TIAの症状が現れた場合、たとえ短時間で消失しても迅速な対応が求められます。適切な初期対応が、その後の予後を大きく左右するためです。ここでは、症状が現れたときの具体的な行動指針、救急車を呼ぶべきタイミング、受診する診療科や初期検査の内容について、緊急時に役立つ実践的な情報を詳しく解説します。

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)
鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。
一過性脳虚血発作(TIA)を疑ったときの緊急対応
TIAの症状が現れた場合、たとえ短時間で消失しても、迅速な対応が必要です。適切な初期対応が予後を大きく左右します。
症状が現れたときの行動指針
TIAが疑われる症状(片側の麻痺やしびれ、言語障害、視覚障害など)が突然現れた場合、まず安全な場所で安静を保ち、無理に動かないことが大切です。症状が数分で消失したとしても、決して「気のせい」「疲れのせい」と片付けず、速やかに医療機関を受診してください。可能であれば、症状が現れた時刻、症状の内容、持続時間をメモしておくと、診察時に役立ちます。周囲に人がいる場合は、助けを求めて救急車を呼ぶことも検討してください。特に症状が持続している場合や、症状が消失しても再び現れる場合は、緊急性が高いと考えるべきです。また、一人暮らしの方や高齢の方は、症状が消えても自己判断で放置せず、家族や知人に連絡して受診を促してもらうことも重要です。
救急車を呼ぶべきタイミング
以下のような状況では、迷わず救急車(119番)を要請してください。症状が現在も続いている場合、特に片側の麻痺、言語障害、激しい頭痛、意識障害などがある場合は緊急を要します。症状が一旦消失したものの、短時間で再び現れる場合も注意が必要です。高齢者や既往歴(高血圧、糖尿病、心房細動など)がある方で初めてこうした症状が現れた場合も、リスクが高いと考えられます。救急車を呼ぶことをためらう方もいますが、TIAは脳梗塞の前触れであり、時間との勝負です。「たいしたことないかもしれない」と思っても、専門家の判断を仰ぐことが最善の選択です。救急隊員には症状の内容、発症時刻、既往歴、服用中の薬などを正確に伝えてください。
受診する診療科と初期検査
TIAが疑われる場合は、脳神経内科または脳神経外科を受診します。救急外来では、まず神経学的診察によって症状の有無と程度を確認します。次に、頭部CT検査やMRI検査で脳梗塞や脳出血の有無を調べます。MRI検査は脳の微細な変化も捉えられるため、TIAの診断に有用です。さらに、頸動脈エコー検査やMRAで脳血管の狭窄や閉塞の有無を評価します。心電図検査で心房細動などの不整脈がないかを確認し、血液検査で血糖値、脂質、凝固機能などを調べます。これらの検査結果をもとに、TIAの原因(動脈硬化、心原性塞栓、小血管病変など)を特定し、再発予防のための治療方針を決定します。入院が必要かどうかは、リスク評価スコア(ABCD2スコアなど)を参考に判断されます。
まとめ
一過性脳虚血発作(TIA)は、脳梗塞への重要な警告サインです。症状が一時的であっても決して軽視せず、速やかに医療機関を受診することが、その後の重篤な脳卒中を防ぐ鍵となります。本記事で紹介した予兆症状のチェック、危険因子の管理、緊急時の対応方法を日常生活に取り入れ、ご自身やご家族の健康を守るための知識としてお役立てください。気になる症状や不安がある場合は、迷わず脳神経内科や脳神経外科の専門医にご相談ください。
参考文献
日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕」
国立循環器病研究センター「脳血管内科」

