
松下奈緒主演のドラマ「夫に間違いありません」(毎週月曜夜10:00-10:54、フジテレビ系/FOD・TVerにて配信)が、3月23日(月)に最終回を迎える。本作は、主人公・朝比聖子(松下)が夫の遺体を誤認し、保険金を受け取った後に死んだはずの夫・一樹(安田顕)が帰還するところから始まる物語を描いたサスペンスドラマ。今回、WEBザテレビジョンでは、プロデューサーを務める近藤匡氏にインタビューを実施。サスペンスドラマを作るうえでのこだわりや印象的だったシーン、最終回の注目ポイントなどについて話を聞いた。
■「意外なところで盛り上がっている」視聴者からの反響
――毎話怒涛の展開が続いていますが、視聴者からの反響はどのようにとらえていますか。
毎回たくさんの反響をいただきすごくありがたいです。中でも安田顕さん演じる一樹に対する視聴者の方の印象が変わっていったところがすごく興味深くて、放送が始まった当初は一樹の“クズっぷり”に驚く人も多かったですが(笑)、物語が進んでいくにつれて、視聴者が彼のクズな要素に中毒性を感じているのがわかったんです。「逃亡生活に入ってから一樹の登場シーンが少なくない?」といったコメントをSNSに寄せてくださるなど、意外なところで盛り上がっているなと。ドラマ全体の反響でいえば、結末を予想してくださっている方も多いので、そういった考察系のコメントも楽しく拝見させていただいています。
――実際の遺体取り違え事件に着想を得たとのことですが、脚本はどのように考えていかれたのでしょうか。
遺体の取り違えという実際の事件の記事を、国本雅広監督に見せてもらい、とても興味を惹かれたので企画を立ち上げました。遺体の取り違えの事件を元に、脚本家のおかざきさとこさんと共にまずは結末まで考えて、そのあとキャスティングを進めていくという流れでしたね。
――脚本を作っていくうえで一番こだわった部分を教えていただけますか。
毎話必ず一つは“視聴者の予想を裏切る展開を入れる”ということにこだわって作っています。例えば、第1話はこのドラマがどこに向かっていくのかを提示する大事な回なのですが、第1話の物語が進む中で視聴者の皆さんは松下奈緒さん演じる聖子の夫と、桜井ユキさん演じる紗春の夫の遺体が取り違えられていて、いずれこの二人がバチバチにやり合うだろうと予想がついたかもしれません。でも、それだけで終わらせないために、第1話のラストにキャバ嬢の瑠美子(白宮みずほ)が聖子に接触するシーンを入れて、その女性が一樹が生きていることを知っていると聖子に迫る展開を入れました。そうすればきっと続きも見たくなるであろうと、そういったことをおかざきさんと相談しながら脚本を作っていきました。
■キャラクターは「一人ひとりを丁寧に描きたい」
――予想を裏切られたという点でいうと、中村海人さん演じる聖子の弟・光聖がとても好青年に見えるキャラクターでありながら、政治家である妻の母親の命令を断れずに罪を犯していたことにとても驚きました。
“主人公の弟”といえば、主人公をフォローする優しい好青年タイプか、世話が焼けるやんちゃなタイプなど、ある程度キャラクターの想像がつくと思うのですが、光聖に関しては表と裏、光と影の両方の部分を描こうと決めていました。なぜなら、本作は登場人物が非常に少ないので、一人ひとりを丁寧に描きたいという思いがあったからです。人間誰しも人には絶対に言えないことを抱えていますし、複雑な要素をたくさん持っている。そういったことを考えて脚本を練っていった結果、SNSでは一樹や光聖だけじゃなく、「みんなクズじゃん」という声がたくさん上がってしまって(笑)。
――罪を犯してしまった人も含め、登場人物それぞれが人間らしい部分を持っていて魅力的だと思いました。
そう言っていただけるとうれしいです。人間がちゃんと動いているドラマになるといいなと思っていて、例えば聖子と一樹の息子・栄大(山崎真斗)の葛藤もしっかりと描いたつもりです。

■聖子の見え方が変わる印象的なシーン
