脳トレ四択クイズ | Merkystyle
元JAXA宇宙飛行士の野口聡一が明かす 《隔離生活》から始まる宇宙飛行の舞台裏|野口聡一

元JAXA宇宙飛行士の野口聡一が明かす 《隔離生活》から始まる宇宙飛行の舞台裏|野口聡一

無重力の宇宙で、ラーメンは食べられるのか。お風呂やトイレはどうするのか。狭い空間で、どうやって心と人間関係を保つのか――。夢とロマンに満ちた宇宙での暮らしには、地上とはまったく異なる現実があります。

そんな〝宇宙生活のリアル〟を教えてくれるのが、3度の宇宙飛行を経験し、ギネス記録も持つ宇宙飛行士・野口聡一さんの著書『宇宙でラーメンは食べられるか 宇宙暮らしのロマンと現実』です。宇宙で実際に暮らしてみて初めてわかる驚きや工夫、そして人間らしい悩みや楽しみについて、本書から一部をご紹介します。

*   *   *

宇宙の暮らしのスタートは、地球での隔離生活!?

宇宙飛行士は待つのが仕事といっても過言ではありません。私の場合は、宇宙飛行士候補者に選ばれてから9年、宇宙飛行が決まってから4年待ってようやく、実際に宇宙に飛び立つことができました。そんな宇宙飛行士にとって、打ち上げ直前の「待つ仕事」が「隔離生活」です。

宇宙飛行士は打ち上げ前の一定期間を宇宙船に乗るメンバーのみで過ごし、打ち上げの日を待ちます。荷物のパッキングやお金の準備は、この隔離生活前にすませておきます。

隔離期間は、2005年にNASAのスペースシャトルに乗ったときと、2020年にスペースXのクルードラゴンに乗ったときは1週間、2009年にロシアのソユーズに乗ったときは2週間半でした。

隔離生活の最大の目的は、地球の有害なウイルスを宇宙に持ち込まないようにすることです。たとえば、宇宙飛行士の誰かが新型コロナウイルスに感染していて、そうとは知らずに宇宙に行き、宇宙船やISSで発症してしまったら……?

宇宙船やISSという狭い空間では、あっという間に感染が広がってしまうでしょう。地上の病院のように十分な医療設備があるわけではありませんし、医師免許を持つメンバーが同行しているとは限りませんから、深刻な状況になるおそれもあります。

こうしたトラブルを防ぐために、隔離生活中は人との接触が厳しく制限されます。宇宙飛行士と会えるのは、面会前に健康チェックを受けてパスした人だけ。感染源になりやすい子どもとは接触できません。

万が一、隔離生活中に病気になってしまったら、その宇宙飛行士は原則として、バックアップクルーと交代になります。正規クルー(プライムクルー)がなんらかの理由で飛行できなくなってしまった場合に備え、バックアップクルーは正規クルーと同等の訓練を受けています。

ただ、宇宙飛行士は3年以上かけて準備をしていますし、チームの士気もロケットの打ち上げを前に高まっています。交代せずにすむならそれがいちばんです。したがって、数日~1週間程度で回復が見込めるのなら、打ち上げを遅らせるという判断もありえます。なお、隔離生活中は宇宙飛行士も毎日医師による健康チェックを受けますから、体調不良を隠すのは無理です。

隔離生活のもう一つの任務――時差ボケを消す

話が少しそれました。

隔離生活中にはもう一つ、重要なミッションが行われます。時差ボケ対策です。

ISSではグリニッジ標準時(ロンドン時間)が使用されています。ロシアから打ち上がるときは、モスクワ時間を採用するのでISSとの時差は3時間。アメリカから打ち上がるときは、ヒューストン時間に合わせるため、ISSとの時差が6時間になります。対策をしておかなくては、ISSでつねに眠気と戦う羽目になります。そこで、隔離生活中は就寝時間を少しずつずらして調整していきます。

ここまで読んで、「隔離生活中の宇宙飛行士はひまそうだな」と感じた人もいるかもしれません。

2005年のスペースシャトルのときは、隔離生活中も忙しかった記憶があります。

宇宙飛行士はT-38というジェット練習機を使って飛行訓練を行います。隔離用宿舎があるフロリダのケネディ宇宙センターには滑走路があり、隔離生活中も飛行訓練ができてしまうのです。操縦の勘が鈍らないという点では非常によかったのですが、おかげで、打ち上げ直前までわりと忙しく過ごしました。

2009年のソユーズのときは、気力と体力をしっかり回復できました。宇宙船の運航で使う手順書のチェックやシミュレーターを使った簡単な訓練はあるものの、スケジュールに余裕があったからです。ロシアではサウナが人気なので、隔離生活中は毎日3時間ぐらいサウナに入っていたメンバーもいました。

2020年のクルードラゴンのときは、ちょうどコロナ禍の真っ最中。ワクチンもまだ接種開始されていなかったため、かなり厳密な隔離生活を送っていました。対面で会えるのは、ともに宇宙に行く4人だけ。あとはひたすらオンラインで会議をしていた覚えがあります。

配信元: 幻冬舎plus

提供元

プロフィール画像

幻冬舎plus

自分サイズが見つかる進化系ライフマガジン。作家・著名人が執筆するコラム連載、インタビュー、対談を毎日無料公開中! さまざまな生き方、価値観を少しでも多く伝えることで、それぞれの“自分サイズ”を考え、見つける助けになることを目指しています。併設のストアでは幻冬舎の電子書籍がすぐに立ち読み・購入できます。ここでしか買えないサイン本やグッズ、イベントチケットも。