「夢を追うことに年齢は関係ない」豆原一成(JO1)主演、映画『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』

「夢を追うことに年齢は関係ない」豆原一成(JO1)主演、映画『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』

大先輩・市毛さんとの共演での学び

祖母役の市毛さんとの共演は、豆原さんにとって大きな挑戦だった。大先輩との芝居に最初は緊張もあったが、現場で見せた市毛さんの穏やかな人柄が、その不安を和らげてくれた。


 


「市毛さんに初めてお会いしたのが撮影初日でした、大先輩なので最初は正直すごく緊張していて、失礼な話ではありますが『もし怖い方だったらどうしよう』なんて考えて構えていたんです。でも実際はとてもフランクな方でした。気さくに接してくださったおかげで、僕自身も自然体でいられました」


 


市毛さんの飾らない人柄は、豆原さんだけでなく現場全体を和ませていた。市毛さんがまとう穏やかな空気が、チームに一体感を生んでいたと話す。


 


「本当に穏やかな現場でした。市毛さんはスタッフにはもちろん、僕のマネージャーにも気さくに話しかけてくださって、それが自然と現場の一体感につながっていたと思います。とてもアグレッシブな方で、登山やダンスなどいろんなことに興味を持たれていて。僕のトレーニング好きの話で盛り上がったりすることもありました(笑)。けれど芝居に入ると一転、ピンと張りつめた演技に引っ張られる感覚があって、それもすごくいい刺激になりました」


 


祖母と孫の関係性を築くうえで、市毛さんの存在は豆原さんにとって大きな支えとなった。カメラが回っていない時間に交わした他愛もない会話こそが、二人を“拓磨と文子”へと自然に近づけていった。なかでも印象に残っているのは、拓磨と別々に暮らすことになった後に描かれるシーン。ひとり暮らしに戻った文子が自宅から拓磨を見送る姿に、豆原さんは強い切なさを覚えた。


 


「“大学での学び”という好きなことを見つけたのに、娘との関係に、どこかやりきれない思いをずっと抱えていて。孫としても何かしてあげたいのにできない、自分の弱さとか情けなさを感じる部分でもありました。文子の寂しそうな雰囲気は、こちらにも強く伝わってくる、何度観ても心に響くシーンです」


 

家族の絆、そして挑戦。「僕にとって特別な作品」

物語を彩るのは、拓磨と文子の関係だけではない。


 


「この作品には、偉志と文子のシーンを見ているだけで、涙が溢れてきそうになる瞬間がたくさんあります。偉志は回想でしか登場しませんが、『二人はこうやってともに人生を歩んできたんだな』と自然に背景が浮かんでくる。二人が積み重ねてきた日々もまた、この作品の大きな柱となっていると思います」


 


家族の姿を通して描かれるものもまた、この作品を支える大切な要素だ。孫と祖母、夫婦、親子……その在り方を映し出しながら、観る人に「家族とは何か」を問いかけてくる。


 


「家族にはそれぞれの形があって、いろんな価値観があって当たり前。それもひとつの個性だと思うんです。問題やすれ違いも起こるし、家族だからといって自然にわかり合えるわけじゃない。むしろ家族だからこそ、きちんと “言葉”にして思いを伝えることが大事なんだなと強く感じました」


 


そして本作への出演は、豆原さんにとって役者人生の新たな扉を開く経験となった。


 


「この作品に出会えて本当に良かったと思います。大先輩の芝居を間近で見られたことは大きな学びでしたし、そんな素晴らしい皆さんと一緒に作品を作れたことは、自分にとって大きなターニングポイントになりました。これを機に、さらにいろんな役に挑戦していきたいです」


 


インタビューの最後に、「もし俳優やアーティスト以外の道を選んでいたら?」と尋ねると、少し考えるような表情をしてからこう答えてくれた。


 


「消防士とか警察官とか、誰かのためになる仕事にすごく憧れがあります。人の役に立てるってすごくかっこいい。もし今の仕事をしていなかったら、そういう道に進んでいたかもしれません」


 


挑戦に年齢も立場も関係ない。本作はそんな普遍的なテーマを、祖母と孫の姿を通してやさしく語りかけてくる。


 


「自分にとってさまざまな感情を抱えながら挑んだ特別な作品。今までの出演作とは違った目線で観てもらえるんじゃないかなと思っています。若い方には“まだまだ挑戦できるんだよ”と伝えたいし、祖母世代の方には“何歳からでも可能性は広がっていく”という文子の姿に励まされる部分があるはずです。この作品を通じて、一歩踏み出す勇気を感じてもらえたらうれしいです」


 


 

映画『富士山と、コーヒーと、しあわせの数式』

2025年10月24日(金)公開

監督:中西健二

脚本:まなべゆきこ

出演:豆原一成(JO1)、市毛良枝 ほか

(C)2025「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」

配給:ギャガ

text:NANA OMORI

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