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91歳で逝去した生涯現役俳優、イ・スンジェ氏の遺作ドラマ「犬の声」は、人の言葉を話す犬と殺人事件を解決する異色ミステリーコメディー

91歳で逝去した生涯現役俳優、イ・スンジェ氏の遺作ドラマ「犬の声」は、人の言葉を話す犬と殺人事件を解決する異色ミステリーコメディー

「犬の声」は、3月19日(木)よりCS衛星劇場にて毎週木曜に2話連続放送(全12回)
「犬の声」は、3月19日(木)よりCS衛星劇場にて毎週木曜に2話連続放送(全12回) / (C) IMTV Co.,Ltd. All Rights Reserved

2025年11月に91歳で逝去した韓国の国民的名優、イ・スンジェ氏の遺作となった主演ドラマ「犬の声」が、3月19日(木)よりCS衛星劇場にて放送される(毎週木曜夜11時より2話連続放送/全12話)。本作は、人間の言葉を話す犬がベテラン俳優イ・スンジェ氏と共に次々に起きる殺人事件を解決に導くという斬新な設定のミステリーを軸にしたコメディー。加えて、親子愛やせつない三角関係、世代を超えた交流や、パワフルに人生を楽しむ“シニアベンジャーズ”の活躍など、ヒューマン要素も盛り込んだ、老若男女誰もが楽しめる名作だ。本記事では、作品の魅力と韓国最高齢現役俳優、イ・スンジェ氏について解説する。

■「犬の声」ストーリー:“パワハラ俳優”になってしまったイ・スンジェ

ベテラン俳優のイ・スンジェ(本人役)は、人気アイドル・ヒョンタ(ナム・ユンス)が主演の時代劇にキャスティングされるが、演技に厳しいスンジェとの共演を嫌がったヒョンタのクレームにより、理不尽な降板を告げられる。

怒りが収まらない中、スンジェはスタジオを後にするが、その途中で突然尿意に襲われる。しかし、トイレには鍵が…。仕方なく駐車場で車と車の間に隠れて立ちションをしていると、背後の車が移動してしまい、その姿がヒョンタの出待ちをしていたファンたちに露わに。しかも、運の悪いことにスンジェが放尿していたのは、ヒョンタの車だった…。

降板の腹いせに“尿テロ”をした、と誤解され、あっという間にスンジェは“パワハラ俳優”に…。そんな中、カフェに来たスンジェは、店内の客が自分を非難する幻視を見てパニックになり、うっかり失禁。それを悟られない為に、次回作の打ち合わせにやって来たスタッフを「来るな!」と大声で追い返し、さらに“パワハラ俳優”になってしまった。
「パワハラ俳優」のレッテルを貼られてしまった老俳優、イ・スンジェ
「パワハラ俳優」のレッテルを貼られてしまった老俳優、イ・スンジェ / (C) IMTV Co.,Ltd. All Rights Reserved


■物語の舞台は、韓国・巨済島

しばらく仕事を休むことになった彼は、別荘のある巨済島へ。そこで、食堂の飼い犬・ソフィと出会う。ソフィは人間の言葉を話し、なぜかスンジェだけがそれを理解することができるのだった。

孤独な日々を過ごしていたスンジェの元に、彼と犬猿の仲の俳優、キム・ヨンゴン(本人役)が押しかけてきた。おまけにヨンゴンは、ヘアメイクのオクスク(ソン・オクスク)、脚本家のスジョン(イェ・スジョン)、引退した照明監督のチェム(イム・チェム)を呼び寄せ、不本意な同居生活が始まった。

そんなある日、別荘の温室のガス漏れを、警察官のチョウォン(ヨヌ)に連れられてやって来たソフィが感知。帰宅してきたスンジェにそれを知らせ、彼とシニア仲間たちは間一髪でガス爆発の被害から逃れることができたのだった。

