クックパッドがスタートさせた新たな機能「レシピスクラップ」をめぐり、SNSにレシピを掲載している料理研究家やレシピサイトの運営者らから、「レシピを作った人へのリスペクトを欠くのではないか」といった批判が相次いでいる。
この機能は、SNSやウェブ上のレシピのURLなどを取り込むと、AIが材料や手順を抽出し、アプリ内に整理・保存できるというもの。保存されたレシピは非公開で、元の投稿へのリンクも表示される仕組みだ。
ユーザーにとっては、複数のサイトを行き来せずにレシピを管理できるメリットがある。一方、元の投稿へのアクセス機会を減らすのではないかとの懸念も指摘されている。
こうしたサービスは、法的どのように評価されるのだろうか。著作権法にくわしい福井健策弁護士に聞いた。
●レシピは著作権で保護されない
──そもそも料理レシピは著作物としてどの程度保護されるのでしょうか。
純然たる料理の作り方は「アイデア」であり、一般に著作権では保護されないと考えられています。
「アイデアは自由に利用していい」というのは世界共通の著作権の大原則で、国際条約(TRIPs協定など)でもアイデアの独占は禁じられているほどです。
人類は先人の良いアイデアを模倣し共有することで発展して来たという、情報の本質に由来する考え方ですね。
もっとも、作り方を文章で表現する際に書き手の個性が表れていれば、その文章自体は著作物にあたることがあります。つまりは程度問題です。
●AIが抽出する行為は私的複製になる?
──編集部がinstagramに掲載されていたあるレシピをクックパッドのアプリ内に保存したところ、「材料・作り方」だけでなく、元投稿にあった「コツ・ポイント」までほぼ同じ文面で保存されました。また、元投稿が動画のみの場合でも、AIが内容を読み込んでテキスト化し、レシピを保存できるようでした。こうした仕組みは、著作権法上どのように評価されますか。
AIが材料や手順を抽出する行為は「情報解析」にあたります。その前提として元のレシピの文章を保存しているとすれば、これは著作権法上の「複製」に該当します。
著作権法は私的な複製を許していますが、この場合に「私的複製」といえるかが問題になります。全体として、クックパッドが事業として保存からAIによる解析・抽出までを提供していると評価されれば、私的複製として許されるのは難しいかもしれません。
もっとも、仮に複製の主体がクックパッドだと判断された場合でも、著作権法30条の4や同47条の5といった例外規定があり、情報解析のための準備的な複製は一定の条件のもとで許されます。
ただし条件があります。
第一に、解析の結果として、軽微な程度を超えて特徴までそっくりな文章を出力する場合には、学習用の保存も文章の出力も認められなくなります(47条の5・1項参照)。
第二に、特徴が似た文章を出力しない場合でも、その情報解析の結果、著作権者(ここでは著作物にあたるレシピを書いたシェフなど)の利益を「不当に害する」と評価されれば、学習のための保存自体が認められません(各条文ただし書き参照)。
今回は、特徴までそっくりなレシピや「コツ・ポイント」の文章がAIによって出力されるという情報にも接します。
詳細は未検討でコメントできませんが、仮に著作物といえる文章とそっくりの文章が出力されるようであれば、著作権侵害のリスクは出てくるでしょう。
また、同じようにアプリ内で元のレシピに掲載された写真などのサムネール画像がそのまま保存・表示される場合には、この点についても侵害の検討が必要になります。

