白内障はゆっくり進行するため、つい治療を後回しにしがちですが、放置すると見え方だけでなく転倒や事故のリスクも高まります。今回は、治療を早めることで得られるメリットや、手術時期を判断するポイントについて、平井德久眼科の德久先生に聞きました。
※2026年2月取材。
≫【1分動画でわかる】なぜ、白内障の治療は早い方がいいのか?を解説
監修医師:
德久 照朗(平井德久眼科)
医学博士。日本眼科学会認定専門医。2013年、東京慈恵会医科大学卒業。東京労災病院眼科前医長。厚木市立病院眼科前医長。
白内障の治療は早い方がいい理由
編集部
白内障は、なぜ早めに治療した方がいいのですか?
德久先生
早い段階で治療を行えば、視機能の回復がスムーズかつ手術の負担も比較的軽く済む傾向があるからです。白内障はゆっくり進行する病気で、進行するほど視力低下や見えにくさが日常生活に影響します。放置すると生活の質が低下し、転倒や事故のリスクも高まるため、「まだ我慢できる段階」で相談することが大切です。
編集部
生活の面では、どのようなメリットがありますか?
德久先生
早期に治療を行うことで視界の明るさや鮮明さが改善し、読書や運転、外出への不安が減るメリットがあります。視力低下を我慢し続けると行動範囲が狭まり、活動量の低下につながることもあります。
編集部
早期に治療を受けることは、手術の安全性にも関係しますか?
德久先生
はい、関係します。白内障が進行し過ぎると水晶体が硬くなり、手術操作が難しくなることがあります。まだ早期であれば超音波による負担が少なく、手術時間も短縮しやすい傾向があります。結果として、早期であればあるほど合併症のリスクを抑えやすく、術後の回復も比較的スムーズになります。
編集部
白内障が進むと水晶体が硬くなるのですね。
德久先生
そうですね。水晶体の硬さは5段階で評価されます。白内障手術は、水晶体の硬さが2か3程度の段階で行われることが多く、比較的安全に進めやすいとされています。4まで進むと手術中の負担が大きくなり、術後の回復が遅れたり、合併症のリスクが高まったりする可能性があります。見え方に不安を感じたら、早めに眼科で相談することが大切です。
編集部
視力が少し落ちただけでも、治療を考えるべきですか?
德久先生
視力検査の数値だけでなく、「かすむ」「まぶしい」「夕方に見えづらい」などの自覚症状も重要な判断材料です。生活に支障を感じている場合、軽度でも治療することで日常のストレスを減らすことができます。
治療が遅れるとどうなるか?
編集部
白内障を放置すると、どのような問題が出てきますか?
德久先生
白内障を放置すると視力低下が進み、かすみやまぶしさが強くなります。これにより日常生活での転倒や事故のリスクが高まり、外出や運転を控えるようになる人もいます。
編集部
視力低下以外の影響はありますか?
德久先生
白内障が進行すると眼底の検査が難しくなり、ほかの目にまつわる病気の発見が遅れる可能性もあります。また、視力低下は行動量や意欲の低下にもつながり、社会的な活動や運動量が減ることがあります。さらには高齢者の場合、視覚情報の低下が認知機能や生活の自立度に影響したり、社会的な孤立やうつ症状を招いたりする可能性も示唆されています。視力低下を「年齢のせい」と放置しないことが重要です。
編集部
白内障が進行して、うつになることもあるのでしょうか?
德久先生
はい。白内障が進行すると目に入る光が減って、体内時計を調整する刺激が弱くなり、その結果、生活リズムが乱れて気分の落ち込みや抑うつ状態になることがあります。ほかにも、極度に進行すると水晶体が溶け出して強い炎症を起こし、失明に至る危険性もあります。見え方の変化を感じた段階で、早めに眼科を受診することが重要です。
編集部
症状を我慢している人が多いのはなぜですか?
德久先生
白内障は痛みが少なく、ゆっくり進行する病気だからですね。「まだ大丈夫」と思ってしまったり、「手術が怖い」と我慢してしまったりする人が多いのが現状です。手術自体は多くの場合、10分以内で終了する上にほとんど痛みもありません。しかも術後の満足度は非常に高く、「もっと早く受ければよかった」という人もたくさんいます。自覚症状が強く出た時点では、かなり進行しているケースもあるため、我慢が習慣化する前に、定期的な眼科受診で目の状態を確認してください。適切なタイミングを逃さず、手術を決断してほしいと思います。

