「腹膜播種はCT検査」では写らない?その理由と検査方法を医師が解説!

「腹膜播種はCT検査」では写らない?その理由と検査方法を医師が解説!

腹膜播種とは、がん細胞が腹膜の表面にまるで種をまいたかのように散らばって広がる状態を指します。CTなどの画像検査で診断を試みますが、すべての病変が画像に映るとは限りません。この記事では、腹膜播種がCTで見つけにくい理由や、補助的に用いられる検査法、そして治療の選択肢を解説します。

木村 香菜

監修医師:
木村 香菜(医師)

名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

腹膜播種とCT

腹膜播種とCT

胃や大腸などの消化管にできたがんは、大きくなるにつれて壁の深いところにもおよび、外側の漿膜(しょうまく)を貫きます。そして、臓器の表面やお腹の壁を裏打ちする薄い膜である腹膜にがん細胞が広がっていくように転移します。これが腹膜播種です。まるで、種をまいたようにがん細胞が散らばるような様子から、このように呼ばれています。

CTに写らない腹膜播種

がんのステージがどれくらいなのかを見極めるため、腹腔鏡検査(審査腹腔鏡)を行うことがあります。腹腔鏡検査では、実際に腹腔内部を見て播種病変などがないかどうかを調べ、腹水を採取します。
また、腹水が溜まってしまった患者さんに対し、治療と診断の目的で腹腔穿刺(ふくくうせんし)を施行するケースもみられます。

腹水や腹腔洗浄液を採取して細胞を調べる細胞診の結果、がん細胞が確認された場合、それは顕微鏡レベルの腹膜播種を意味し、CY1と分類されます。
このCY1は、画像検査ではとらえにくく、CTでは病変として描出されない微細な播種です。
また、CTなどの画像検査や、腹腔鏡で明らかな腹膜病変は肉眼的腹膜播種(P1)といいます。しかしながら、まだ腹膜播種が小さかったり、腹膜全体に広がったりするタイプではCTには写らないこともあります。

CTでわかる腹膜播種

播種病変がある程度の大きさになると、CTなどの画像検査でも明瞭な腫瘤として描出されるようになります。ただし、CTによる腹膜播種の検出には限界があり、微小な病変は見逃される可能性があります。
なお、卵巣がんの腹膜播種は、大腸がんと比べてCTで検出される感度が高いとされます。ここでいう感度とは、実際に腹膜播種がある患者さんがCT検査を受けた際に病変が見つかる確率を指します。

また、腹膜播種の進行に伴いがん性腹膜炎に至ると、塊としての病変以外にもCTで異常が指摘できるようになります。
例えば、胃や大腸などを覆う腹膜の一部である大網(たいもう)にびまん性にがん細胞が転移した結果、大網が肥厚し塊のように見えることがあります。これはomental cakeと呼ばれる状態です。さらに、大量の腹水が溜まることもあります。
そのほか、腸管の狭窄(きょうさく;狭くなること)や胆管の狭窄などもみられます。また、尿管の狭窄によって、腎臓の方にまで尿が逆流し、腎盂と呼ばれる部分が拡張した水腎症と呼ばれる状態になることもあります。

腹膜播種がCTに写りにくい理由

腹膜播種がCTに写りにくい理由

腹膜播種の原因となるがんの種類によっては、腹膜播種病変が小さかったり、あるいは広範囲に浸潤したりする様式をとりやすいことがあります。
実際に、胃がんは結節を作ることが少なく、CTなどの画像診断では発見しづらいケースが多いとされています。

また、大腸がんの腹膜播種では、播種結節が0.5cm未満では同定率が11%、5cm以上であれば94%だったとする報告もあります。つまり、病変の大きさによってはCTで検出できない場合もあり、それが腹膜播種がCTに写りにくい理由と考えられます。

配信元: Medical DOC

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