2月16日に開催された社会保障審議会介護給付費分科会で、厚生労働省は来年度に行う「介護事業経営実態調査」の実施案を示しました。
この調査は介護保険制度改正・介護報酬改定に必要な基礎資料を得ることを目的に、毎回の介護報酬改定の前年に実施されています。
今回、厚生労働省が示した案では、調査は今年の5月に実施。各事業所の2025年度の決算額を調査対象とします。
結果は10月ごろに公表される予定です。
このスケジュール感は、前回・前々回の調査とほぼ同様です。
全ての介護保険サービスを調査対象とし、無作為抽出された事業所に対して調査票を送付します。
これも前回の調査と同様です。

厚労省が示した案について分科会は大筋で了承しました。
しかし委員からは「訪問介護の経営状況をより正確に把握するようにして欲しい」との声が数多くあがりました。
2024年の介護報酬改定では、訪問介護が予想外の減算となりました。
引き下げの根拠になったと言われているのが、その前年に行われた介護事業経営実態調査です。
ここで2022年度決算分の訪問介護の収支差率が7.8%という結果が出ました。他サービスに比べて極めて高い数値です。
一方で、民間信用調査機関のデータでは、ここ数年の間、訪問介護事業者の倒産件数は概ね右肩上がりで増加し続けています。
こうしたことから「厚生労働省の調査は、果たして介護事業者の経営状態をどこまで正しく反映しているのだろうか」という疑問の声があがりました。
調査案に対する委員の声は、こうした状況を踏まえてのものと思われます。

厚生労働省もそうした声があがることを予想していたのでしょうか。
5月の調査では、調査項目の見直しを行うとしました。見直し内容一部は以下の通りです。
①施設系サービスについて食費に計上される食事提供回数を把握するための調査項目を追加する
➁訪問系サービスについて訪問先の状況、訪問時の移動手段及び移動時間を把握する調査項目を追加する。
なお、通所系サービスについても同様
③介護ロボットやICT等の導入状況、その保守や点検などのランニングコストを把握するための調査項目を追加する
この中で、重要なポイントは②です。
2025年~2026年にかけての冬は北日本を中心に大雪となり、介護事業所でも訪問・送迎が困難という事例が多発しました。
事業所から出るため、また訪問・送迎先に入るためにスタッフ自身が除雪をしなくてはいけないケースも多々ありましたが、それに要する時間や費用は報酬では全く考慮されていなかったため、経営面で大きな影響が出ました。
また、次回の調査では、経営実態を正確に分析しようという考えから、訪問介護については、従来は全事業所の10分の1を抽出して調査対象としていたのを8分の1に引き上げます。
このように、厚生労働省もさまざまな対応を行っていますしかし、どれだけ厚生労働省が緻密に調査しようと思っても、当の介護事業者が回答しなければ意味がありません。
前回の調査の有効回答率は48.3%と半数を切りました。
回答には時間や手間がかかるため、特に中小の事業者には負担になります。前回の調査で訪問介護の収支差率が高く出たのは「時間や人手の余裕がある大手・有力事業者ばかりが回答したからではないか」という指摘もあります。
自分たちの経営環境を国にきちんと理解してもらい、実態に見合った報酬にしてもらうには、調査対象となった事業所がきっちりと回答をすることが大切です。
議員を選ぶ選挙でありませんが、決まってしまったことに文句を言っているだけでは何も変わりません。
自分の状況を国に届けられる機会があるならば、それを無駄にしないようにしましょう。
介護の三ツ星コンシェルジュ


