まずは話してくれたことをやさしく受けとめる

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もしも、わが子から「死にたい」と言われるようなことがあったら、だれでも動揺して「そんなこと言わないで」とか「死ぬなんて、言っちゃダメ」と言いたくなるかもしれません。
でも、まずは子どもの思いを否定せず、「よく話してくれたね」とやさしく受けとめられるといいですよね。
そして、その子が死にたいと思うほど追いつめられている過程に、丁寧に寄り添ってあげてほしいのです。
ときどき、子どもが「死にたい」と言うのは本気ではなく、親を試しているだけだと言う人もいます。リストカットなどの自傷行為をした子に対しても、「そんなのは試し行為だ」と決めつける大人もいます。しかし、その考えはとても危険です。
そういうことをする子どもは、しない子に比べて何十倍も自殺をするリスクが高いのです。「試しているだけで本気ではない」などと断定することはできません。
人はだれでも追いつめられると、あせりを感じるようになりますが、とくに子どもは視野が狭く、大人から見ればそんな状況でなくとも「死ぬしか解決方法がない」と思い込んでしまうこともあるのです。
以前、「私は、好きなマンガの連載が終わったら死ぬと決めています」と診察室で私に打ち明けてくれた中学生の女の子がいました。
その子は発達障害があり、日常生活でさまざまな問題を抱えるうえに、幼少期からの父親の厳しいしつけや人格を否定する言動によって追いつめられ、不登校になっていました。
一時は、ただひたすら、その日がこないことを祈るばかりでした。通院のたびに「来週も来る」という約束をなんとか取りつけ、翌週に無事な姿を見ては、ひそかに胸をなでおろしていました。
それでも、本人が地道に通院を続けてくれるうちに、少しずつですが家族が本人の特性を理解するなどまわりの環境もよくなり、本人のそういった気持ちも落ち着いていきました。
その後、その子は不登校の状態が続いていましたが、高校・大学にも進学しました。
そして今、「先生とカウンセラーのおかげで救われました。生きるのもわるくないかなと思ってます」と伝えてくれたときは涙があふれました。
私たちは、どんな感情を持っていてもいいし、自己肯定感が低いままでも、生きていていいんです。
「死んでしまいたい」「消えてしまいたい」という感情を抱きながら、それでも生きていていいんだよ。追いつめられている、その苦しみも否定されるべきではありません。
また、学校に行けるから価値があって、学校に行けないから価値がないということもありません。
学校に行けても行けなくても、勉強ができてもできなくても、その子はその子のままで価値のある人間なのです。
それが、「死にたい」と必死の思いで伝えてくれる子どもに、私がいちばん伝えたいことです。
児童精神科医のつぶやき
たとえ学校に行けなくても、死んでしまいたいと思っても、あなたは価値ある存在。そのことを全力で子どもに伝えてください
続きはぜひ書籍でご覧ください。
児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること
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※本記事は、『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』<著:精神科医さわ/日本実業出版社>より抜粋・再編集して作成しました。
児童精神科医精神科医さわ塩釜口こころクリニック(名古屋市)院長。児童精神科医。精神保健指定医、精神科専門医、公認心理師。1984年三重県生まれ。開業医の父と薬剤師の母のもとに育ち、南山中学校・高等学校女子部、藤田医科大学医学部卒業。勤務医時代はアルコール依存症など多くの患者と向き合う。発達ユニークな娘2人をシングルで育てる母でもあり、長女の不登校と発達障害の診断をきっかけに、「同じような悩みを持つ親子の支えになりたい」と2021年に塩釜口こころクリニックを開業。開業直後から予約が殺到し、現在も月に約400人の親子を診察。これまで延べ5万人以上の診療に携わる。患者やその保護者からは「同じ母親としての言葉に救われた」「子育てに希望が持てた」「先生に会うと安心する」といった声が多く寄せられ、「生きる勇気をもらえた」と涙を流す患者さんも多い。YouTube「精神科医さわの幸せの処方箋」(登録者数10万人超)、Voicyでの毎朝の音声配信も好評で、「子育てや生きるのがラクになった」と幅広い層に支持されている。著書にベストセラー『子どもが本当に思っていること』(日本実業出版社)、『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』(日本実業出版社)、監修に『こどもアウトプット図鑑』(サンクチュアリ出版)がある。→記事一覧へ
