脳トレ四択クイズ | Merkystyle
「実家だと思ってもらえれば」。麻生要一郎の、ただいまが聞こえる食卓

「実家だと思ってもらえれば」。麻生要一郎の、ただいまが聞こえる食卓

コンビニ弁当の夜に、決めたこと

民宿を畳んだ後、麻生さんは母の介護のために実家へ戻る。看病はできたが、母は急逝した。

実家の片付けをしていたある夜、地元の花火大会と重なって身動きが取れなくなった。お腹が空いて、近くのコンビニでお弁当を買って帰った。猫のチョビと、思い出の詰まった実家で、音もなく、ひとりで食べた。

「なんだかものすごく悲しくなってきちゃって。まあそれが何であれ、その状況で食べてたら悲しくなると思うんですけど。せめて自分の周りにいる人にこういう思いだけはさせたくないな、となんとなく思ったんですよね」

外で聞こえる花火の音が、余計に静けさを際立たせた。それが何の弁当だったかは、もう覚えていないという。それでもその夜の気持ちだけは、鮮明に残っている。

「寂しいとか、わびしいとか、そういう気持ちはなるべくみんなから取ってあげたいなっていう風に思って。そこに自分のこれからの人生というか、食との向き合い方があるのかなっていうふうにその時思ったんですよね」

それまでも誰かのために料理を作ってきた。しかしこの夜を境に、その動機が言葉を持った。麻生さんの料理の核心にあるのは、身近な誰かに喜んでもらいたいという気持ちだ。それはここから育っている。

「実家だと思ってもらえれば」。大きすぎるおにぎりと、ただいまが聞こえる家

千駄ヶ谷に引っ越した麻生さんは、ひょんなことからお弁当のケータリングを始める。友人の撮影現場に持っていったお弁当が口コミで広がり、料理雑誌の取材が来た。「屋号は?」と聞かれて初めて気づいた。屋号はなかった。「じゃあ一応、料理家という感じにしましょうか」と言われて、肩書きが生まれた。これもまた、ひょんなことから。

今の自宅には人がよく集まる。入ってくるなり「ただいま」と言う人たちのために、今日誰が来るかを考えながら、何を作ろうか考える時間が好きだという。

「今日誰々が来るからこれ作ろうとか、あの人はこれが苦手だから今日はやめとこうとか、そういうのを考えながら作ってるのも幸せな時間の一つですよね」

「実家だと思ってもらえれば」と麻生さんは言う。自分が作りたいものではなく、来る人を起点に献立が決まる。その食卓に、人が引き寄せられてくる。

ひとつ、長年の悩みがあった。おにぎりが、どうしても大きくなってしまうのだ。型を使っても、意識して握っても、仕上がりはいつも倍近い。ある撮影で「小さめのおにぎりを2個」と指定が入り、頑張って握って届けたら、奥から「うわ、大きいおにぎり!」と歓声が上がった。「小さく握ったつもりなのに」と肩を落とした。

ところが、よく遊びに来る友人で歌手の坂本美雨さんが、こう言ってくれた。「三角でもなく丸でもない、要一郎さんが握ったっていう感じのこのおにぎりが本当にいい」と。それから麻生さんは、堂々とそのサイズで出すようになった。 不格好で、大きくて、誰かのことを思いながら作られた料理。それが麻生要一郎の料理だ。

今年刊行された自伝食エッセイ『酸いも甘いも ―あの人がいた食卓―』は、そんな食卓の記憶を束ねた一冊だ。帯にはこうある。「好き嫌いなく何でも食べるような子だったら、ちょっと不思議な人生を歩むことはなかった」と。

偏食の、草花を摘む子供が料理家になった。それはきっと「ひょんなこと」ではなく、誰かのそばで、誰かのために、何かを作り続けてきた時間の積み重ねだったのかもしれない。

ご視聴はこちらから

**

🎵Spotify
https://hubs.li/Q02qmsmm0
🎵Amazon Music
https://hubs.li/Q02qmslg0
🎵Apple Podcast
http://hubs.li/Q02qmztw0

【ゲスト】

第65回・第66回(2月20日・27日配信) 麻生要一郎さん

料理家・文筆家
1977年茨城県水戸市生まれ。家庭的な味わいのお弁当やケータリングが評判になり、日々の食事を記録したInstagramでも多くのフォロワーを獲得。料理家として活躍する一方、自らの経験を綴ったエッセイ&レシピ『僕の献立 本日もお疲れ様でした』『僕のいたわり飯』『365 僕のたべもの日記』『僕が食べてきた思い出、忘れられない味 私的名店案内22』を刊行。近著に初の自伝&食エッセイ『酸いも、甘いも。あの人がいた食卓 1977-2025』がある。

X: @YOICHIROASO
Instagram: @tyoichiro_aso

【パーソナリティ】 

クックパッド株式会社 小竹 貴子

クックパッド社員/初代編集長/料理愛好家
趣味は料理🍳仕事も料理。著書『ちょっとの丸暗記で外食レベルのごはんになる』『時間があっても、ごはん作りはしんどい』(日経BP社)など。

X: @takakodeli
Instagram: @takakodeli

提供元

プロフィール画像

クックパッドニュース

日本No.1のレシピサイト「クックパッド」のオウンドメディアであるクックパッドニュースでは、毎日の料理にワクワクできるような情報を発信しています。人気レシピの紹介や、定番メニューのアレンジ、意外と知らない料理の裏ワザをお届けしています。