
俳優・佐藤流司が芝居する姿は、エドヒガン(江戸彼岸)のようだ。素朴だが、孤高の美しさと上品さがある。佐藤は、現在時代劇専門チャンネルで3月22日(日)昼1時ほかに放送される北大路欣也主演のオリジナル時代劇シリーズ最新第9作「三屋清左衛門残日録 永遠(とわ)の絆」に出演。物語の鍵となる、ある悲劇によって人生を翻弄されながらも、つましく生きる若き夫婦の夫・結城友助役を演じている。
そんな「三屋清左衛門残日録 永遠(とわ)の絆」の放送を記念して、時代劇専門チャンネルでは、特集企画「特集 佐藤流司 ~桜花爛漫~」が3月21日(土)夜9時よりスタート。テレビ初放送となる舞台『応天の門』や、時代劇専門チャンネル限定の特別番組「居酒屋 流司~今夜は帰さない!~」(3月28日[土]夜9:00ほか)を放送する。
■2025年で俳優デビュー15周年のキャリアが“根”に
2025年、俳優デビュー15周年という節目を迎えた佐藤は、すでに人生の約半分を芝居と共に生きている。そのキャリアは揺るぎない土台としてしっかりと根を張り、そこで吸収した養分(経験)をこれまでの出演作で美しく咲かせてきた。そんな佐藤の魅力をじっくりと鑑賞できる作品の一つが、舞台『応天の門』(2024年)である。
本作は、佐藤が主演を務め、明治座で上演された歴史クライム・サスペンス。一族の権力争いなどさまざまな思惑がうごめく都市・平安京を舞台に、若き文章生である菅原道真が、次々と起こる怪事件に巻き込まれながらも、解決していく姿を描く。
唐にあこがれ、優れた洞察力で事件を解決していく、書庫にこもりがちなエリート文章生・菅原道真を佐藤が演じるほか、道真とタッグを組む京随一の色男と噂される歌人・在原業平役として高橋克典、遊技場を仕切る女主人・昭姫役として花總まりが出演する。
■不器用な道真(佐藤流司)にギュン
物語は、満月の夜に道真と業平が出会うところから始まるが、月夜に白く照らされる道真が美しい。道真という男は、“天才”であるがゆえの危うさと孤独を抱え、一見とっつきにくいが、頼られるとつい助けてしまうお人好し。頑固だが、清く、賢い少年だ。ツンデレとも言える不器用な道真にギュンとする。
対照的に、政治的には不遇だが、器用で女性の心を掴みまくる業平が、そんな道真を信頼し、時に父や兄のように、時に友のように彼を面白がり、頼り、導いていく…そんな2人の絆も見どころの一つだろう。
■“職人技”と言える内側から滲み出る芝居
道真の賢さは、決してセリフだけで表現されているわけではない。佐藤が体現する凛とした佇まいや、真っ直ぐに紡がれる声、落ち着いた目線と言動など…その一つひとつの所作が道真という人物に説得力を持たせる。そして何より内側から“彼”がにじみ出ているのだ。決して派手ではない、佐藤の芝居。作為を感じさせずに自然で、物語に溶け込むように知的な上品さがにじみ出る。それは、まさに職人技と言えるのではないだろうか。
そして、道真が時折見せる少年らしいシーンでは、そのギャップで魅力が満開に咲き誇る。古い心の傷が癒えずに一人で抱え込む姿は、思わず抱きしめたくなるし、遺体を見てとっさに嘔吐してしまうシーンでは、コミカルながらも道真の純粋さを感じる。人の生死を託されその重さを抱えきれずに逃げ出すシーンでは、人間らしい弱さと未熟さに親近感を抱き、貴族たちの目にあまる傲慢さに我慢できず心情をぶちまける姿には、内にあるアツさに愛おしさが増し、母性がくすぐられる。
そんな道真のギャップを違和感なくナチュラルに表現する佐藤。舞台だが、決して大きく誇張するわけではない。佐藤のすごさは、そのどっしりと地に足の着いた安定感と飾り気のない生の芝居で、役として生きる世界を客席に届けられるところにあるのではないだろうか。
■エドヒガンの花言葉は“心の平安”
また3月28日(土)に放送される特別番組「居酒屋 流司~今夜は帰さない!~」では、佐藤が1日限りの「居酒屋 流司」をオープン。俳優仲間であるうえきやサトシがバイトリーダー役として出演するほか、客として石川凌雅、北園涼、高橋健介、鳥越裕貴という公私共に親交のある4人が来店する。お酒を交えながら、佐藤の意外な一面や俳優としての魅力、これまでの思い出を語り合う、まるでプライベートな時間をのぞき見しているような感覚を味わえる番組となっている。
なお、日本映画専門チャンネルでも、「特集 佐藤流司~変幻自在の魅力~」を実施し、舞台「Rock Opera『R&J』」(2019年)や、時代劇専門チャンネルとはまた異なる特別番組「舞台裏のウラ~佐藤流司という漢~」(3月30日[月]夜8:00ほか)を放送。特番では、福井巴也(UniFY)や藤原樹(THE RAMPAGE)、松田凌といった佐藤をよく知る者たちのインタビューから彼の魅力を明らかにしていく。これらの特番と舞台すべてを網羅することで、佐藤流司という人物がさらにさまざまな人の視点や角度から紐解かれ、また新たな花が私たちの中に開花するはずだ。
エドヒガンは、寿命が非常に長く、樹齢1000年を超える巨木も存在するといわれ、天然記念物に指定されたものもある桜である。そんなエドヒガンを彷彿とさせる佐藤の芝居は、舞台はもちろん映像作品など、これからもさまざまな場所で根を深めていき、長く大きく咲き誇ることだろう。そして、たくさんの人たちの目を楽しませ、見るものの“心に平安”を与え続けてくれるに違いない。
構成・文=戸塚安友奈

