
英国発の名探偵といえば、多くの人がシャーロック・ホームズを思い浮かべるだろう。鋭い観察眼と論理で事件を解き明かす“推理の天才”は、探偵ドラマの王道である。しかし、同じ英国ミステリーでも「ブラウン神父」の面白さは少し方向が違う。主人公は探偵ではなく、田舎町のカトリック司祭。お茶目な神父さんの穏やかな笑顔の裏で、人の心の奥にある秘密や葛藤を見抜きながら事件の真相へ近づいていく。英国では2013年に放送を開始し、現在はシーズン13まで続くほど人気を集めている。BS12トゥエルビ(BS222ch※全国無料)では、3月16日(月)夜8時より「ブラウン神父」シーズン2の放送を開始する。ここでは「シャーロック・ホームズ」とは異なる「ブラウン神父」の魅力を見ていきたい。
■論理の名探偵ホームズと、心に寄り添うブラウン神父
英国ミステリーを代表する名探偵といえば、作家アーサー・コナン・ドイルが生み出したシャーロック・ホームズだ。鋭い観察眼と論理的思考で証拠を積み重ね、複雑に見える事件の謎を解き明かしていく。その推理の鮮やかさは、ミステリーの醍醐味ともいえる。
一方、「ブラウン神父」の主人公ブラウン神父は、探偵ではなく田舎町の教会に仕える司祭である。舞台は1950年代の英国コッツウォルズ地方。穏やかな神父として町の人々と向き合いながら暮らす中で、思いがけず事件に関わり、その真相へと近づいていく。
ホームズが証拠や論理を手がかりに事件を解いていく人物だとすれば、ブラウン神父が目を向けるのは人の心の動きである。司祭として多くの悩みや懺悔を聞いてきた経験から、人が抱える弱さや迷いをよく知っている。何気ない言葉の違和感や、ふとした沈黙、人物同士の関係の変化などから心の動きを感じ取り、そこから少しずつ真相へと近づいていく。

■トリックだけではなく、人の事情が見えてくる物語
ホームズの物語では、密室の謎や巧妙なアリバイなど、犯人が仕掛けたトリックを解き明かす過程が見どころになる。事件はパズルのように提示され、証拠と論理によって解決へと導かれていく。
それに対して「ブラウン神父」では、事件の背後にある人間関係や心の動きが大きな意味を持つ。トリックが登場することもあるが、それは知的なゲームというよりも、人が罪を隠そうとする過程の中で生まれるものとして描かれることが多い。人物同士の関係や過去の出来事、誰かが胸の内に抱えている思いなどが重なり合いながら、事件の全体像がゆっくりと見えてくる。
BS12トゥエルビにて3月16日(月)から始まるシーズン2の第1話「機械に宿る亡霊」でも、そうした物語の特徴がよく表れている。村に持ち込まれた新しい機械装置をめぐり、事故のようにも見える不可解な死が起きる。町では“呪われた機械”という噂まで広がるが、ブラウン神父は迷信に惑わされず、関わる人々の不安や思いに目を向けながら事件の真相へと迫っていく。

■「ブラウン神父」の視聴後に残る、静かな余韻と味わい深さ
思わずクスリとさせられるのは、事件の合間に繰り広げられる、なんとも賑やかで人間味あふれる掛け合いだ。美しいコッツウォルズの風景の中、お節介な秘書や自由奔放な貴族の友人、そしてどこか憎めない警察官たちが、お茶目な神父と丁々発止のやり取りを繰り広げる。ミステリーでありながら、こうしたユーモアや温かな日常がしっかり描かれることで、物語には人間ドラマとしての深い奥行きが生まれている。
事件が解決したあとも、単に犯人が逮捕されて終わるだけではない。罪を犯した人物の事情や心の動きが静かに浮かび上がり、物語は落ち着いた余韻の中で幕を閉じることがある。論理で謎を解き明かす爽快感が魅力のホームズ型ミステリーとは少し違い、「ブラウン神父」は人の物語が静かに心に残る作品である。
ミステリーとしての面白さと、人間ドラマとしての味わい。その両方をゆったり楽しめる英国ドラマが「ブラウン神父」である。BS12トゥエルビで始まるシーズン2の放送をきっかけに、この独特の世界観に触れてみてほしい。
◆文=鈴木康道


