
高校生という多感な時期に、働き盛りだった父が若年性認知症を患う――。そんな衝撃的な実体験を、SNSやブログで淡々と、かつ痛烈に描き出しているのが吉田いらこ(@irakoir)さんだ。
作品『若年性認知症の父親と私』は、父が発症してから亡くなるまでの23年間にわたる軌跡を、娘の視点から描いたセミドキュメンタリー。介護の美談としてではなく、戸惑い、逃避し、葛藤し続けたひとりの人間の記録として、多くの読者の心を揺さぶっている。今回は吉田さんに、当時の心境や創作の裏側に込めた思いを聞いた。
■「知り合いには重すぎるから」SNSを心の吐き出し口に



23年という長い歳月、父の病状について周囲に詳しく語ることは少なかったという吉田さん。しかし、心の奥底には「誰かに聞いてほしい」という切実な願いが澱のように溜まっていた。
「リアルの知り合いに話すのはちょっと重たいと感じていたので、読む読まないの自由があるSNSに載せることにしました。文章は得意ではないので、漫画で自分の気持ちを吐き出そうと思い描き始めました」
自分のため、そして気持ちを整理するために筆を執ったことが、結果として同じような境図にある人々への共感の輪を広げることとなった。
■「健気な娘」ではない、ありのままの姿を描く覚悟
本作を執筆する上で、吉田さんが最も大切にしているのは「正直な気持ち」だ。そこには、一般的な介護漫画に期待されがちな「家族のために献身的に尽くす姿」は描かれていない。
「私は健気に介護をするわけでも、家族のために努力するわけでもない、何もせず過ごしてきました。腹立たしく思う方がいることはわかっていましたが、ありのままの自分を出し、気持ちを吐き出すことだけを考えて描きました」
高校生という若さで直面した過酷な現実に、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった自身の弱さをさらけ出す。その飾らない筆致が、かえって読者に深いリアリティを突きつける。
取材協力:吉田いらこ(@irakoir)
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