あまり聞きなじみのない脚気(かっけ)と呼ばれる病気は、どのような症状の病気かと知っている人は多くありません。
昔流行った病気として知っている人も、詳しい症状や原因については知らないという人が多いです。
ところがこの病気は昔特有のものではなく、現代に増えつつある病気になってきています。
今回は脚気とはどんな病気なのか、症状や原因についての疑問を解決していきます。
※この記事はメディカルドックにて『「脚気(かっけ)」とは?症状についても詳しく解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
小池 達也(医師)
大阪市立大学医学部卒業。現在は白浜はまゆう病院整形外科所属、骨リウマチ疾患探索研究所所長、大阪市立大学大学院医学研究科高齢者運動器変性疾患制御講座を兼務。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本整形外科学会認定スポーツ医。
脚気(かっけ)はどんな病気?

脚気の症状を教えてください。
症状は複数あり、下記の症状は上から順番に初期〜末期にみられる症状です。
イライラしやすい
全身に倦怠感を覚える
疲労が溜まりやすい
食欲の低下
手先・足先のむくみや痺れ
動悸・息切れ
脚などの感覚が麻痺
歩行困難
昏睡
心不全
上記のような症状がみられると脚気の可能性があります。しかし全身の倦怠感や疲労が溜まりやすいなどはこの病気特有の症状ではないため、判断しづらいことが多いです。
末端の神経に障害が起こり病気の症状を引き起こしますが、痛みが弱く違和感を覚える程度の人も少なくありません。しかし重度になると足が動かない・心不全になる恐れもあり、最悪の場合死に至るケースもあるため軽視できない病気なのです。
脚気の原因は何でしょうか?
脚気はビタミンB1欠乏症ともいわれる病気で、糖をエネルギーに変換するなどの働きをするビタミンB1の不足が原因で発症します。
ビタミンB1は体内で自然に作られないため、口に入れることで栄養を吸収しなければならないのです。一般的な食生活を送っている場合、栄養が不足し過ぎることはあまりありません。ところが、食生活の偏りでビタミンB1が摂取率が低い・糖の摂りすぎでビタミンを多く消化するなどの体内活動がひどくみられると、脚気を引き起こす可能性が高くなります。
日本の国民病とも言われていると聞きます。
脚気は玄米に多く含まれる栄養素ビタミンB1の不足で起こります。現代ではその他のさまざまな食べ物から栄養を摂ることができますが、昔は食生活が豊かではありませんでした。そのため、主食が玄米から白米へ移行し始めた江戸時代の頃にビタミンB1不足の人々が増加し、日本の国民病ともいわれるほど脚気を患う人が増えるようになったのです。
とくに明治時代の日本に広まり、歩行困難や心不全で死亡する人も少なくありませんでした。病気の流行は幼い子どもから年配の方まで幅広く、貧しい食生活を送る人が多かった昭和35年頃まで続いています。産業や経済が発達するにつれて日本の食生活が豊かになり、栄養が不足している人があまりみられなくなったことで脚気の流行も収まりました。
脚気を引き起こす疾患にはどのようなものがありますか?
胃がんなどで胃を切除したことによってビタミンを吸収しづらい人や吸収不良症候群などの他の病気によってビタミン摂取が困難な人も脚気になることがあります。また、アルコール依存症などのお酒をたくさん飲む人はビタミンB1を過剰に消費するため発症しやすいです。低栄養や栄養不足といった他の栄養素もあわせて不足している人もなりやすいです。
栄養が摂りづらい貧しい人・精神病を患っている人・成長期で豊富な栄養が必要な人・食が細い高齢者などもビタミン不足から発症しやすいため注意しましょう。
脚気には合併症はあるのでしょうか?
ビタミンB1の不足により発症するウェルニッケ脳症とコルサコフ症候群は、脚気の合併症になることもあります。
ウェルニッケ脳症とは、目の動きが悪い・ふらつきによる歩行困難・認知機能の低下などがみられる病気です。コルサコフ症候群はウェルニッケ脳症が慢性化するとみられる疾患で、古い記憶を忘れる・新しい記憶を作れないなどの記憶障害がみられます。どちらもアルコール依存症や精神疾患を抱えている人にみられやすい疾患で、ビタミンB1不足がもとになり発症します。
脚気は重症化した場合心不全を引き起こすこともあります。心不全になるまでには何らかの他の症状が出ている可能性が高いため、倦怠感や手足の麻痺など異変がみられたらすぐに病院を受診しましょう。
編集部まとめ

脚気は、誰もが発症する可能性のある病気です。
しかし初期症状は倦怠感や疲労が溜まりやすいなどで、病気だと気づかずに生活を送っている人も少なくありません。
放置すると最悪の場合死に至ることもあるため、普段からビタミンB1が含まれる豚肉や大豆類を積極的に摂り脚気の予防に努めましょう。
参考文献
脚気(かっけ)の原因 症状・疾患ナビ|健康サイト

