今は訪れる親族もいない1人暮らしの高齢者…待ち受け画面に残されていたものとは【体験談】

今は訪れる親族もいない1人暮らしの高齢者…待ち受け画面に残されていたものとは【体験談】

ガラケーの待ち受けに見えた家族の思い出

ある日、弁当配達に行くと、Tさんが玄関先にしゃがみこんでいました。「いつの間にか、変わっとって……」と言って、小さな携帯電話を差し出してきました。いわゆる“ガラケー”です。表示されている時計の文字が急に小さくなったとのことで、大きく見えるようにしてほしいということでした。


いつもにも増して深いため息をついて肩を落として落ち込んでいるTさんから携帯を預かり、メニューから設定を開き、表示サイズを調整して大きい表示に戻してあげました。「時刻の文字、大きくなりましたよ」と携帯を渡すと、Tさんは無言のまま画面をじっと見つめ、ゆっくりとポケットにしまいました。


お礼の言葉も何もありませんでしたが、私は垣間見たものに少し胸が締め付けられました。ガラケーの待ち受け画面には幼い子どもたちの笑顔が並んでいたのです。ぼやけた写真でしたが、日常の1コマを写したもので、おそらくはお孫さんたちでしょう。ずいぶん前の写真でした。


遠方にいる娘さんとは連絡を取れていないと聞いていましたが、その小さな画面の中には、Tさんと家族が親密だったころの1コマがたしかにありました。


しばらくして猛暑を迎えた夏の盛り、Tさんは急な体調悪化のために入院ということで、弁当の配達は中止となりました。

まとめ

Tさんが在宅当時、ケアマネジャー訪問は月1回程度。Tさんの健康状態はそう悪くなさそうだったので、介護サービスを受ける頻度は低かったとのことでした。私たち弁当配達員が玄関先で交わすほんの数分のやりとりが、Tさんの日々の中でどんな意味を持っているのかはわかりません。ただ、Tさんの長い人生の一端に触れて、Tさんの今のさびしさが改めて伝わってきました。


Tさんが入院したことを知った日。その夜、私はなんとなく、1人で住む遠方の母に電話を入れました。母は幸い元気な様子でした。私の話を聞くと、「高齢者にはそれぞれいろんな人生があったってこと。もちろん、私にもいろいろあったのよ。たとえば……」と、母の思い出話が続きました。私は、それを聞きながら、今度、母のスマートフォンの待ち受け画面に最近の写真を入れたいなあと思いました。



※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。


著者:名和なりえ/50代女性・パート。


※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年8月)

※AI生成画像を使用しています


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