九死に一生を得た仲間たちがスンジェに感謝しているところへ、女性の死亡事件の一報が。元警察犬のソフィは、スンジェを連れて事件現場に向かった。警察は、練炭自殺だと結論付けたが、ソフィは事のてん末を目撃していた犬のグッシーから真相を聞き、「これは他殺だ」とスンジェに伝える。
元警察犬のソフィが人間の言葉を話すのを聞いたスンジェは、自分がいよいよおかしくなってしまったか…と戸惑った…
元警察犬のソフィが人間の言葉を話すのを聞いたスンジェは、自分がいよいよおかしくなってしまったか…と戸惑った… / (C) IMTV Co.,Ltd. All Rights Reserved


■ミステリー、コメディー、ヒューマン…もりだくさんな内容に釘付け

このように、事件が起きるたびにソフィは犬の仲間たちに話を聞き、それをスンジェに伝えるのだが、「犬から聞いた」とは言えない彼は、ソフィの飼い主であるチョウォンに捜査のヒントを与え、事件解決に導いていく。目撃者(?)が猫の時には、ソフィは猫語が話せる犬を訪ねて猫の証言を取り、難事件を解決することも。犯人も、まさか犬や猫が事件を見ていて証言するとは夢にも思わなかっただろう。

スンジェはソフィを頼りにし、その関係は敏腕捜査官と弟子のようで微笑ましい。また、次々に起きる事件も巧みな伏線やどんでん返しがあり、「真犯人は誰なのか」に興味をそそられる。イ・スンジェ氏が脚本家を「アガサ・クリスティのよう」と絶賛したほど“ミステリーもの”として充分楽しめる作品だ。

それだけではなく、物忘れで失敗したり、コンビニのセルフレジやファストフードのセルフオーダーの使い方がわからないシニアの悲哀や、使い方を教える小学生との交流が描かれたり、動物たちのやり取りにほっこりしたり。また、“シニアベンジャーズ”達の痛快な活躍、次第に明らかになっていくスンジェとチョウォンの知られざる関係、結婚式当日に失踪したスンジェの息子・ギドン(パク・ソンウン)の秘密、それに伴うせつない三角関係など、サイドストーリーも充実していて、見始めたら物語に夢中になってしまう。1話約50分があっという間で、全12話を観終わった時には「もっと見たい!」となるはずだ。

ちなみに、タイトルの原題は「ケソリ」。直訳すれば邦題のように「犬の声」だが、「たわごと」「くだらない話」という意味のスラングで使われることが多い言葉だ。
派出所勤務のチョウォン(ヨヌ)は、飼い犬のソフィが事件解決に一役買っていることを知らない…
派出所勤務のチョウォン(ヨヌ)は、飼い犬のソフィが事件解決に一役買っていることを知らない… / (C) IMTV Co.,Ltd. All Rights Reserved


■インパクトのあるタイトルに魅かれて出演を決意

イ・スンジェ氏は、本作の出演のきっかけについて、このインパクトのあるタイトルに興味を持った、と話している。そして、韓国ドラマ史上、初めて犬と人間が直接疎通をして事件を解決する内容にも魅かれたそうだ。また、製作発表会では「最近、大人たちが見られる作品が無い。この作品のように、家族みんなで楽しく見られるドラマがたくさん出てくるべきだ」と語っていた。

本作は、イ・スンジェ氏ありきで製作された作品だ。監督は「“年齢は数字に過ぎない”というメッセージを伝えたかったし、“高齢者”に対するステレオタイプのイメージを破りたかった。本作のシニアたちは、時には分別が無いように見えるが、問題を解決する為に全力を尽くし、若者たちに劣らない感情の起伏を体験しながら前に進む。世代が違う視聴者たちに、年配の方々の姿を未来の自分の姿として自然に感じてほしい」と企画意図を説明している。

ソン・オクスクも「若い方々がタイトルに魅かれて見始め、様々な展開を面白がって見るうちに、“歳をとっても、こんな人生があるんだ”と、親世代を想うことができれば、このドラマは成功だと思う」と語った。
タイトルのインパクトと脚本の面白さに魅かれて出演を決めたイ・スンジェ氏
タイトルのインパクトと脚本の面白さに魅かれて出演を決めたイ・スンジェ氏 / (C) IMTV Co.,Ltd. All Rights Reserved


