
国民的グループ・SMAPのメンバーとしても長年にわたり活躍してきた草なぎ剛。バラエティ番組やYouTubeなどマルチに活動の幅を広げる一方、日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞を受賞するなど、俳優としても確固たる地位を確立している。そんな彼の代表作の一つである、ドラマ『フードファイト』シリーズが3月6日より動画配信サービス・Huluにて見放題配信をスタート。そこで本記事では、草なぎのこれまでの歩みを振り返りながら、役者としての魅力に迫っていく。
■唯一無二の輝きを放つ草なぎ剛の歩みと代表作「フードファイト」
1991年に、SMAPのメンバーとしてメジャーデビューを果たした草なぎ。個性豊かなメンバーが揃う中で、俳優としての確かな実力を軸に存在感を発揮し、バラエティ番組でMCを務めるなど幅広い分野で活躍してきた。韓国語を自在に操るなど多彩な才能を持ち合わせる一方、スターでありながら親しみやすいキャラクターも魅力の一つとなっている。
俳優としては、映画「黄泉がえり」(2003年公開)やドラマ「いいひと。」(フジテレビ系、1997年放送)、「僕の生きる道」(フジテレビ系、2003年放送)など数々の作品で主演を務めてきた。ドラマ「海峡を渡るバイオリン」(フジテレビ系、2004年放送)では、日本放送映画藝術大賞最優秀主演男優賞や橋田寿賀子賞を受賞。さらに映画「ミッドナイトスワン」(2020年公開)でトランスジェンダーという難役に挑み、第44回日本アカデミー賞で自身初の最優秀主演男優賞を受賞している。
2016年にSMAPは解散したが、翌2017年には元メンバーの稲垣吾郎や香取慎吾とともに「新しい地図」として新たな一歩を踏み出した。さらに個人で開設したYouTubeチャンネルは、登録者数110万人超えを記録(※3月27日時点)。これまでの枠にとらわれない形でファンとの接点を広げるなど、新しいファン層の開拓にも精力的に取り組んでいる。
そんな草なぎの代表作の一つが、ドラマ「フードファイト」(日本テレビ系、2000年放送)だ。本作は、闇の大食いバトルゲーム“フードファイト”で密かに賞金を稼ぎ、自身が育った孤児院を経営難から救おうとする清掃員・井原満(草なぎ)の愛と死闘を描いた物語。
普段は寡黙で心優しい青年が、強敵相手に命がけの大食いバトルを繰り広げるストイックな姿や、「俺の胃袋は宇宙だ!」というインパクトのある決め台詞に漂う圧倒的なカリスマ性は、まさに草なぎにしか出せない空気感といえる。連続ドラマ放送翌年の2001年には、さらにスケールアップしたスペシャル版が2本放送されるなど、当時多くの視聴者から支持を集めた。

■“やわらかな人物像”が際立つ草なぎの魅力
草なぎのイメージとして広く浸透しているのは、“親しみやすい”“温厚”といったやわらかな人物像だろう。そのイメージが色濃く表れている作品の一つが、映画「BALLAD 名もなき恋のうた」(2009年公開)だ。
本作は、アニメ映画「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦」を原案とした実写作品で、春日の国の侍大将・井尻又兵衛(草なぎ)と廉姫(新垣結衣)との悲恋を描く物語となっている。草なぎは“鬼の井尻”と呼ばれるほど武勇に優れた武士を凛々しく演じ、重厚な時代劇の世界観の中で確かな存在感を示した。
一方で、現代からタイムスリップしてきた小学生・真一(武井証)の面倒を見る場面では、両親と離れてしまった少年に寄り添う姿を見せ、草なぎの温厚な雰囲気が役柄と絶妙にマッチ。さらに、廉姫に想いを寄せながらも身分の違いゆえに気持ちを打ち明けられない又兵衛の切ない表情も印象的で、草なぎの繊細な感情表現が光る場面となっている。


