血糖値の調節において中心的な役割を果たすのがインスリンです。このホルモンの働きと分泌の仕組みを理解することは、糖尿病という疾患そのものを理解するうえで欠かせません。ここでは膵臓から分泌されるインスリンがどのように血糖値を調整し、糖尿病ではどのような異常が起きているのかを見ていきます。

監修医師:
井筒 琢磨(医師)
2014年 宮城県仙台市立病院 医局
2016年 宮城県仙台市立病院 循環器内科
2019年 社会福祉法人仁生社江戸川病院 糖尿病・代謝・腎臓内科
所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本不整脈心電図学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心エコー学会
インスリンの役割と分泌メカニズム
インスリンは膵臓のβ(ベータ)細胞から分泌されるホルモンであり、血糖値を直接的に下げる中心的なホルモンです。糖尿病の病態を理解するには、インスリンの働きを知ることが不可欠です。
インスリンが血糖値を調節する仕組み
食事により血液中のブドウ糖濃度が上昇すると、膵臓はこれを感知してインスリンを分泌します。インスリンは全身の細胞表面にある受容体に結合し、細胞内へのブドウ糖取り込みを促進します。特に筋肉や脂肪組織では、インスリンの作用によって糖が効率的に利用されます。
また、インスリンは肝臓でのグリコーゲン合成を促進し、ブドウ糖を貯蔵する働きもあります。逆に、空腹時には血糖値の低下に応じてインスリン分泌が減少し、肝臓からのブドウ糖放出が行われることで血糖値が維持されます。このように、インスリンは血糖値を適正範囲に保つための中心的な役割を担っています。
糖尿病におけるインスリン分泌の異常
1型糖尿病では、自己免疫反応によってβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなります。そのため、診断後早期から外部からのインスリン補充が必要となります。
一方、2型糖尿病では、インスリン分泌の低下とインスリン抵抗性(インスリンが効きにくい状態)の両方が関与します。初期には代償的にインスリン分泌が増加しますが、長期間の負担によりβ細胞の機能が徐々に低下し、インスリン分泌能が減少していきます。この段階では、食事療法や運動療法に加えて、経口血糖降下薬やインスリン療法が必要となる場合があります。
まとめ
糖尿病は一度発症すると、完全に治癒することは難しいとされています。しかし、適切な食事管理、定期的な検査、必要に応じたインスリン療法や薬物治療により、血糖値を良好に管理し、合併症の発症や進行を防ぐことは十分に可能です。三大疾病のリスクを低減し、低血糖症状への対処法を身につけることで、安全で質の高い日常生活を送ることができます。自己判断で治療を中断せず、定期的に医療機関を受診し、専門家の助言を受けながら管理を続けていくことが大切です。
参考文献
厚生労働省 e-ヘルスネット「糖尿病」
日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン 2024」
糖尿病情報センター(国立国際医療研究センター)「糖尿病とは」
公益社団法人日本糖尿病協会「糖尿病とは」

