ロココ時代『ぶらんこ』(フラゴナール)
『ぶらんこ』(フラゴナール), Public domain.
ジャン=オノレ・フラゴナールが1767年に描いた『ぶらんこ』は、ロココ美術の代表的な作品です。緑豊かな庭園の中で、若い貴婦人がブランコに乗り、ふわりと宙に舞う瞬間が描かれています。
ブランコを揺らす初老男性の他に、画面の左下には、茂みの中から貴婦人を見上げる男性の姿も。彼は貴婦人の愛人とされており、密やかな恋の場面が描かれています。
貴婦人のシルクのドレスは、淡いピンクにレースが施された華やかなものです。ロココ時代の女性の服は、パニエと呼ばれる籠の形をしたアンダーウェアによってスカートを膨らませるのが特徴。人工的に優雅なシルエットを作り出していました。パステルカラーも、当時の優美な雰囲気をよく表しています。
また、ブランコの勢いに合わせて、貴婦人の足元からは小さなピンク色のミュールが前方へと飛ばされ、画面に軽やかな動きを生み出しています。
宗教や歴史をテーマとした重厚な絵画とは異なり、恋愛や遊びをテーマにした軽やかな世界観です。優美で繊細なロココ文化を楽しんだ、貴族社会の空気を象徴しています。
新古典派時代『レカミエ夫人の肖像』(ダヴィッド)
『レカミエ夫人の肖像』(ダヴィッド), Public domain.
フランス新古典主義を代表する画家、ジャック=ルイ・ダヴィッドが1800年に描いた『レカミエ夫人の肖像』。当時のパリ社交界でひときわ注目を集めていた女性、ジュリエット・レカミエをモデルにした作品です。
彼女は銀行家ジャック=ローズ・レカミエの妻で、美しい容姿を持つだけでなく、知性の高い人物として知られていました。サロンを主宰する教養人としても名高く、その魅力的な人柄は多くの人々を惹きつけたといわれています。
絵のレカミエ夫人は、古代彫刻を思わせるシンプルな白いドレスをまとい、長椅子にもたれるように座っています。ドレスは薄く柔らかな素材で仕立てられたもので、胸の下に切り替えが入ったエンパイアスタイルと呼ばれる、当時流行のデザインです。
すとんと落ちるすっきりとしたシルエットは、装飾の多いロココのファッションとは対照的に、古代ギリシャの自然な美意識を反映しています。
華やかな装飾を取り払った装いからは、理性や気品を重んじる時代の価値観もうかがえます。社交界の中心にいながら、落ち着いた気高さを漂わせる姿は、聡明でスタイリッシュなレカミエ夫人の人物像を物語っているようです。