――シリアスなシーンが多い本作ですが、公式のSNSでは撮影現場のオフショットを配信していて、キャストの方々が和気あいあいと過ごされている姿を拝見することができますね。
ロケ撮影の際は、カメラが回る直前までキャストのみなさんが仲良くお喋りしていますし、セットでの撮影の際は、カットがかかっても誰一人控え室に戻らずに和気あいあいと過ごされています。バチバチに言い合いをする聖子と紗春のシーンの撮影時も、待ち時間は松下さんと桜井さんが楽しそうに盛り上がっていて“一体どんな話をされているんだろう?”と、離れた場所にいる僕らは気になったり(笑)。作品の内容からは想像できないほど和やかで温かい現場です。
――これまでの放送回で印象的だったシーンを教えてください。
第7話のラストで、紗春の弱みを握った聖子が「大丈夫…。紗春さんのしたことは、絶対に誰にも言わないから」と言って不敵な笑みを浮かべるシーンは視聴者からの反響が多かったですし、とても印象的でした。あと、第10話で聖子が初めて一樹に「全部あなたのせいよ」と言うシーンがありましたが、そこで彼女の見え方が一気に変わるというか、ちょっと強い女性に見えたのもよかったなと。ずっと抑えていた感情を、聖子がやっと吐き出せたのが第10話の一樹との電話のシーンだったので、特に印象に残っています。
――松下さんは役とどのように向き合っていらっしゃいましたか?
聖子は、逃亡生活を続ける一樹のケアや紗春との腹の探り合い、そして宮沢氷魚さん演じる記者の天童からは疑惑を持たれているという、対峙する相手の多い難しい役だと思うんです。そんな難役を、松下さんは細かく微調整しながら、そして我々スタッフとも相談しながらとても繊細に演じてくださっています。感情を抑えたお芝居はすごく難しいと思うので、苦しい時間も多かったはずですが、聖子が魅力的なキャラクターに見えるように演じてくださって感謝しています。
――第10話で「一緒に背負う」と言う光聖に、聖子が「迷惑なの!もう二度と会うつもりないから」と、彼に迷惑をかけないようわざと冷たく突き放すシーンがあり、とても切なかったです。
このシーンの撮影が中村海人さんのクランクアップだったのですが、3カ月間貪欲に真面目にお芝居に取り組んでいた彼をこのようなシーンで送り出せたのは本当によかったと思います。クランクイン当初、中村さんは現場でとても緊張されていて、ご本人も第1話の撮影時を振り返って「思い出したくない」とおっしゃったりするのですが、だからこそ光聖という役と真摯に向き合い、現場で「今の大丈夫でしたか?」と確認しながら丁寧に演じてらっしゃいました。視聴者のみなさんに光聖が愛されたのは、彼が演じてくれたからだと思います。

■タイトルの意味もわかる結末に
――近藤さんは本作にどのような思いを込めて作っていらっしゃるのでしょうか。
サスペンスドラマなのでいろいろと不穏な展開がありますが、基本的には母親が子どもを守ろうとするシンプルな話だと思っています。ただ、いくら子どもを守るためだからといって、本当にそれが正しいことなのか、それとも間違っているのか、なかなか判断できなかったりしますよね。例えば、聖子が栄大に何も話さないのは彼に心配をかけたくないという親心ですが、もしかしたらそれは親のエゴかもしれない。本作ではそういった問いかけを最後までしているので、視聴者の方が最終回をどのように受け止めてくださるのか楽しみです。
――最後に、3月23日(月)に放送される最終回の注目ポイントを教えていただけますか。
SNSで“鋭いな”と思う考察をたくさん拝見していますが、今のところピッタリと予想が当たっている方はまだいません。ラスト1分まで驚きの展開がありますし、最後までご覧いただければ「夫に間違いありません」というタイトルにした意味もわかっていただけるはず。賛否両論分かれる結末かもしれませんが、最終回まで楽しんでいただけたらうれしいです。
※山崎真斗の「崎」は正しくは「立つさき」
◆取材・文=奥村百恵


