家族性「膵臓がん」は若い年齢で発症しやすい?遺伝的要因について医師が解説!

家族性「膵臓がん」は若い年齢で発症しやすい?遺伝的要因について医師が解説!

膵臓がんには遺伝的な要素も関与しており、家族歴がある場合は発症リスクが高くなることが知られています。家族性膵臓がんでは一般的なものより若い年齢で発症する傾向があり、BRCA1やBRCA2遺伝子の変異、リンチ症候群などの遺伝子症候群も膵臓がんのリスクを高めます。遺伝的素因を理解することで適切な予防策や早期発見への取り組みが可能となります。

高木 大歩

監修医師:
高木 大歩(医師)

【経歴】
2021年、杏林大学医学部医学科卒業。
慶應義塾大学病院で初期研修を修了後、川崎市立川崎病院 総合内科、北里研究所病院 消化器内科を経て2025年より慶應義塾大学病院 消化器内科に勤務。

【所属学会】
日本内科学会/日本消化器病学会/日本消化器内視鏡学会/日本肝臓学会

膵臓がんと遺伝的要因・家族歴

膵臓がんには遺伝的な要素も関与しており、家族歴がある場合はリスクが高くなることが知られています。遺伝的要因を理解することで、適切な予防策や早期発見の取り組みができます。

家族性膵臓がんの特徴

家族性膵臓がんは、一般的な膵臓がんと比べて若い年齢で発症する傾向があることが知られています。通常、家族内に2人以上の膵臓がん患者さんがいる場合に家族性膵臓がんの可能性が考えられ、このような家族では膵臓がんの発症リスクが一般人口の約9倍に上昇すると報告されています。

そのため、家族性膵臓がんが疑われる場合には、定期的なスクリーニング検査が推奨されることがあります。スクリーニングには、画像検査(MRIや内視鏡的超音波検査など)や腫瘍マーカーの測定が用いられ、早期発見の可能性を高めることができます。ただし、検査の開始時期や方法については、患者さんの年齢や家族歴に応じて専門医との十分な相談が必要です。

また、遺伝子検査によって家族性膵臓がんに関連する遺伝的素因を調べることも可能ですが、そこには倫理的・心理的な問題が伴います。そのため、検査を希望される際には遺伝カウンセリングを受け、検査結果が持つ意味や今後の対応について十分に理解することが強く推奨されます。

関連する遺伝子症候群

膵臓がんは、いくつかの遺伝子症候群と関連があることが知られています。BRCA1やBRCA2遺伝子の変異は、乳がんや卵巣がんだけでなく、膵臓がんのリスクも高めることが明らかになっています。これらの遺伝子変異を持つ方では、膵臓がんのリスクが一般人口の約3倍から10倍高いとされています。
リンチ症候群も膵臓がんのリスクを高める遺伝子症候群の一つです。この症候群は主に大腸がんや子宮内膜がんのリスクを高めることで知られていますが、膵臓がんの発症リスクも上昇することが報告されています。
家族性大腸腺腫症や遺伝性膵炎なども、膵臓がんのリスクを高める遺伝的要因として知られています。これらの症候群が疑われる場合は、専門的な医療機関での詳しい検査と相談が必要です。

まとめ

家族内に膵臓がん患者さんが2人以上いる場合、発症リスクは約9倍に上昇します。BRCA遺伝子変異やリンチ症候群などの遺伝子症候群も関連があるため、家族歴のある方は定期的なスクリーニング検査が推奨されます。遺伝子検査を検討する際は、遺伝カウンセリングを受けて十分な理解のもとで判断することが大切です。

参考文献

膵臓がん(国立がん研究センター がん情報サービス)

がん対策推進基本計画(厚生労働省)

配信元: Medical DOC

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