■69年の俳優人生で初の“演技大賞”受賞

実は本作の撮影時、88歳だったスンジェ氏は、左目を失明しており、右目もほぼ見えていなかったのだそう。そんな状況でも、台本を側近のスタッフに読んでもらい、セリフを完璧に覚えて臨んだ。ソウルから巨済島まで4時間の道のりを20回以上往復し、時には全速力で走るなど体当たりで演じ、全く衰えを見せなかった。「努力と挑戦の無い俳優は、俳優ではない」との持論を体現する姿に、共演者もスタッフも感動と尊敬の念を禁じえなかったそうだ。

そして、本作で「2024 KBS演技大賞」の“大賞”を受賞。意外にもこれが69年の俳優人生で初の“大賞”だった。これまで“功労賞”の受賞は何度もあったが、「演技者は、人気やその他のことではなく、演技で評価されなくてはいけない」と、演技に対して賞を受けたことを心から喜んだ。受賞スピーチで、俳優としての想いを語り、また、この受賞は自分だけのものではなく、ソフィを含む全ての出演者とスタッフに贈られたもの、と謙虚な姿勢も見せ、出席した俳優全員がスタンディングオベーションで敬意を表した。この授賞式が、公式の場での最後の姿となった。
動物好きのスンジェ氏は、撮影中、ソフィとのコミュニケーションもバッチリだった
動物好きのスンジェ氏は、撮影中、ソフィとのコミュニケーションもバッチリだった / (C) IMTV Co.,Ltd. All Rights Reserved


■世代を超えて愛された生涯現役俳優

イ・スンジェ氏は、1956年に演劇の舞台で俳優デビューをした後、2024年の演劇公演で体調を崩してドクターストップにより降板するまで、演劇、ドラマ、映画、と併せて400本以上の作品に出演。生涯現役を貫き、韓国最高齢の俳優となった。

ドラマ「イ・サン」の英祖役などで重厚なイメージが強いが、70歳を超えて出演したシットコム「思いっきりハイキック!」では、大家族のカリスマ家長でありながらAVにハマって家族に隠れて夜な夜な鑑賞するコミカルな“エロジジイ”役を演じ、若い世代からも「ヤドン(=AV)スンジェ」のニックネームで大人気となった。この姿は、今でもネットミームとして繰り返し視聴されているほどだ。

また、2013年には「花よりおじいさん」という老齢俳優たちの海外旅行のリアルバラエティ―でリーダー役を務め、番組の大ヒットと“おじいさんブーム”を巻き起こした。三大名門大学のソウル大学出身で、博識な上に英語やドイツ語も堪能で、この番組でその才能を存分に発揮した。最高齢ながらも誰よりも元気で行動力があり、こうと決めたら突き進む姿に「直進スンジェ」のニックネームで国民に愛された。
重厚な役からコミカルな役まで演じ、バラエティでも人気を博した
重厚な役からコミカルな役まで演じ、バラエティでも人気を博した / (C) IMTV Co.,Ltd. All Rights Reserved


■「“俳優”というのは常に新しい作業に対する挑戦」

「犬の声」のスンジェは気難しく扱いづらい俳優だったが、実際のスンジェ氏は演技に厳しく、1,2作のヒットで浮ついた俳優に苦言を呈する一面はありつつも、どんな役でも不満を言わず、どれだけ長い待ち時間でも自分の出番が来るまで静かに待ち続ける謙虚な人物だった。その姿に、自らの傲慢さを反省し、心を入れ替えた俳優も多い。

「演技は簡単ではない。一生かけても足りないところがある。それでいつも悩んで、また研究して、新しい役が出るたびに参考にする。“俳優”というのは常に新しい作業に対する挑戦」と語り、常に自分にも厳しく、演技のことを考え続けた。

晩年の2025年にも、病床で回復を信じて次回作の台本を読んでおり、側近のスタッフが「健康になったら、したいことは?」と尋ねると、「作品以外に無い」と答えたそうだ。

次回作の夢は叶わなかったが、最後に主演で“イ・スンジェ”を演じたことは感慨深い。私たちはこの「犬の声」で元気で楽しいスンジェ氏にいつでも会える。最後まで現役俳優だったスンジェ氏の、この新たな代表作を是非多くの方に楽しんで見てもらいたい。

◆文=鳥居美保

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