人員不足だったのも、加藤さんがキツくなる原因の1つだったのかもしれません。1度のミスも許さずに高圧的な態度で説教をされる。この令和の時代に、こんな人が居るんだなと頭が痛くなりました。
「橋本さん」
「はい!」
「これ出したの、あなた?」
「あ、はい。もう無くなりそうだったので」
「誰に場所聞いたの?」
「社員さんに…」
「はぁ。教えてないこと勝手にやらなくていい。教えてることを先にやってくれる?」
「あ、はい…。すみません」
―—――
「橋本さん」
「はい!」
「今の、予約の電話?」
「はい」
「何で笑う必要あったの?」
「あの、常連のお客様からで…」
「関係ないかな。へらへら電話対応しないでもらえる?」
「す、すみません…」
この頃の私は、1日に何回「すみません」と言っていたのか、考え始めると悲しくなって涙が出そうになります。私の行動1つ1つを監視されているような、どう揚げ足を取ってやろうかと見定めているような、こういう指導が続くと悪い思考にしか考えが働かず、委縮してしまう毎日でした。言い方が少しでも違えば、同じ内容でも受け止め方が全然違うはずなのに…。
加藤さんの声で「橋本さん」と言われると、勝手に肩が強張ってしまうくらい、自分にとって加藤さんは恐怖を感じる存在になってしまっていたんです。好きなことが仕事になって楽しいはずなのに、職場に行く足取りは日に日に重くなっていきました。
度が過ぎる指導で、ストレスが溜まる…
念願のケーキ屋で働くこととなった、葉月さんでしたが、新人指導を担当する・加藤さんに悩まされます…。高圧的な態度で、指摘ばかりされてしまったら、誰でも萎縮してしまうものです。
それから数年後、葉月さんは妊娠。1年間の育児休業を終え、再び同じ職場に復帰。久しぶりに出勤すると、加藤さんの嫌味っぷりはエスカレートしていました。そんな、しんどい日々を支えてくれたのは、ある1人の女性社員でした。
年下社員に救われる日々
「葉月さん、お久しぶりです!ご体調大丈夫ですか?!」
「えみちゃん!ありがとう~、大丈夫よ~!」
「娘さんめっちゃかわいいですね!お子さんの写真とか動画見せてだなんて、お休み中も連絡してすみませんでした!」
「全然!むしろ嬉しいから!」
彼女は中井えみちゃん。私が育休に入る少し前に社員として入って来た、28歳の女の子。加藤さんのモラハラは正直とてもキツイけれど、それを感じているのは私だけではないのが、本当に救いでした。彼女が居てくれるから、また今の職場に復帰しようと思えた部分も大きいです。凄くまっすぐで、自分の意見を上手に伝えられる子。加藤さんのことで落ち込んでいた私に、1番寄り添ってくれたのも彼女です。
職場での経歴は圧倒的に加藤さんの方が長いですが、仕事の回し方や人への伝え方、気遣いの配慮の仕方などを見ていると、えみちゃんの方が効率もよく職場の雰囲気が明るくなっていると感じます。大事なのは生きている年数でも、働いている年数でもなく、いかに自分がそこで役に立てるかを考えて行動できる人なんだなと、彼女から学んでいる日々です。
葉月さんは、中井さんの存在のおかげで、大好きなケーキ屋で働き続けることができています。気遣いができ、明るい雰囲気の中井さんから、葉月さんは刺激をもらっています。
ところが、葉月さんの娘が熱を出し、長期間休みをとったのち、加藤さんからヒドイ仕打ちを受けます。久しぶりに出社し、声をかけたのに、無視されてしまったのです。その後も、まともにコミュニケーションを取ることができず、葉月さんは途方に暮れます。

