介護離職がもたらすリスク

離職後の生活には、収入やキャリアの影響だけでなく、心身の健康や社会とのつながりといった面にも、リスクが生じます。
収入の減少や生活不安につながる可能性
介護離職をすると、これまで得ていた収入が途絶えたり、大きく減少したりします。介護は短期間で終わるとは限らず、数年単位で続く場合もあり、貯蓄を切り崩しながら生活せざるをえない状況に陥ることがあります。さらに、離職によって社会保険や年金の加入形態が変わることで、将来の年金額が少なくなることもあります。
キャリアの中断や再就職の難しさ
介護離職をすると、それまで築いたキャリアが中断されます。そして、離職期間が長くなるほど再就職が難しくなったり、年齢や社会のニーズの変化によって希望する仕事が見つかりにくくなったりするリスクが生じます。実際に、介護離職後に再就職できている方の割合は、全体の約3割です。介護離職は、一時的な選択のつもりでも、その後の働き方に長期的な影響を及ぼす可能性があるのです。
参照:『介護離職の現状と課題』(総務省)
介護者の心身への疲労や介護うつ
厚生労働省の調査によると、在宅で介護を行っている方の半数以上が精神的ストレスを感じているとされています。
介護は、身体的な負担だけでなく、先の見えない不安や緊張が続くことによる精神的疲労も大きくなります。こうした負担が積み重なると、慢性的な疲れや睡眠障害、不安感が強まり、介護うつのような健康問題に発展する可能性もあります。
参照:『同居者の主なストレスの悩みやストレスの原因』(厚生労働省)
社会的な孤立につながるリスク
介護を中心とした生活が続くと、他者との関わりが減り、社会的に孤立しやすくなる点も見逃せません。介護離職によって職場とのつながりが途切れると、相談相手や気軽に話す相手がいなくなり、孤独感が強まることもあるでしょう。
介護と仕事を両立させるための制度

国や自治体、職場には、介護と仕事を両立するためのさまざまな制度や支援の仕組みが用意されています。ここでは、介護離職を防ぐために知っておきたい代表的な制度について解説します。
介護保険サービス
介護保険サービスは、日常生活で支援や介護が必要な方やその家族が利用できる公的な支援制度です。要介護(要支援)と認定された方が対象となり、自宅や施設での生活を支えるためのサービスを受けられます。
介護サービスにはさまざまな種類があり、以下のようなものがあります。
サービス名 内容
訪問介護 介護職員などが自宅を訪問し、食事や入浴、排泄などの生活支援を行う。
通所介護(デイサービス) 日帰りで施設に通い、入浴やリハビリテーションなどのサービスを受けられる。
通所リハビリテーション 専門職によるリハビリや、機能訓練を中心に受けられる。
短期入所(ショートステイ) 一定期間だけ施設に滞在でき、介護者が休息をとるための利用も可能。
福祉用具の貸与・購入支援 歩行器や車椅子、介護ベッドなどの福祉用具を利用・購入するための支援が受けられる。
介護保険サービスは、介護する側の負担を減らし、仕事と介護を両立するための支えになります。例えば、仕事の日はデイサービスを利用したり、訪問介護を組み合わせたりすれば、家族の介護負担を分散できます。こうしたサービスをうまく活用することで、無理なく日常生活を支えながら、働き続ける選択肢が広がります。
介護保険サービスを利用するには、市区町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターでの要介護認定の申請が必要です。認定後、ケアプラン(介護支援計画)を作成して、サービス利用が始まります。
参照:
『仕事と介護両立のポイント』(厚生労働省)
『介護保険制度の概要』(厚生労働省老健局)
介護休業制度
介護休業制度とは、家族の介護が必要になったときに、一定期間仕事を休むことができる制度です。
対象となるのは、ケガや病気、心身の障害などにより、2週間以上にわたって継続的な介護が必要な状態にある家族です。介護休業制度の対象となる家族は、次のとおりです。
配偶者(事実婚を含む)
子
父母
配偶者の父母
祖父母
兄弟姉妹
孫
対象家族一人につき、通算93日まで、3回まで分けて介護休業を取得できます。
また、雇用保険に加入している方が一定以上の条件を満たしている場合、休業中は介護給付金を受け取れます。給付額は、休業前の賃金のおよそ67%です。
なお、入社して1年未満の場合や、パート・契約社員の方は、勤務条件によって介護休業を取得できない場合もあります。
介護休業制度を取得するには、休業開始予定日の2週間前までに、事業主に申し出る必要があります。会社の就業規則で申請方法が定められている場合もあるため、早めに人事・総務担当者へ相談しておきましょう。
参照:『介護休業について』(厚生労働省)
介護休暇制度
介護休暇制度とは、家族の介護が必要なときに、仕事を休んで対応できる短期的な休暇制度です。対象となる家族は、介護休業制度と同様です。対象家族が一人の場合は年に5日まで、二人以上の場合は年に10日まで取得できます。
休暇は1日単位だけでなく、時間単位で取得することも可能です。そのため、通院の付き添いやケアマネジャーとの打ち合わせ、介護サービスの調整など、短時間の用事にも柔軟に活用できます。
参照:『介護休暇について』(厚生労働省)
時短勤務や柔軟な働き方の制度
育児・介護休業法では、介護を行う労働者に対して、短時間勤務や所定外労働の制限、深夜労働の制限などの措置を講じるように事業主に求めています。これにより、フルタイム勤務が難しい時期でも、勤務時間を短縮したり、残業の免除を受けたりすることが可能になります。
また、企業によっては、在宅勤務やフレックスタイム制、時差出勤といった柔軟な働き方を導入している場合もあります。制度の内容や利用条件は会社によって異なるため、まずは就業規則や社内制度を確認して、早めに上司や人事担当者に相談しておきましょう。
参照:『短時間勤務等の措置』(厚生労働省)

