■ 「忘れたころにまた出る」——10年スパンで臨む覚悟

(※画像はイメージです)
ーークマ被害対策では、予算や専門人材の登用が難しいという声もあります。
小池 そうですね。特に専門家がおらず管理ができていないことは大きな問題です。ただ、「クマがたくさん出た=クマ問題」というふうにメディアでも大きく報じられましたが、実はこれはクマの問題ではないんですね。
ーーどういうことでしょうか?
小池 たとえば東北地方では、高齢化と過疎化が進んでいく中でクマの分布が広がって数も増えてきたわけですね。要は、人がいなくなったところにクマが増えた。それを抑え込む力が地方にはないわけです。これは地方が抱えている問題をクマが表したものといえます。ですから、一時的にクマを退治すれば済むという問題ではないという発想の転換をしないと、これからもクマは出没し続けます。
一元的な管理ではなく、自然管理、野生動物管理、生態系管理など多層的なアプローチが必要になっていきます。同時に、行政に任せきりにせず、各地域ごとに地域住民が情報を共有して対策や方針を固め、技術的・財務的なサポートを行政が請け負うような役割分担が必要でしょう。
ーー昨年はクマの大量出没が大きな話題となりましたが、今年はそうでもないとしたら、徐々に記憶から薄れて対策もなおざりになってしまいそうな気がします。
小池 もし、おとなしい年が何年か続くと、なんだかもう問題解決できたかのように思ってしまうかもしれませんが、忘れた頃にまた大量出没はあり得ます。今のように分布が広がるまで、40~50年の時間がかかってきたわけで、立て直すには同じぐらいの時間がかかるのが自然です。数十年ぐらいのスケールで、人材育成を含めた対策を継続していくことが求められますね。
クマは都心に現れるのか?

※参考データ
環境省「クマ類の出没情報について [速報値](令和8年3月3日)」https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/syutubotu.pdf
環境省「クマ類による人身被害について [速報値](令和8年2月9日 )」
https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/injury-qe.pdf
東京農工大学大学院農学研究院教授小池 伸介1979年、名古屋市生まれ。東京農工大学大学院農学研究院教授。東京農工大学大学院連合農学研究科修了。博士(農学)。専門は生態学。主な研究対象は、森林生態系における生物間相互作用、ツキノワグマの生物学など。現在は、東京都奥多摩、栃木県、群馬県の足尾・日光山地、神奈川県丹沢山地などにおいてツキノワグマの生態や森林での生き物同士の関係を研究している。著書に『クマが樹に登ると』(東海大学出版部)、『わたしのクマ研究』(さ・え・ら書房)、『ツキノワグマのすべて』(文一総合出版)、『ある日、森の中でクマさんのウンコに出会ったら』(辰巳出版)、『タネまく動物』(編著、文一総合出版)など。2024年よりNGO日本クマネットワークの代表も務める。→記事一覧へ
