「伝染性単核球症」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。一般的には「キス病」と呼ばれているため、そちらの言葉なら聞いたことがある方もいるかもしれません。
日本では乳幼児期に感染することが多く、一度感染すると抗体ができます。思春期までの間に感染する方が多いため、20代までに多くの方が抗体を持ちます。
乳幼児期に感染した場合はほとんど症状は出ません。症状が出ても軽度で済む場合がほとんどです。
しかし青年期以降に感染すると発熱、リンパ節腫脹などの症状が出ます。そのため心配になり、病院へ行かれる方も多いです。
今回は「伝染性単核球症」とはどんな病気なのかを解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「伝染性単核球症」とは?症状・原因・治療法についても解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
伝染性単核球症とは

伝染性単核球症とはどんな病気ですか
伝染性単核球症はウイルスが原因で起こる感染症の1つです。EBウイルスが原因とされることが多いです。
EBウイルスはヘルペスウイルスの一種で、リンパ球に感染することで発症します。日本では3歳頃までに60~70%の方が感染し、大人になるまでの間に感染する方が多いです。
青年期以降に初感染した場合、伝染性単核球症と呼ばれる病気になります。
伝染性単核球症は何が原因で感染するのでしょうか?
伝染性単核球症が「キス病」といわれる由縁でもあるのですが、原因とされるEBウイルスは唾液の中にあります。
唾液を介して感染するのでキスで感染することが多く、「キス病」と呼ばれるようになりました。キス以外の主な感染経路は次の通りです。
回し飲み
箸・スプーンの使い回し
食べ物の口移し
飛沫感染
この他にも輸血を介して感染した例も報告されています。
そうなのですね。感染した場合の症状を教えてください。
症状は発症した年代によって異なります。乳幼児期は無症状の場合が多いです。
症状が出ても軽く、微熱・扁桃腺の腫れなどで済みます。しかし学童期以降に発症した場合は重症化しやすく、次のような症状が出ることが多いです。
高熱
全身のけん怠感・疲労感
喉の腫れ・痛み
全身のリンパ節の腫れ
発疹
発熱・喉の痛みなどの症状は1~2週間で落ち着きますが、身体の怠さは数週間~数ヶ月にわたって長期化することもあります。
感染しやすい人の特徴などがあれば知りたいのですが…
原因となるEBウイルスにはほとんどの方が感染します。とくに伝染性単核球症を発症するのは10代~20代が多いです。
その理由は、キス・性交渉など他者との濃厚な接触が増えるようになるためと考えられています。
他にも食生活習慣の変化や伝染性単核球症に関する知識がなくなったこと・関心の低下などもあるでしょう。
食生活の変化により、乳幼児期にEBウイルスに感染したことがある方が少なくなっています。
そのため、抗体を持つ方が少なく青年期以降に発症する方が増えてきているともいわれています。
編集部まとめ

伝染性単核球症は乳幼児期にかかる病気でしたが、昨今は若年層での感染が増えているそうです。
一度感染すると抗体ができるため、感染したことがある方は心配ありません。しかし感染したことがない方は、注意が必要です。
肝臓・脾臓が腫大して破裂する、合併症を併発するなど怖い一面もありますが、ほとんどの方が自然に治ります。日頃から衛生管理や食生活などに気を付けて、感染しないように気を付けましょう。
放置すると悪化する可能性があるので、怪しいなと思ったらお近くの医療機関を受診してください。本文でもお伝えしましたが、内科で診てもらえます。
お子さんの場合は小児科で相談しましょう。
参考文献
伝染性単核球症:どんな病気?|お医者さんオンライン
EBウイルス感染症(伝染性単核球症)|にしかわ耳鼻咽喉科
伝染性単核球症(Infectious mononucleosisキス病)とは?|田島クリニック

