
ドラマの主役には圧倒的な“華”だったり、特殊な能力を持つなどの強烈な個性があるケースが少なくない。10月6日(月)から始まる“月9”ドラマ「絶対零度~情報犯罪緊急捜査~」(毎週月曜夜9:00-9:54、フジテレビ系※初回は夜9:00-10:09)の主演は、沢口靖子。フジテレビの連続ドラマ主演は実に35年ぶりという、満を持しての登場である。沢口は生活安全課から来た最年長刑事の二宮奈美を演じ、犯人の顔が見えない“情報犯罪”の解決に挑む。15年もの長い間続く人気シリーズ「絶対零度」。第1シリーズの上戸彩が演じる主人公・桜木泉は、逆に普通っぽさも魅力の刑事。桜木の良さが垣間見える第10話が現在、FOD・TVerにて無料公開中のため、紹介していこう。(以下、ネタバレが含まれます)
■桜木泉は“普通っぽさ”を武器に捜査に挑む
「絶対零度」シリーズの歴代主人公は、シリーズ1・2が新人刑事・桜木泉(上戸)、シリーズ3・4は元公安のエリート刑事・井沢範人(沢村一樹)、そしてシリーズ5でベテラン刑事・二宮奈美(沢口)が引き継ぐ形だ。泉は新人だけあって、他の刑事と比べてまだ頼りない部分が多く、捜査も荒削り。勤務時間内に考えや資料を整頓することができずに、職場に泊まってしまうこともしばしばある。しかし、並外れた能力がある特殊な刑事と違い、庶民的な普通の感覚や心の温かさが泉の何よりの武器。クールで現実主義の同僚刑事たちが見逃してしまうような事実を拾い上げて徹底的に捜査をする姿が胸を打つ。
■理系大学で講師が殺害…泉はその裏にある真実を追う
第10話。泉(上戸)は26歳の誕生日も仕事に追われ、4係のデスクで朝を迎えていた。そこに倉田(杉本哲太)が現れ、1年前に起きた「東京理工大学講師殺人事件」の再捜査が決まったことを伝える。2009年、東京理工大学の講師・浅井(斎藤歩)が殺害された。浅井の遺体の傍にいた血だらけの広田(若葉竜也)は、慌てて逃げて階段から足を踏み外し、死亡してしまう。事件前夜に広田は働いていたバーで客の浅井と揉めており、動機は怨恨だとされていた。また現場から凶器が発見されず、状況証拠から見ても犯人は広田だとされ、被疑者死亡で書類送検された事件であった。
しかし2010年6月、多摩川の河川敷で浅井の血痕がついた凶器が発見される。共犯者もしくは広田ではない別の真犯人がいる可能性が出てきたため、再捜査が決定したのである。倉田の指示のもと、泉と深沢ユウキ(丸山智己)は浅井が所属していた研究室を尋ねる。そこで、泉と深沢は事件の第一発見者から、浅井が人の秘密を調べ上げてはニヤつくような悪趣味があったことを聞く。聞き込みをしていると、教授の園田(浅野和之)と助教の瑶子(ともさかりえ)が研究室に入ってきた。泉は瑶子に浅井について聞いてみる。
■助教と教授の関係に涙…
SNSに「絶対零度の“ともさかりえ”回、泣ける」という声が並ぶほど、第1シリーズ第10話のストーリーは感動ものである。一見、犯人捜査が複雑な殺人事件のようだが、ともさか演じる助教・瑶子の半生が色濃く集約されたような切ない事件。
苦労人の瑶子は、助教の職に就く前、自身がバイトしていた喫茶店で園田と出会っていた。小難しい資料を並べて研究に没頭する園田の姿に、瑶子は自分がどこかに置いてきた気持ちを取り戻す感覚を抱き、みるみる園田を尊敬していく。それが悲劇の始まりだったことに気付くのが、“被害者にも加害者にも人の心がある”と信じ続ける泉なのだ。被害者の浅井と教授・園田の関係、園田が人知れず抱えるある病気、そして、瑶子の気持ちが絡み合い生まれてしまった事件。泉の刑事人生にとっても、印象深い回となったであろう。

