺が十分に膨らまず呼吸が浅くなりやすいです。呼吸が浅い状態が続くと、少しの動作でも息切れしやすくなり、肺炎などの呼吸器合併症のリスクも高まります。また、前かがみ姿勢による胸郭・腹部の圧迫は、胃や腸などの内臓も圧迫し、食欲低下や食後の胃もたれ、便秘などの消化機能の低下を招き、栄養状態の悪化や全身の体力低下につながることが指摘されています。
参照:『高齢者の円背姿勢と呼吸機能の関係 』(CiNii Research)
介護負担や寝たきり状態の長期化
圧迫骨折が寝たきり高齢の方に起こると、強い痛みで起き上がりや立ち上がりが難しくなり、排泄や食事介助などあらゆる場面で介助量が増え、家族や介護者の身体的・精神的負担が大きいです。また、痛みを避けるために動かない期間が長引くと筋力低下や関節拘縮、廃用症候群が進行し、「動けない→ますます介護が必要→さらに活動量が減る」悪循環が生じ、寝たきり状態が固定化しやすいです。さらに、圧迫骨折前からすでに介護を受けていた高齢の方は、骨折後に要介護度が悪化するリスクが10倍程度に上ると報告されており、介護負担と寝たきり期間の長期化が大きな課題になっています。
参照:『高齢者のせぼねの骨折と介護リスク ビッグデータで関連性明らかに~もともと要介護の人、介護度上昇リスクがおよそ10倍』(群馬大学)
寝たきり高齢者の圧迫骨折の治療と対応

寝たきり高齢の方の圧迫骨折の治療は、安静とコルセットなどによる保存療法を基本としつつ、痛み止めや骨粗しょう症の治療薬で症状を和らげ、必要に応じてリハビリや低侵襲手術を検討します。
保存療法が中心となるケース
寝たきり高齢の方の圧迫骨折は、保存療法が選ばれることが少なくないのは、手術の負担や合併症のリスクが高いためです。全身の筋力や心肺機能が低下している方は、麻酔や手術そのものが大きな負担となり、肺炎や心不全、せん妄などを引き起こすおそれがあります。また、圧迫骨折の多くは時間の経過とともに骨が自然に癒合し、痛みも軽減していくことが少なくないため、安静や鎮痛薬、コルセットによる固定などで症状をコントロールしながら経過をみる方法が現実的です。
痛みのコントロールと安静管理
痛みが強いままだと、寝返りや起き上がりができず、さらに活動量が落ちて筋力低下や廃用症候群を招いてしまうため、適切な鎮痛薬(内服薬・貼付薬・一時的な注射薬など)を組み合わせて痛みを和らげていきます。また、骨折直後は無理な動きで変形や痛みが悪化しないよう、医師の指示に沿って安静度を調整し、必要に応じてコルセットや体位保持具(枕・クッション・ポジショニングピローなど)を用いて背骨への負担を減らします。痛みが落ち着いてきた段階で、少しずつ体位変換や座位練習を進めることで、安静による悪影響を抑えることが大切です。
参照:『高齢者の圧迫骨折対策|症状から治療まで 』(もりぐち清水会病院)
リハビリや体位管理の考え方
できるだけ安静にしつつ、できるだけ早く動くことを両立させるリハビリと体位管理が重要です。まず急性期は、痛みが強い姿勢を避け、背骨への負担が少ない姿勢を保つことが基本です。枕やクッションを用いて腰の反りを和らげ、同じ向きで寝続けないように、ゆっくりとした体位変換を定期的に行います。そのうえで、痛みが許す範囲から、ベッド上での関節可動域訓練や足首の運動、呼吸訓練などを少しずつ始め、筋力低下と拘縮を防ぎます。段階的に座位、立位、歩行へと進めていくことで、寝たきりの長期化を防ぎ、残された機能を活かすことが大切です。
参照:『高齢者の圧迫骨折対策|症状から治療まで 』(もりぐち清水会病院)

