●取材を受けてくれた人をどう守るべきか
ここまでは「取材の甘さ」を語ってきたが、もう一つ指摘すべきテーマがある。炎上事案における取材先への配慮の問題だ。
今回は、善意でインタビューに答えてくれた取材先の方に、大変な迷惑がかかってしまった。「テレビ局の仕込みではないか」などという事実無根の疑念をかけられ、誹謗中傷され、身元を特定されるようなことまで起きているのは明らかに異常だ。
短絡的にそのような行動に走った人たちは間違っている。しかし、最近では炎上しやすいテーマを扱えば、すぐにこのような状況になりえる。そんな社会情勢にあるのは間違いない。
炎上中のテーマ、あるいは炎上しやすいテーマの取材であっても、「良かれと思って」協力してくれた善意の一般の方をどう守るべきなのか。テレビ局として、業界として対策をとるべきだろう。
●「インタビューの匿名化の弊害」も考えられる
たとえば「インタビューの匿名化」もその一つの方策ではないか。顔を画像処理で隠し、音声も変えることで、個人の特定を難しくし、「※取材者のプライバシーに配慮して処理をおこなっています」などとテロップ表記するなど、やれることはあるはずだ。
とはいえ、たしかに、そうした「インタビューの匿名化」をおこなうことによって、さらに一層「報道の信頼性を低下させる」という反作用があることも事実だ。
「仕込みではないか」などと疑われる可能性はいっそう高くなる。だからそうしたくない、という現場の気持ちも痛いほどよくわかる。
しかし、最近のネット言論空間における、誹謗中傷などの苛烈さを考えれば、やはりそこは「取材を受けてくれた人の身の安全第一」でいくべきではないだろうか。

