
映画「怪物」(2023年)、「国宝」(2025年)に出演し、国内外でいま最も注目を集める俳優・黒川想矢が、3月3日に、自身初となる写真集「コバルト」(扶桑社)を出版した。
WEBザテレビジョンでは、黒川にインタビューを実施。写真家・末長真氏との二人旅で見せた、演技ではない「等身大の姿」に迫る。
■「次がない」と思えるくらい、全力を出し切った
――写真集が完成した、今の率直な感想を教えてください。
まずは、本当にうれしいです。完成した当初は少し不安もありましたが、今は「早く皆さんに見ていただきたい」という気持ちが強くなっています。この写真集には、自分でも驚くような表情がたくさん収められています。
怒っていたり、睨んでいたり、笑っていたり…。そうした無意識の表情を一つの形にしていただいたことで、自分自身を肯定してもらえたような気がして、とても大切な一冊になりました。
――このタイミングで写真集を出すことになった決め手は何でしたか?
何より「今の自分を見てほしい」という思いが強かったからです。16歳の二度と戻らないこの瞬間を刻んでおきたいと思って。次は20歳ですか? なんて聞かれますが、今は「次がない」と思えるくらい、全力を出し切った素敵な一冊ができたと感じています。
■二人旅は「大切な思い出」
――写真家の末長真さんとは二人旅での撮影だったそうですね。
末長さんとは映画『怪物』の時からのご縁ですが、今回は二人きりの旅だったので、撮影中も写真に対する思いや、僕も趣味でカメラを撮るので、色々なことを教えていただきました。夜に眠れなかった日があったんですけど、そんな日も外で「最近どう?」とか、近況を語り合ったりして、すべての時間が大切な思い出です。
――末長さんの写真の魅力は?
写真自体はパキッとしていてかっこいい印象ですが、その中に末長さんの思いが詰まっていて、すごく「温かさ」を感じるところが好きです。それと、緑色の表現がすごく多彩ですてきだなと思います。
■映画『怪物』の時は「苦しかった」
――撮影中、特に印象に残っているエピソードはありますか?
料理をしているシーンです。普段、人と料理をすることがあまりないので、すごく楽しくて思い出深いです。メニューは、アスパラガスのバター醤油炒め、オニオンスープ、ミートスパゲッティを作りました。
実は昔、初めてカレーをスパイスから作った時に、味は良かったのに野菜が生焼けで…。家族から「二度と料理しないで」と言われて以来、ずっと作っていなかったんです(笑)。
今回、ほぼ初挑戦に近い状態でみなさんと作って「料理って楽しいんだな」と改めて感じることができました。
――末長さんのあとがきには「『怪物』の撮影中に理科室で泣いていたというエピソード」もありましたね。
恥ずかしいのであまり書かないで欲しかったんですけど…(笑)。当時は役の「湊」というキャラクターが抱える苦しさと、自分自身の悩みとが重なって、すごく苦しい時期でした。でも末永さんがそっと悩みを聞いてくださったことが、当時の僕にとって大きな救いになったんです。
――役に入り込んで抜け出せなくなることは、よくあるのでしょうか?
『怪物』の時は本当に特別でした。どうすれば役から抜けられるのか分からなくて、いろんな人に相談しました。今は、役としてその出来事を「経験する」という感覚で演じています。
自分が本当に面白くなければ笑えないし、悲しくなければ泣けない。そういう感情の積み重ねが僕の演技です。最近は、撮影中は苦しくても終わればスッと切り替えられるようになりましたが、『怪物』での体験はやはり不思議なものでしたね。
■役と本来の自分は「切り離している」
――黒川さんの中で、俳優としての「やりがい」や「楽しさ」はどこにありますか?
演技には「正解がない」ところが面白いです。役を乗り越えるたびに自分自身が変化していくのを感じますし、自分でも知らなかった感情や、新しい自分に出会える瞬間がとてもうれしい。
なかなか16歳では体験できないような、たくさんの感情に出会えることが、やりがいにつながっています。
――SNSや周囲からの評価については、どう捉えていますか?
プレッシャーとかは全くありません。賞をいただいたりすると一瞬は調子に乗っちゃうかもしれませんが…(笑)。スクリーンに映っているのは監督やスタッフの皆さんが作り上げてくださった姿で、本当の自分とは少し切り離して考えているところがあります。
自分一人の力ではないと思っているので、どこか客観的に捉えていますね。
■心の不安定さに「嫌になる瞬間がある」
――写真集のテーマである「自分自身との向き合い」について。16歳という年齢ゆえの不安定さを感じることはありますか?
ずっとありますね(笑)。もう、それしかないくらい。自分でも嫌になる瞬間がありますが、今回の『コバルト』では、末長さん、編集者さん、スタッフの皆さんがそういう部分もひっくるめて「それでいいんだよ」と大切に撮ってくださいました。
誰かに肯定してもらえることが、こんなにうれしいんだと実感しましたし、学びにもなりました。
――最後に、手に取ってくださるファンの方へメッセージをお願いします。
ページをめくると「こんな顔をするんだ」と驚かれるかもしれません。でも、それも僕の新たな一面として楽しんでいただけたらなと。この写真集を読んだ皆さんが、ご自身の16歳の頃を思い出して懐かしくなったり、温かい気持ちになっていただけたら、すごくうれしいです。

