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スカラベ(虫)は古代エジプトの神様だった?映画『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』を通して

映画『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』(1999)

参照:映画『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』

《フネフェルのパピルス》(紀元前1275年ごろ)《フネフェルのパピルス》(紀元前1275年ごろ)/大英博物館, 審判の場面, Public domain, via Wikimedia Commons.

スティーブン・ソマーズ監督による本作は、「ホラー映画の始祖」と称される『ミイラ再生』(1932年)を大胆にリメイクしたアクション・アドベンチャーです。

舞台は1923年。伝説の都「ハムナプトラ(死者の都)」に眠る財宝を求め、元フランス外人部隊の荒くれ者リック・オコーネルと、聡明だけど少しドジな図書館員エヴリン、彼女の兄ジョナサンが砂漠への冒険に旅立ちます。

物語の核心になるのが、3000年の時を超えて蘇った大神官イムホテップです。彼はかつてファラオ(セティ1世)の愛人アナクスナムンと恋に落ち、王を殺害したことで、大罪人として極刑を課されました。これが映画史上屈指のトラウマシーンとして語り継がれる「ホムダイ」です。

生きたままミイラにされ、肉食の「スカラベ」とともに石棺に閉じ込められ、食い尽くされるという想像を絶する拷問。古代エジプト人は、死後の復活を信じてミイラを作りましたが、ホムダイでは死ぬことさえ許されず、永遠に棺の中で苦しみ続けるよう、呪術的な設計がなされていたのです。

映画には心をくすぐるアイテムも多数登場します。イムホテップを蘇らせてしまう「死者の書」。彼を冥界へ送り返す、黄金の「アメン・ラーの書」。リックが戦闘能力を、エヴリンがエジプト史の知識を活かし、次々と襲いかかる危機を突破していく様子は、アクション映画として楽しめるだけでなく、考古学への憧れも強く刺激してくれることでしょう。

スカラベとは?古代エジプトにおける意味

アンハイの『死者の書』アンハイの『死者の書』, リチャード・H・ウィルキンソン著『The Complete Gods and Goddesses of Ancient Egypt』より(制作:紀元前1050年ごろ、書籍出版:2003年), Public domain, via Wikimedia Commons.

作中で、スカラベは群れをなして人間に襲いかかる「肉食の甲虫」として描かれました。地面が波打ち、無数の黒い影が迫りくるシーンが記憶に焼き付いている方は少なくないと思います。でも、現実のスカラベは、人を襲うことのない穏やかな昆虫です。

スカラベの正体は、甲虫類コガネムシ科タマオシコガネ属に該当する、いわゆるフンコロガシです。単独の種名ではなく、いくつもの種があり、古代エジプト人が崇拝していたのは「ヒジリタマオシコガネ」だとされています。彼らは動物の排泄物を丸めてボール状にし、後ろ足で器用に転がして巣穴へ運びます。また、その中でメスは卵を産み、孵化した幼虫は糞塊を食べて成長するそうです。

古代エジプト人は、フンコロガシが球体を転がす姿を見て、「東から西へと太陽を運ぶ神の姿」に重ね合わせ、「太陽神ラー」の別の姿である「太陽神ケプリ」と同一視しました。そして太陽神ケプリが、スカラベの顔を持つ人間の姿、あるいはスカラベそのものの姿で描かれ、「日の出」を司る神として崇拝されていきます。

古代エジプトの信仰の中心は太陽信仰であり、数多くの太陽神が存在しましたが、ラーはその代表でした。日の出のとき、「天空の女神ヌト」の腿の間から出て、フンコロガシの姿をしたケプリとして東に現れます。日中はハヤブサの姿、あるいは太陽の船に乗って空を移動し、夜は雄羊の姿で夜の船に乗り、死の世界を旅すると考えられていました。

映画で描かれた「死と恐怖の象徴」とは真逆で、古代エジプトにおけるスカラベは「再生と復活の象徴」だったのです。

配信元: イロハニアート

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