
【ストーリー】
富山県の小さな町で介護士として働く浅岡信治(成田凌)。ソロキャンプが趣味で寡黙な性格の彼は、派手好きでSNSでの動画配信やアイドルの推し活に夢中な妻・明希(山谷花純)との間に温度差を感じながらも、それなりに幸せな日々を送っていた。
だが、2人のささやかな生活は、ある日を境に一変する。地域のクリニックでワクチンを摂取した翌日、明希が自宅で帰らぬ人となってしまったのだ。失意に暮れるなか、愛する妻が亡くなった原因はワクチンにあると考えた浅岡は、妻の遺影を抱えて担当医師・高野(淵上泰史)を激しく糾弾する。
対する高野は「僕にできることがあったら遠慮なく仰ってください」と言うものの、自らの非を認めようとはしない。やりきれない思いは怒りへと変わり、浅岡は雨の日も風の日もクリニックの前に立ち、無言の抗議を続ける。
そんな彼に目を付けたのは、とある事情で地方紙に異動となった記者・福島美波(沢尻エリカ)。上昇志向の強い彼女が「反ワクチンとかどうでもいい。泣ける記事になります」と上司の反対を押し切って世に出したその記事はネットを中心に大バズし、拡散に次ぐ拡散で彼は一躍時の人に。
同僚のすすめでSNSのアカウントを開設した浅岡はあっという間に万超えのフォロワー数を誇るインフルエンサーとなり、“反ワクチンの象徴”として祭り上げられていく。“民意”を得たことでSNSに取りつかれた浅岡は、高野クリニックの前でライブ配信を行い、バッシングを繰り返すなど、日ごとにエスカレートしていくのだった…。

■成田凌と沢尻エリカがワクチンをきっかけに人生を狂わされていく男と地方紙の記者役に挑む!
監督を務めるのは、中国アニメ映画『羅小黒戦記』(2019 年)の国内配給を手がけ、『白蛇:縁起』(2019 年)の日本語吹替版プロデューサーや『ゴールド・ボーイ』(2024年)の製作総指揮を務めた白金さん。
白金さんは、『宮本から君へ』(2019年)、『MOTHER マザー』(2020年)、『正欲』(2023年)などを手がけた脚本家の港岳彦さんとタッグを組み、映画『#拡散』を完成させた。
本作の主人公で、ワクチン接種の翌朝に妻を亡くした主人公・浅岡信治を演じたのは、映画『ブラック・ショーマン』(2025年)や『平場の月』(2025年)、ドラマ『初恋DOGs』(2025年)、『冬のなんかさ、春のなんかね』(2026年)など幅広い作品で活躍中の成田凌さん。
最近は『冬のなんかさ、春のなんかね』で杉咲花さん演じる主人公のメロい彼氏役でお茶の間を賑わせていた成田さん。優しくてかっこよくて包容力のある「ゆきお」を自然体で演じていた。本作では、妻が亡くなったあと、自身が開設したSNSのアカウントが万超えのフォロワー数を獲得し、“反ワクチンの象徴”として祭り上げられて変わっていく浅岡を見事に体現。
以前、成田さんに本作についてインタビューした際に、「本名と顔を出してSNSを始めた結果、急に世間から注目されたらあんな風に変わってしまっても仕方がないんじゃないかな、とは思いました。誰にでも起こりうることだと思うので、共感というか、理解できる部分は少なからずありましたね」と、役に対する共感ポイントを語っていた。成田さんが、真摯に役に寄り添いながら演じたからこそ、浅岡という役柄がどこか憎めないキャラクターになっていたように思う。

浅岡のことを記事にして報道した記者・美波を演じたのは、映画『へルタースケルター』(2012年)で日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞し、2019年には小栗旬さんが太宰治を演じた映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』に出演、テネシー・ウィリアムズの名作『欲望という名の電車』(2024年)では初舞台に挑戦した沢尻エリカさん。
沢尻さんは、これまでの華やかなイメージとはまったく違う、地味で真面目な記者役を好演。最初に浅岡を焚き付けておきながら、どんどん調子に乗って自分を見失っていく彼に対して「あっという間に仕上がりましたね」と嫌味を言う美波の姿がとても印象的だった。

浅岡の妻の担当医師・高野を演じたのは、Netflix作品『インフォーマ 』(2023年)で桐谷健太さん演じる主人公の頼れる味方役を好演し、同じくNetflix作品『イクサガミ』(2025年)では極限のバトルロイヤルに挑む志士たちに対して、運営側の処刑人として立ちはだかる剣客・櫻役を熱演していた淵上泰史さん。浅岡本人と浅岡のシンパたちによる過激な陰謀論によって、世間からバッシングを浴びる高野を繊細に演じた。

■虚実あふれる情報と欲に振り回され、大事なものを見失った男の姿に心乱される作品
物語の序盤、妻の遺影を抱えながら妻の担当医師がいるクリニックに無言の抗議運動を続ける浅岡の姿が、正直とても怖かった。浅岡の妻の死は本当にワクチン接種が原因だったのだろうか?と疑問に思ったからだ。そのあと浅岡は、抗議する自身の姿が記者の美波に報道されたことによって、“反ワクチンの象徴”として祭り上げられていく。
次第に見た目を気にするようになり、わかりやすく調子に乗っていく浅岡の姿には笑ってしまったが、手のつけられない存在になっていくほど、もはや正義感ではなく承認欲求を満たそうとしているだけの人に見えてなんとも切ない気持ちに…。いつの間にか“妻のために抗議していた浅岡”は消えてしまっていたのだ。

ある日、彼のシンパが過激な陰謀論者となって暗殺事件を起こすが、そのあとも“世直し系ユーチューバー”と交流を深め、過激な発信をするなどヤバさがエスカレートしていく浅岡。“どこまでも不快だけど見守りたい”そんな不思議な気持ちにさせられたのは、いつ自分が浅岡のようになるかわからないと感じたからなのかもしれない。
普段からSNSを見る際には陰謀論やフェイクニュース、AI画像などに振り回されないように気をつけてはいるが、もしも浅岡のように大切な人を突然失ったとしたらどうだろうか…。何かにすがるように自分に都合のいいものを信じ、それが陰謀論だったとしてもどっぷりとハマってしまう危険性はある。行き場のない悲しみや怒りを抱えたら、自分だっていつ浅岡のようになるかわからないのだ。

本作では浅岡だけでなく、高野の過去や彼が抱えている秘密も明かされる。それはネットには載っていない、高野本人からしか聞けない重要な情報だった。そういった描写を通してあらためて、安易に虚実あふれるネットの情報に振り回されることなく、真実をしっかりと見極めることが大切だと感じた。
自分を見失った浅岡は、どんな結末にたどり着くのか。ぜひ劇場で確認してもらいたい。




文=奥村百恵
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