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スカラベ(虫)は古代エジプトの神様だった?映画『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』を通して

スカラベのモチーフはどう用いられた?

《アメンエムハト3世の名を持つサトハトホルイウネトのスカラベ》《アメンエムハト3世の名を持つサトハトホルイウネトのスカラベ》(紀元前1887年~紀元前1813年)/メトロポリタン美術館, Public domain, via Wikimedia Commons.

古代エジプト文明において、スカラベのモチーフは、護符(神の名前や呪文を記した小型の装身具)や指輪、印章などとして普及しました。王室の功績を宣伝する政治的・外交的目的で制作されたり、葬送儀式でも重要な役割を果たす存在だったようです。

例えばアメンホテプ3世(紀元前1388年〜紀元前1351年ごろ)の時代、最初の12年間の業績を記した5大記念スカラベがあります(「ライオン狩りスカラベ」「結婚スカラベ」「野牛狩りスカラベ」「キルヘパのスカラベ」「湖造営スカラベ」)。その内容から、国の情勢が安定しており遠征が少なかったこと、経済も潤っていたことが伺えます。

ほかにも有名なのが《アメンエムハト3世の名を持つサトハトホルイウネトのスカラベ》です。 「サトハトホルイウネト(シトハトホルユネト)」とは、古代エジプト第12王朝の4代ファラオ・センウセレト2世の娘で、アメンエムハト3世の叔母にあたります。

まずスカラベの裏面に、当時のファラオであるアメンエムハト3世の名前が刻まれており、アメンエムハト3世とサトハトホルイウネトが密接な関係で、これは王からの贈り物だった可能性が考えられます。

使用されているラピスラズリは、スカラベなどの護符や装飾品によく用いられた素材です。古代エジプトでラピスラズリはとても高く評価され、ファラオや王族、神官などの祭司階級しか身に付けられない時代もありました。歴代のファラオに尊ばれ、黄金に匹敵するほどの価値をつけられたこともあったとか。

ちなみに、葬送儀式に用いられるスカラベは「ハートスカラベ」と呼ばれます。ミイラの胸の上に置かれる大きめのスカラベで、裏面には『死者の書』第30章Bの呪文が刻まれていました。

《ハートスカラベ(所有者名は消去済み)》《ハートスカラベ(所有者名は消去済み)》(紀元前664年〜紀元前380年)/メトロポリタン美術館, Public domain, via Wikimedia Commons.

古代エジプトの死生観では、死者は冥界(ドゥアト)を通過するため、神々による審判を受けなければなりません。天秤の片方に死者の心臓、もう片方に宇宙の真理である「マアト」の羽を乗せ、生前のおこないを確認する儀式がありました。もし罪を犯していれば心臓が重くなって釣り合わず、怪物アメミットに心臓を食べられ、魂が消滅してしまいます。

そこで、心臓が偽りの証言をしないよう、あるいは必要に応じて心臓の代わりを務めるよう、スカラベに呪文を刻んで封じたのです。スカラベには、来世での復活に対する切実な祈りも託されていました。

スカラベが教えてくれる古代エジプトの死生観

映画『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』では、観客を震え上がらせる恐怖の演出だったスカラベ。しかし古代エジプト史を紐解くと、太陽の運行を支え、死者の魂を来世へと導く、頼もしくて美しい守り神だったことがわかります。

次に映画を見返すとき、あるいは博物館でスカラベの形をした美術品を目にした際は、その小さな背中に込められた願いを、ぜひ思い出してみてください。

配信元: イロハニアート

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