億万長者の依頼で制作

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19世紀の画家カール・ケーラーが描いた絵画「妻の恋人たち(My Wife’s Lovers)」は、美術史上でもっとも壮大な猫の絵だといえるでしょう。
米国の億万長者Kate Birdsall Johnsonの依頼で制作されたこの絵には、42匹の猫が描かれています。Kateがこれまで飼った数多くの猫たち(ほとんどがアンゴラ猫)を、絵の中でよみがえらせているのです。
2016年になって、この絵がオークションで82万6千ドル(約1億1900万円)という高値で落札されたため、SNSなどで大きな話題になりました。
1856年オーストリア生まれのカール・ケーラーは、オーストラリアとニュージーランドに渡って競馬の絵を描き、画家としてのキャリアを築きました。その後米国のヨセミテへ向かう途中、サンフランシスコに立ち寄り、風景画を描く予定でした。
そんなとき、美術品収集と慈善活動で知られる大富豪Kateの邸宅に招待され、彼女の愛猫の絵を制作するよう依頼を受けたのです。
彼女の夏の別荘は40室もあるヴィクトリア様式の邸宅で、飼い猫たちは1フロアを丸ごと占領し、それぞれに専属の使用人が付き添っていたともいわれるほど甘やかされていました。ここにはほかに犬、馬、牛、オウム、インコ、カナリアなどが飼われていて、カールはこの邸宅に3年間も滞在し、猫たちのスケッチを描きながら、それぞれの個性をじっくりと観察したのでした。
猫をいきいきと描いた大作

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1891年に完成した「妻の恋人たち」は、高さ1.8メートル、幅2.4メートル、重さ90キログラムもある大作でした。42匹の猫は絹のじゅうたんを敷いた階段の上に並んで、個性豊かなポーズで描かれています。休んでいる猫もいれば、遊んでいたり、仲良く抱き合ったりしている猫もいます。
画の左下には蛾に群がる猫たちが描かれ、中央には緑色の目と、白い毛皮に茶色と黄色の模様を持つ美しい猫Sultanがいます。その隣には青い目をした白いアンゴラ猫が描かれています。これはたぶんHis Highnessと呼ばれた猫でしょう。
カールはこの絵の報酬として5000ドルを受け取ったと言われており、これは今日の価値で約17万ドル(2440万円)に相当します。この絵画は1893年のシカゴ万国博覧会で初公開され、大きな話題を呼びました。
Kateは1893年に亡くなりました。新聞の死亡記事には、「彼女は生前、慈善事業に熱心だったものの、少し風変わりなところもあった。趣味はたくさんの猫を飼うこと。絵画を好み、そのコレクションは推定20万ドル以上とされている」と記されています。
彼女は遺言によって、貧しい女性と子どもたちのためにサンフランシスコ病院を設立し、愛猫たちにも少額の養育費を残しました。

