塩分の過剰摂取は高血圧だけでなく、骨の健康にも悪影響を及ぼすことが報告されています。骨粗鬆症の予防と管理において、塩分摂取量の適正化は見落とされがちですが、重要な要素の一つです。塩分を摂りすぎると、体内のナトリウム濃度を調整する過程でカルシウムも一緒に排出されてしまいます。ここでは、塩分がカルシウム排出を促すメカニズムと、日常生活で実践できる減塩方法について詳しくご紹介します。

監修医師:
松繁 治(医師)
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定脊椎内視鏡下手術・技術認定医
塩分と骨密度の関係性
塩分の過剰摂取は高血圧や心血管疾患のリスクを高めるだけでなく、骨の健康にも悪影響を及ぼすことが報告されています。骨粗鬆症の予防と管理において、塩分摂取量の適正化は見落とされがちですが、重要な要素の一つです。
塩分がカルシウム排出を促進するメカニズム
塩分を過剰に摂取すると、体内のナトリウム濃度を調整するため、腎臓から尿中へナトリウムが排泄されます。この際、カルシウムも一緒に排出される量が増えることが知られています。研究によると、ナトリウム摂取量が1000mg増えるごとに、尿中カルシウム排泄量が約20〜40mg増加するといわれています。日本人の平均的な食塩摂取量は1日あたり約10g程度とされており、これは世界保健機関が推奨する5g未満の2倍に相当します。慢性的な高塩分摂取は、長期的に骨からのカルシウム流出を促進し、骨密度の低下につながる可能性があります。特に閉経後の女性や高齢者は、ホルモンバランスの変化により骨代謝が変わるため、塩分摂取による影響を受けやすいと考えられています。
減塩を実践するための具体的な方法
塩分摂取を減らすためには、調味料の使い方と食品選びの両面からアプローチすることが効果的です。醤油や味噌などの伝統的な調味料は、減塩タイプのものを選ぶことで、風味を保ちながら塩分を3割程度減らすことができます。出汁をしっかりとることで旨味が増し、塩分が少なくても満足感のある味付けになります。昆布や鰹節、干し椎茸などの天然の出汁素材を活用すると良いでしょう。また、酢やレモン汁などの酸味、香辛料やハーブの香りを利用することで、塩分を控えめにしても物足りなさを感じにくくなります。加工食品は塩分含有量が高いものが多いため、購入時に栄養成分表示を確認し、ナトリウム量が少ないものを選ぶ習慣をつけることが大切です。外食時には、汁物を残す、醤油やソースを別添えにしてもらうなどの工夫も有効です。
まとめ
骨粗鬆症の予防と管理において、タンパク質は重要な栄養素の一つです。骨はカルシウムだけでできているわけではなく、約30%はコラーゲンなどのタンパク質からなる骨基質で構成されています。タンパク質が不足すると骨形成が低下し、骨密度の維持が難しくなる可能性があります。また、十分なタンパク質摂取は筋肉量の維持にも関わり、転倒予防にも役立つと考えられています。一方で、極端に高タンパクな食事はカルシウム排泄を増やす可能性が指摘されていますが、通常の摂取範囲であれば骨に悪影響は少ないとされています。骨粗鬆症予防には、肉・魚・大豆製品・乳製品などから適量のタンパク質をバランスよく摂取することが大切です。
また、カルシウム吸収を妨げる食品や塩分、アルコール、カフェインの過剰摂取に注意し、カルシウム、ビタミンD、ビタミンK、マグネシウムなどの栄養素をバランス良く摂取することが大切です。バナナをはじめとする食材を上手に活用し、適度な運動と転倒予防対策を組み合わせることで、骨密度の維持が期待できます。個人の健康状態や既往症によって適切な対策は異なるため、気になる症状がある方や骨粗鬆症のリスクが高い方は、整形外科や内分泌内科などの専門医療機関を受診し、定期的な骨密度測定と適切な指導を受けることをおすすめします。
参考文献
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
日本骨粗鬆症学会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2025年版」
骨粗鬆症財団「骨粗鬆症とは」
厚生労働省 「骨粗鬆症」

