「上部内視鏡検査」の流れ
上部消化管内視鏡検査の流れについて解説していきます。
上部消化管内視鏡検査前日の注意点
検査の前日は、消化に良いものを食べるようにしましょう。21時までには食事を終えておくよう注意しましょう。
内服薬については、基本的に前日でも通常通りに内服しましょう。脳梗塞や心房細動などの予防のために抗血栓薬という血液をサラサラにする薬を飲んでいる方でも、内視鏡的な観察だけであれば休薬は不要です。しかし、抗血栓薬を内服している場合、生検は避けた方が良い場合もあります。休薬については、主治医にあらかじめ確認しておくことが望ましいでしょう。
上部消化管内視鏡検査当日の流れと注意点
当日は絶食となります。牛乳やジュースも控えましょう。水は検査1時間前くらいまでは飲んでも問題ありません。降圧薬なども朝に飲んでもらっても大丈夫ですが、糖尿病の薬は主治医に確認の上当日朝は内服しないようにしましょう。
流れとしては、以下のようになります。
1.前処置室で、胃の中の泡を消す薬や、胃の中の粘液を分解する薬を飲みます。
2.口からの内視鏡検査の場合には、喉の麻酔を行います。飲み込むタイプの薬と、スプレーのタイプがあります。鼻からの検査の場合には、点鼻薬を用います。
3.十分に麻酔が効いた後、検査を受ける方は専用の台に乗って、体の左側を下にした姿勢で横になります。鎮静剤を注射する方もいます。
4.口からの検査の場合には、マウスピースを装着します。
5.上部消化管内視鏡を口か鼻から挿入し、検査を始めます。力を抜くようにすることを意識すると良いでしょう。食道や胃、十二指腸を観察します。がんなどの病気が疑われる場合、その部分の粘膜を切り取る生検が行われることもあります。
通常、検査は5-10分で終わります。検査後、通常は1時間程度で飲水や食事は可能となります。
鎮静剤を使用した場合には、1時間ほど病院内で安静にすることが必要です。また、当日の車の運転はできないため、お一人で受診する際は特に注意しておきましょう。
なぜ左側臥位で見るのか?
上部消化管内視鏡検査は、通常、左を下にした左側臥位で行われます。これは胃の位置や形状に基づいた合理的な理由があります。
胃は、噴門部、穹窿(きゅうりゅう)部、胃体部、胃角部、前庭部、幽門部といった解剖学的構造に分けられており、全体として左に凸の湾曲をしています。胃の右側のカーブは小彎(しょうわん)、左側のカーブは大彎(たいわん)と呼ばれます 。
左側臥位では、内視鏡の先端が重力によって自然と胃の大彎側に下がるため、大彎をはじめとする観察しにくい部位にアクセスしやすくなります。 特に胃体部の大彎から前壁にかけては、送気不足や液体の貯留によって盲点となりやすいため、内視鏡で十分に引き伸ばして観察する必要があります。
このように、左側臥位は胃の構造に即した、観察効率の高い体位として多く用いられています。もちろん、患者さんの状態などに応じ、仰向けなどの体位で行うケースもあります。
上部消化管内視鏡検査に要する時間は?
実際に内視鏡を挿入している時間は、7分前後から10分以内が目安となっています。
口や鼻の麻酔などや、鎮痛薬の投与なども合わせると、30分程度かかると見ておくと良いでしょう。鎮静剤を用いた後は、1時間程度は院内で安静にすることが多いかと考えられます。
上部消化管内視鏡検査の結果
上部消化管内視鏡検査の結果は、以下のような判定となります。
A 異常なし
B 軽度異常(軽い逆流性食道炎など)
C 要経過観察・要再検査・生活指導
D(医療的な処置を要する) D1 要治療(胃潰瘍やがんなど)
D2 要精検
E 治療中
食道がんや胃がん、食道潰瘍などがD判定となります。
「上部内視鏡検査」の異常で気をつけたい病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「上部内視鏡検査」でわかる病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
胃がん
胃がんは、胃の粘膜ががん化したものです。ヘリコバクターピロリ菌の感染などが危険因子となります。早期の段階では無症状ですが、進行すると胃の痛みや不快感、出血による黒色便、体重減少などの症状が現れることもあります。
胃がんは、内視鏡検査では、ポリープのように膨らんだ病変や、えぐれた病変などとして発見されることがあります。
治療として、早期の段階であれば内視鏡的切除術が行われます。進行した段階では手術や抗がん剤治療、放射線治療などを組み合わせるなどの方法があります。
ポリープ
ポリープは、胃の粘膜にできる、周囲から盛り上がったような病変の総称です。
多くのものは良性です。頻度が高いものとしては、以下のようなものがあります。
・胃底腺ポリープ:ヘリコバクターピロリ菌の感染がない胃粘膜に生じる
・胃過形成ポリープ:ヘリコバクターピロリ菌の感染によって炎症が起こった胃粘膜に生じる
胃底腺ポリープはほぼ良性であり、基本的には治療は不要です。一方、胃過形成ポリープが疑われる場合には、ピロリ菌感染の有無を確認することが望ましいとされています。サイズが大きい(目安として1㎝以上)の場合には、がんが発生する頻度が約2%であり、1年に1回の内視鏡検査がすすめられています。
上部消化管内視鏡検査でポリープと診断された場合には、その後の方針などについて、検査を施行した医師や主治医に確認することが大切です。
逆流性食道炎
逆流性食道炎は、胃酸をはじめとする胃の中のものが食道に逆流することによって、食道に炎症が起こってしまう病気です。食道と胃のつなぎ目には、下部食道括約筋という筋肉があり、食物が通る時以外には締まり、胃の内容物が食道に逆流しないような役割を果たしています。何らかの原因でこの筋肉が緩むと、胃から食道に内容物が逆流するようになります。
加齢、食べ過ぎによる胃の内圧の変化、肥満などによる腹圧の上昇、高脂肪食などが原因となります。
胃の内視鏡検査で逆流性食道炎は、その重症度に応じて軽度異常(B判定)か要経過観察(C判定)に判定されます。 しかし、胸焼けなどの症状が強くみられる場合には、消化器内科を受診しましょう。

