だれにでもチャンスがあるがバラシも多くキャッチ率は低い
その後、東京湾は1時間ほど沈黙したが、何がきっかけなのか再びサワラが火花を散らした。
イチロウにアタリが出たのを皮切りに、右トモ、左ミヨシとバラシが連続する。
到来したチャンスをモノにしたのが、右胴の間でジグを投げていたE2F取材班のトモキこと板倉友基さんだ。
「きた&~。なんだろ~」と訝がりながらリールを巻く。
竿は曲がってはいるものの、魚はちっとも走らない。
「ん~?」
船ベリに寄ると、いきなり反転してパワフルに竿を引き絞るドラグ音が轟く。
タカハシゴー船長が撃ち込んだタモに収まったのは、正真正銘サワラだった。
「40gのジグを着底させてから、そんなに早巻きしてたわけじゃないんだけど、いきなりゴゴゴッとアタリが出て~。気が付いたら釣れちゃってました~。えへへ」
ピュアな笑顔がまぶしい。
だれかにヒットすると、バババッとアタリが連続する。
が、そう長くは続かない。
「まだ群れが固まってないみたいッスね。広く薄く魚がいる感じ」とタカハシゴー船長。
続けざまに右胴の間、そして左胴の間でもバラシ。今日のサワラは食いが浅い。
「サゴシ(サワラの若魚)級が多いから、捕食がヘタなんスよ」とタカハシゴー船長が説明するそばから、ヨッシーが「きた!」と叫んだ。
すんなりと寄ってくる。船が近付いて暴れ……ず、スポーンと海面を割って飛び出してきたのは、巨大なエソ。
「最初はサワラかと思ったんだけどな~。えへへ」
すぐ後に右胴の間のお客さんも巨エソを釣った。
さらに右ミヨシでサワラらしき魚がバレた。
その直後、ついにヨッシーが本気ファイトに入った。本命のサワラだ!
「着底から10巻きぐらいしたところでフッと軽くなったんだ。ルアーを食ってきてることが分かったから、そのまま巻き続けたらドン! 最高だね!」
ヨッシーが言うように、サワラのアタリは意外なほど小さいことが多い。
そこでビックリ合わせをしてしまうと、まずバレる。
慌てずに、サワラが反転してしっかりフッキングするまで巻き続けるのが鉄則だ。
基本どおりにしっかりとサワラをフッキングにまで持ち込んだヨッシー、会心の1尾だった。
ポツリポツリとアタリはある。
見逃しは多々あれど、把握できた限りではこんな感じだ。

投げて巻くだけで釣れるからだれにでもチャンスがある
東京湾でだれもが楽しめる健全なギャンブルとは?
9時15分 右ミヨシのお客さんとトモキがサゴシをキャッチ。
9時20分 ライターのタカハシゴーにアタリ。
9時23分 ヨッシー、バラシ。
9時32分 ヨッシー、バラシ。
9時35分 イチロウ、バラシ。
タカハシゴーに2回のアタリ。
9時36分 ヨッシー、サゴシ級をキャッチ。
右胴の間のお客さんも同サイズをキャッチ。
10時17分 右胴の間のお客さんがサゴシをキャッチ。
10時45分 トモキ、バラシ。
11時00分 ヨッシー、バラシ。
11時20分 ヨッシー、海面バラシ。
タカハシゴーにアタリ。
11時36分 ヨッシー、バラシ。
11時40分 右ミヨシのお客さんがキャッチ。
11時42分 ヨッシー、バラシ。
12時23分 タカハシゴー、シーバスを海面バラシ。
14時05分 ヨッシーとタカハシゴー、ほぼ同時にアタリ。
14時50分 沖揚がり。
だれかがアタリを出すとしばらく続き、パタッと止むことが分かる。
そして終盤にかけてアタリが減ってしまったことも。
この日は大潮で、干潮が10時半。
上げ潮に期待しつつ浦安沖へ移動したが、不発だった。
結局、船中10尾。
E2F取材班は、ヨッシーとトモキが2尾をキャッチし、イチロウとタカハシゴーは0尾に終わった。
「この釣りはクジ引きだから」とヨッシーは繰り返す。
「早巻きの中にポーズを入れて、食わせの間を作ったことがよかった……のかもしれないけど、そうじゃないかも(笑)。はっきりした正解が分からないんだ」
船着き場に戻ってから、ライターのタカハシゴーがタカハシゴー船長に、「釣れる人、釣れない人の差は?」と聞くと、「分かんないんッスよ」と即答だった。
「この釣りに関して言えば、腕の差ってほとんどないんじゃないかと思うんスよね~。確かにアタリが多い人は多いし、出ない人は出ない。でも、今回アタリを出せた人が次回はまったく出せない、なんてこともザラなんスよ。ヨッシーの言うとおりで、正解がないんス。船長としても同じです。昨日大釣りをしたポイントが、今日はすっからかん、なんてこともしょっゅうある。船長のポイント探しもクジ引きみたいなものだし、お客さんが釣れるかどうかも運次第。でも、こういうギャンブル性こそが、サワラ釣りにハマる方が多い理由じゃないスかね……」
やはりこの戦いは圧倒的にサワラが有利で、工夫やテクニックや経験や知恵がなかなか通用せず、神頼みなのだ。
だが、クジ引き、ギャンブルと言われるほど運要素が大きい、
ということは、逆に言えばだれにでもまんべんなくチャンスがある、ということでもある。
次回はタカハシゴー船長操船のもと、ライターであり永遠の初心者・タカハシゴーが10尾釣るかもしれないのだ。
「巻きスピードを変化させてみたり、途中で止めを入れてみたり、ブレードジグの波動もその日の食いに合わせて調整することも必要だけどね……。おれは波動が弱い順にバンブルズジグTG SLJ、ラスパティーン、バイトビーンズと3種類を使い分けてる。ブレードの大きさや形状も波動の大小にかなり影響するから、ブレードサイズは細かく調整するよ。ただ、どれが正解かは本当に分からないんだ。やってみるしかないし、そこが東京湾サワラゲームの面白さなんだけどね」
ヨッシーにサゴシ級1尾をもらったタカハシゴーは、刺身を食し、あまりのうまさに驚いた。
そして「これが自分で釣った魚なら、もっと……」と、次回へ思いを馳せるのだった。
東京湾のサワラゲームは、いくらハマっても一向に構わない、健全なギャンブルなのだ。

アタリがなくてもあきらめずに巻き続けることが大事

当日は40~50gのタングステン製ブレードジグでよく釣れた

今年はサゴシ(サワラ の若魚)もよく釣れる