■“変化と成長”を見せる確かな演技力
草なぎの演技の魅力は“良い人”というイメージにとどまらない。むしろ、物語の中で人物が変化し、成長していく過程を自然に体現できる点にある。
その代表例が、『僕』シリーズ第1作目となる「僕の生きる道」(フジテレビ系、2003年放送)。草なぎが演じた高校教師・中村秀雄は、授業を淡々とこなす無気力な人物で、生徒や同僚から慕われる存在とは言い難いキャラクターだ。しかし、医師から余命1年を宣告されたことをきっかけに中村の人生は一変。絶望の中で一度は自暴自棄になりながらも、残された時間を懸命に生きる決意を固めていく。
物語が進むにつれ、中村の眼差しには徐々に生気が宿り、生徒たちと真摯に向き合う姿が力強い存在感を放っていた。さらに草なぎは、衰弱していく過程を表現するため段階的に減量を行い、終盤にはあばら骨が浮き出るほどの体形に。徹底した役作りが、作品のリアリティーを一層高めている。
また、『僕』シリーズ第2作目「僕と彼女と彼女の生きる道」(フジテレビ系、2004年放送)では、仕事一筋で家庭に無関心な銀行員・小柳徹朗を演じた草なぎ。ある日、妻の可奈子(りょう)から離婚を切り出され、幼い娘・凛(美山加恋)との2人暮らしを余儀なくされた小柳。当初こそ父親らしさを見せない不器用な人物だが、凛との時間を重ねる中で少しずつ変化し、やがて深い愛情を育んでいく。まるで別人のように変化していく小柳の姿を自然に体現した演技からは、草なぎの俳優としての確かな力量がうかがえる。

■復讐に燃える“狂気を帯びた男”を体現
穏やかなイメージとの“ギャップ”が魅力の一つである草なぎ。特に、怒りの感情を内に秘めた復讐者を演じる際の表現力は秀逸で、次第に狂気を帯びていくキャラクターでも強い存在感を放っている。
「銭の戦争」(2015年放送)、「嘘の戦争」(2017年放送)に続く、草なぎ主演の『戦争』シリーズ第3弾「罠の戦争」(フジテレビ系、2023年放送)。本作で草なぎは、衆議院議員・犬飼(本田博太郎)の秘書・鷲津亨を演じている。物語は、鷲津の息子が歩道橋から転落し、意識不明の重体となる事件から動き出す。突き落とされた可能性がある中、犬飼から事故として処理するよう圧力を受けたことで、鷲津は政治家たちの隠蔽に怒りを募らせ、復讐を決意。草なぎの演技には抑制が効いているが、その佇まいや視線からは静かに燃え上がる怒りがにじみ出ている。
本作では、“優秀な秘書”“家族思いの父親”“復讐に燃える男”という3つの顔を巧みに演じ分け、物語に奥行きを与えた。また、復讐の過程で権力に踏みつけられた弱者に手を差し伸べる鷲津の姿は、人情味あふれる人物像として強い印象を残している。
さらに、映画「碁盤斬り」では、無実の罪を着せられて藩を追われ、長屋で娘と貧乏暮らしをする浪人・柳田格之進(草なぎ)を演じた。真面目で実直な性格ゆえに変わっていく周囲にうまく順応できず、寡黙なため思いを伝えることもできない格之進。誇りが次第に重荷となり孤立していく姿には、頑固で不器用な人物像が浮かび上がる。
そんな主人公を草なぎが演じることで、時代や年齢の重みの中で“いい人”だけではいられなくなった男の苦悩が生々しく描き出され、本作で草なぎは第48回日本アカデミー賞の優秀主演男優賞を受賞した。
各作品から見えてくる草なぎの俳優としての真骨頂は、人間の複雑な「内面の変化」を生々しく表現する圧倒的な演技力にある。突然の余命宣告から生への執着を見せる男や、不器用ながらも親としての自覚に目覚めていく父親、そして深い哀しみから静かなる狂気を宿していく復讐者といった多彩な人物像を体現し、キャラクターの心情が移り変わる繊細なグラデーションを説得力たっぷりに描き出してきた。人間の光と影を映し出す草なぎの演技に、今後も目が離せない。
なお動画配信サービス・Huluでは、『フードファイト』シリーズに加え、「BALLAD 名もなき恋のうた」「僕の生きる道」「僕と彼女と彼女の生きる道」「罠の戦争」「碁盤斬り」など、草なぎの出演作を多数配信中。
※草なぎ剛の「なぎ」は、「弓」へんに「剪」が正式表記


