もしもの時の「胃腸炎」予防|海外渡航時のリスク管理と災害時の限られた衛生管理術

もしもの時の「胃腸炎」予防|海外渡航時のリスク管理と災害時の限られた衛生管理術

海外旅行や災害時など、通常とは異なる環境では胃腸炎のリスクが高まる場合があります。渡航先の衛生状態や水質、食文化を理解し、適切な予防策を講じることが重要です。また、災害時には水道やトイレなどのインフラが使えなくなることもあり、限られた資源の中での衛生管理が求められます。本章では、特殊な状況下での具体的な感染予防対策について解説します。

中路 幸之助

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

海外渡航時と特殊な状況下での対策

海外渡航時には、日本国内とは異なる衛生環境や食文化に直面することがあり、胃腸炎のリスクが高まる場合があります。渡航前の準備と現地での適切な行動が、感染予防の鍵となります。

渡航先での水と食品の安全管理

渡航先での水の安全性は国や地域によって大きく異なります。水道水が飲用に適さない地域では、必ずボトル入りの水を使用します。開封されていない密封されたボトルを選び、氷も避けるのが安全です。歯磨きや口をすすぐ際も、安全が確認された水を使用することが推奨されます。
生の野菜や果物は、皮をむいて食べられるもの以外は避けるのが無難です。バナナやオレンジなど、皮をむいて食べる果物は比較的安全ですが、サラダやカットフルーツは水で洗浄されている可能性があり、その水が汚染されていれば感染のリスクがあります。加熱された料理を選び、十分に火が通っていることを確認してから食べましょう。

旅行者下痢症への備えと対処

旅行者下痢症は、海外旅行中に発症する下痢症の総称で、多くは細菌やウイルスによる感染が原因です。発展途上国への渡航では、旅行者の20%〜50%が経験するとされ、渡航先の衛生状態や個人の体調によってリスクが変動します。症状は軽度から中等度のことが多く、適切に対処すれば数日で改善することがほとんどです。
渡航前には、経口補水液の粉末や整腸剤などを持参すると安心です。下痢止めについては、前述のとおり使用には注意が必要ですが、移動が長時間に及ぶ場合など、どうしても必要な状況に備えて、医師に相談のうえで処方してもらうことも検討できます。抗菌薬を予防的に服用することは、一般的には推奨されていませんが、特定の基礎疾患がある方や高リスクの渡航では、医師と相談のうえで検討されることもあります。

災害時や非常事態での衛生管理

災害時や非常事態では、水道やトイレなどのインフラが使えなくなることがあり、衛生状態が悪化しやすい環境となります。避難所などでは多くの人が密集して生活するため、感染症が広がりやすく、胃腸炎の集団発生も懸念されます。このような状況下では、限られた資源の中で可能な限りの衛生管理を行うことが重要です。
手洗いができない場合は、アルコール消毒液を使用します。避難所には消毒液が配置されていることが多いですが、個人でも携帯用の消毒液を持参しておくと安心です。トイレの後、食事の前には必ず手指を消毒しましょう。また、ウェットティッシュも手や顔を清潔に保つのに役立ちます。

まとめ

胃腸炎は原因となる病原体によって潜伏期間や症状が異なり、適切な対処法も変わってきます。ウイルス性胃腸炎は感染力が強く集団感染を起こしやすい一方、細菌性胃腸炎は食品衛生管理で予防できることが多いです。症状が現れたら脱水予防を優先とし、無理な食事は避けて段階的に回復を図りましょう。仕事復帰は症状消失後も慎重に判断し、特に食品を扱う職種では十分な期間を置くことが重要です。症状が重い場合や改善しない場合は、早めに医療機関を受診し、専門的な診断と治療を受けることをおすすめします。職場復帰後も感染予防行動を継続し、組織全体で衛生管理体制を整えることが、安全な環境づくりにつながります。

参考文献

厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」

厚生労働省「食中毒」

東京都感染症情報センター「感染性胃腸炎」

配信元: Medical DOC

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