スウェーデン・カロリンスカ研究所の研究員らは、HPVワクチンを接種した女性約93万人を最大18年間追跡調査しました。その結果、17歳未満での接種により子宮頸がんの罹患リスクが約79%低下することが示されただけでなく、予防効果は接種後15年以上にわたって持続し、集団全体の子宮頸がん発生率も大幅に低減されることが明らかになりました。この内容について西野先生に伺いました。
※2026年3月取材。

監修医師:
西野 枝里菜(医師)
東京大学理学部生物学科卒
東京大学薬学部薬科学専攻修士課程卒
名古屋大学医学部医学科卒
JCHO東京新宿メディカルセンター初期研修
都立大塚病院産婦人科後期研修
久保田産婦人科病院
【保有資格】
産婦人科専門医
日本医師会認定産業医
17歳未満の接種でリスク79%減。スウェーデン18年間の大規模調査で判明
編集部
カロリンスカ研究所の研究員らが発表した内容を教えてください。
西野先生
スウェーデンにおいて2006年から2023年にかけて実施された全国規模の登録ベースコホート研究により、4価HPV(ヒトパピローマウイルスワクチン)の長期的な有効性が明らかになりました。本研究では、1985年から2001年生まれの92万6362人の女性を対象に、最大18年間の追跡調査がおこなわれました。追跡期間中に36万5502人(39.5%)が4価HPVワクチンを少なくとも1回接種しており、浸潤性子宮頸がんは930例確認されました。そのうちワクチン接種群では97例、未接種群では833例が診断されています。
17歳未満でワクチン接種を受けた参加者では、未接種群と比較した調整後の罹患率比が0.21と非常に低く、ワクチン接種後13〜15年が経過した時点においても罹患率比0.23という持続的な予防効果が確認されました。17歳以上での接種においても、全体の罹患率比は0.63であり、接種後10年以降に有意な罹患率の低下が認められました。また、学校ベースの接種プログラムを受けたコホートでは、日和見的に接種を受けたコホートと比較して、子宮頸がんリスクが72%低いことが示されました。
これらの結果から、4価HPVワクチンによる浸潤性子宮頸がんへの予防効果は長期間にわたって持続し、効果の減弱は認められないことが明らかになりました。さらに、組織的な学校ベースの接種プログラムは、個人レベルにとどまらず、集団全体の子宮頸がん発生率の低減にも貢献することが示唆されています。
若い世代に急増する「子宮頸がん」とは? 原因と早期発見の重要性
編集部
今回の研究テーマに関連する子宮頸がんについて教えてください。
西野先生
子宮頸がんは、子宮の入り口にあたる子宮頸部に発生するがんで、日本では毎年約1万人の女性がかかり、約3000人が亡くなっています。30〜40代の発症がピークで、若い世代に多いことが特徴です。原因のほとんどは性的接触によって感染するHPVであり、感染が長期間持続した一部の方が前がん病変を経て子宮頸がんへ進行すると考えられています。初期はほぼ無症状ですが、進行するとおりものの異常や不正な性器出血、下腹部の痛みなどが現れます。治療は手術療法・放射線療法・がん薬物療法を単独または組み合わせておこない、進行期や患者さんの状況に応じて最適な方法が選択されます。
子宮頸がんはHPVワクチンの接種による予防と、定期的な検診による早期発見・早期治療の両方が重要です。20歳を過ぎたら症状がなくても定期的に子宮頸がん検診を受け、HPVワクチンの接種についてもかかりつけの産婦人科に相談しましょう。

