メディカルドック監修医が大腸がんの主な手術内容などを解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「大腸がんの手術費用」はご存知ですか?ステージ別の治療法も医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
齋藤 雄佑(医師)
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。
「大腸がん」とは?
大腸がんは日本で患者数の多いがんの一つです。治療にあたっては手術が中心となりますが、費用や入院期間、治療内容はがんのステージや手術方法によって異なります。本記事では大腸がんの手術費用や入院費用の目安を、手術法ごとに内容とそれぞれのメリット・デメリット、さらにステージ別の治療方針について、分かりやすく解説します。
大腸がんの主な手術内容
内視鏡的切除
内視鏡的切除はお腹を切る手術ではなく、肛門から入れる大腸カメラを使ってポリープやがんを取り除く手術です。大腸がんの多くはポリープから発生すると言われるため、ポリープの段階で切除しておくことが大腸がん予防にもなります。がんが粘膜下層のごく浅い部分までの浸潤にとどまる場合には内視鏡でがん病変を一括切除できることがあります。内視鏡で完全に切除でき、リンパ節転移を起こしにくい病変は内視鏡的切除の適応です。内視鏡的切除は30分〜1時間程度で終了します。小さなポリープなら日帰りも可能ですが、切除後の出血リスクを考えて1〜3日程度入院することもあります。内視鏡的切除のメリットはお腹を切らずに済むため、痛みもほとんどなく回復が非常に早い点です。高齢者や持病がある方でも比較的安全に施行できます。またポリープや早期がんだけを切除するので大腸そのものを温存できます。排便障害など術後の生活への影響もほぼありません。内視鏡的切除のデメリットはがんが粘膜までに留まっているごく早期の段階に限り有効な治療であることです。それ以上に進行している場合は外科的手術が必要です。また手術の合併症として大腸に穴が開く(穿孔)ことや出血が起こる可能性があります。
開腹手術
開腹手術は、お腹を切開して直接臓器を見ながら行う従来からの手術方法で通常、おへその上下にかけて20cmほどお腹を縦に切開しておこないます。腹部を大きく開いて行うため、術者が直接患部を手で触れて確認でき、広い術野で作業できる利点があります。手術内容はがんのある腸管とその周囲のリンパ節を切除し、残った腸をつなぐ(吻合)というものです。
開腹手術のメリットは過去に複数回手術をしており、腹部の癒着が想定される方や緊急でがんの手術を行わなければ行けない方など、幅広い症例に対応可能である点です。また直接臓器でしこりを触知しながら行えるため、切除範囲を確認がしやすいなどの利点があります。また他の手術と違い内視鏡の装置や器具などが不要であり、規模によらずに標準的な手術が行われやすいというメリットがあります。開腹手術のデメリットは腹部の切開が大きいために術後の痛みが強くなったり、腹筋を大きく切るので筋力の回復にも時間がかかります。傷跡も大きく残り美容的観点のメリットがあります。
腹腔鏡手術
腹腔鏡手術とは、お腹に小さな穴を数カか所開けて腹腔鏡と呼ばれるカメラと手術器具を挿入し、体内をモニター映像で見ながらがんを切除する手術方法です。開腹手術のようにお腹を大きく切り開かずに済むため、身体への負担が少ないことが特徴です。5〜12mm程度の小さな傷を4〜5カ所と、腫瘍を取り出すための3〜5cm程度の切開を1カ所設けて手術を行います。お腹に二酸化炭素ガスを入れて膨らませ、臓器の周囲に空間を作って手術をします。腹腔鏡下手術では、がんのある腸の部分と周囲のリンパ節を切除し、残った腸同士をつなぎ合わせる処置(吻合術)まで体内で行います。腹腔鏡補助下手術では、がんの切除や吻合術は体外(開腹)で行います。
腹腔鏡手術のメリットは創が小さいため術後の回復は早く、術後のリハビリも早期に開始できることです。創部が小さいことで創部感染や癒着性腸閉塞などのリスクも低減します。 回復が早いため、入院期間が短縮され、退院後早期の社会復帰が期待できます。またカメラによる拡大映像で細部まで観察しながら手術ができ、繊細な操作が行えます。開腹では見えにくい場所も確認しやすく、出血への対応なども繊細に行える利点があります。デメリットは開腹手術よりも手術時間や全身麻酔の時間が長くなることがあります。また、手術器具や医師の技術など多くの医療リソースを必要とするため、ある程度規模の大きな医療機関で行われる手術です。
ロボット支援手術
ロボット支援手術は、腹腔鏡手術をロボット技術で発展させた最新の方法です。執刀医は患者さんのそばにある操作台に座ってロボットアームを遠隔操作し、手術を進めます。基本的には腹腔鏡手術と同様、お腹に小さな穴を開けてカメラや鉗子(手術器具)を挿入して行う低侵襲手術です。違いは、鉗子などの操作を人間の手ではなくロボットアームが行う点です。入院日数や術後経過は基本的に腹腔鏡手術とほぼ同じと考えてよいでしょう。傷口も小さく痛みも軽いため、多くの場合術後1週間〜10日程度で退院し日常生活に復帰できます。ロボット支援手術のメリットは、ロボットのアーム操作は柔軟であるため狭い骨盤内でも思い通りの角度で操作できます。さらに手ぶれ防止機能や動きを縮小して伝える機能により、繊細で正確な手術が可能です。繊細な操作は出血量の減少にも繋がります。ロボット支援手術のデメリットは設備とコストの問題です。手術支援ロボットは非常に高価な医療機器であり、設置している医療機関が限られます。また手術に追加の費用がかかります。ただし日本では2018年より直腸がん手術を含むいくつかの分野でロボット手術が公的保険適用となったため、自己負担は通常の手術と同様3割で高額療養費制度の適用もあります。

