前回のコラムで紹介したように、2026年4月の診療報酬改定で高齢者住宅に併設・隣接されている訪問看護事業所に対しては「包括型訪問看護療養費」という新たな仕組みが導入されることになりました。
しかし、この算定要件を満たさない事業所や、満たしていてもあえて算定を希望しない事業所が出ることも考えられます。
その場合は、従来の積み上げ型の診療報酬を選択することになります。

今回の診療報酬改定では、事業所と同一の建物に居住する利用者への訪問看護に適用される「訪問看護基本療養費(Ⅱ)」についても算定ルールなどが見直されました。
具体的には次の通りです(一部抜粋)。
①訪問看護を実施する時間は30分以上を標準とし、20分を下回る場合は報酬及び加算等の算定はできない
➁前回の訪問看護の終了から2時間未満の間隔で、提供時間20分以上30分未満の訪問看護を行う場合は(緊急に実施する場合を除く)、それぞれの所要時間を合算して1回とする
③「同一建物」の定義に、同一敷地内の建物も加える
また、報酬の区分も、これまでは「同一日に2人」「同一日に3人以上」の2区分のみでしたが、新報酬では3人以上が「3人以上9人以下」「10人以上19人以下」「20人以上49人以下」「50人以上」と細分化されます。
また、訪問日数による区分も、従来の「週3日目まで」「週4日目以降」は「同一日2人」と「同一日3人以上9人以下」の2区分にのみ適用されます。
同一日10人以上の場合は「月20日目まで」「月21日目以降」の区分となります。
報酬については、利用者が9人までの場合は、従来の3人以上の額がそのまま適用されますが、10人以上の場合は減算になります。
例えば「同一建物で50人。毎週3日間訪問看護を実施していて、その月の最終訪問日」(※保健師、助産師、または看護師による場合)のケースでは、これまでは2780円でしたが新報酬では2610円となります。(※あくまでも答申ベースの話で、実際の報酬額は変更になる可能性があります)

大きなポイントは①です。
1回20分を下回る訪問は何回実施しても報酬を算定できなくなりました。
これに対し前回解説した包括型報酬では「30分以上~60分未満」から報酬を算定できますから、ごく短い時間の訪問でも回数を重ねれば収入になります。
一般的に言って「ホスピス住宅」などの訪問看護事業所を併設した高齢者住宅の入居者は「短時間でもいいので頻回に、そして随時訪問をして欲しい」という入院中のような関わりを看護師に求めているのではないでしょうか。
そう考えると、ホスピス住宅は必然的に包括型報酬を選択せざるを得なくなります。
一方で、入居者が一般在宅の様な形の訪問看護を求めている高齢者住宅では、これまでと同様に積み上げ式の報酬を選択することになると思われます。
しかし、前回のコラムでも書いたように、ホスピス住宅運営者の中には頻回な訪問を行うなどして診療報酬を過剰に請求していたところがありました。
こうした事業所は包括型報酬に切り替わると保険料収入が大きく減少することが予想されます。
過剰な訪問介護を前提にしたビジネスモデルで運営していた場合には、事業継続が困難になることも否定できません。
今後、事業の廃止、縮小あるいはM&Aなどにより業界地図が大きく塗り替わるかもしれません。
中医協の答申では、訪問看護に関して「包括型報酬の新設などを踏まえ、事業所の経営状況などの把握や今回の改定の検証を行った上で、評価のあり方について引き続き検討すること」と意見を述べています。
仮に改定で事業所の経営状況に大きな変化が見られた場合は、2028年の診療報酬改定、あるいは2027年の介護報酬改定で大幅な見直しや変更が行われる可能性もあります。
介護の三ツ星コンシェルジュ


