ルネッサンス時代『フローラ』(ティツイアーノ)
『フローラ』(ティツイアーノ), Public domain.
ルネサンス期の巨匠、ティツィアーノ・ヴェチェッリオが1515年頃に描いた『フローラ』は、花と春、豊作を司るローマ神話の女神・フローラを題材とした作品といわれています。知識と美を尊重したルネサンス最盛期である、15世紀後半から16世紀の美意識をよく表す一枚です。
描かれた女性は、左肩からゆったりと落ちる白いプリーツのシャツをまとい、胸元を大きく見せています。片方の胸は布に包まれ、もう片方はあらわになっており、柔らかな肌の質感が強調されています。
また、上半身の白い肌をいっそう美しく際立たせる役割を果たしているのが、左手に掛けられた淡いピンクのコートです。ルネサンス期には、丸みを帯びた豊かな体つきが理想的な女性像とされており、柔らかいボディラインも当時の美意識を反映しています。
また、彼女の装いは花嫁のローブとして解釈されることもあり、右手の薬指の婚約指輪は、結婚や愛の象徴です。
純潔を思わせる白い衣と、ほのかに漂う官能性。その両方を併せ持つ姿は、ルネサンス時代の理想的な女性像や結婚観を象徴するものとして見ることができます。

【ティツィアーノ】ヴェネツィア派画家の人生とは?特徴と見どころも
ティツィアーノは、盛期ルネッサンスに活躍したイタリア人画家です。色彩と感性的な表現を重視するヴェネツィア派の代表的作家の1人で、国内のみならずヨーロッパ全土に大きな影響を与えました。この記事では、ティ…
バロック時代『シュザンヌ・フールマンの肖像』(ルーベンス)
『シュザンヌ・フールマンの肖像』(ルーベンス), Public domain.
『シュザンヌ・フールマンの肖像』は、バロック美術を代表する画家、ピーテル・パウル・ルーベンスが1622年から1625年頃に手がけた肖像画です。
モデルとされているのは、ルーベンスの二番目の妻エレーヌの姉にあたるシュザンヌ。明るい表情と大胆な装いが印象的で、人物の生き生きとした魅力を引き出す、バロック絵画らしい生命感あふれる一枚です。
彼女が身につけているのは、ダチョウの羽をあしらった大きな黒い帽子。実際にはフェルト製の帽子ですが、18世紀頃から「麦わら帽子」とも呼ばれるようになりました。つばの広い帽子は当時のオランダで流行したもので、裕福な人々だけが身につけられるアイテムです。
赤と黒を基調とした鮮やかな肩掛けは、シュザンヌの大きな瞳にスラリと長い首、白い肌を引き立て、ルーベンスの理想とする女性像を強調しています。
さらに黒い肩掛けは、背景の暗い雲とリンクしており、反対側の青空が対比されているのが特徴です。画面に動きと奥行きが生み出され、動きやドラマ性を重視したバロック時代ならではの構図となっています。
