脳トレ四択クイズ | Merkystyle

ちょっと怖い?ドガ《エトワール(星)》に見る、花形バレリーナの輝きと現実

見上げるのではなく、のぞき込むような視線が場面を揺らす

しかもドガは、この踊り子を正面から堂々と見せてはいません。少し高い位置から、斜めに、舞台を切り取るように描いています。

この視点のせいで、私たちの目は中央の踊り子に惹きつけられながらも、どこか落ち着きを失います。舞台装置は不自然に切れ、奥の空間はわずかに歪み、舞台全体が安定した祝祭の場には見えません。まるで、客席から整然と眺めているのではなく、誰かがそっとのぞき見た一瞬のようです。

【部分】エドガー・ドガ《エトワール》1876-77年、オルセー美術館, Public domain, via Wikimedia Commons.

だからこの絵には、晴れやかな舞台画にはない生々しさが残ります。輝きのただなかにありながら、どこか危うい。ドガはその揺らぎごと、舞台を描こうとしました。

左奥に立つ男が、祝祭の空気を一変させる

では、この男は誰なのでしょうか。19世紀パリのオペラ座には「アボネ」と呼ばれる富裕な男性定期会員たちがいました。彼らはただの常連客ではなく、特権的に舞台裏へ出入りすることができる存在でした。上演中も舞台袖に姿を見せ、踊り子たちに接近することがあったのです。

【部分】エドガー・ドガ《エトワール》1876-77年、オルセー美術館, Public domain, via Wikimedia Commons.

そこでは恋愛、援助、社交、欲望が複雑に絡み合い、ときに大きく不均衡な関係が生まれました。華やかなオペラ座は、夢の舞台であると同時に、パトロン文化や高級売春の気配とも隣り合わせの場所でもありました。

配信元: イロハニアート

提供元

プロフィール画像

イロハニアート

最近よく耳にするアート。「興味はあるけれど、難しそう」と何となく敬遠していませんか?イロハニアートは、アートをもっと自由に、たくさんの人に楽しんでもらいたいという想いから生まれたメディアです。現代アートから古美術まで、アートのイロハが分かる、そんなメディアを目指して日々コンテンツを更新しています。