高齢者の転倒が起きやすい場所は?
高齢者の転倒が発生する場所は、自宅内が多いとされています(5)。家のなかで転倒しやすい場所としては、玄関や居間などがあげられます(6)。このような場所では、以下のようなつまずきやすい要素が多く、家具の配置によっては動線(移動時の経路)も複雑になりがちです。
大小細かな段差
電気コード
めくれやすいカーペット
床に置いてある本や新聞紙
そのほかにも階段や、床が濡れて滑りやすい浴室もバランスを崩しやすい場所といえます。自宅環境はそれぞれ異なるので、どこで転倒が起きやすいかを把握しておくことが重要です。
認知症の方の転倒を防ぐためのポイント
認知症の方の転倒を防ぐためには、どのような工夫をすればいいのでしょうか。ここでは、具体的な転倒予防策をご紹介します。
転倒が起きやすい環境の見直し
自宅内で転倒が起きやすい場所を把握しつつ、環境の見直しをしてみましょう。前述したように、転倒は自宅内で起こりやすく、とくに玄関や居間などには十分に注意が必要です。転倒を防ぐためには、以下のような工夫を検討しましょう。
居間や廊下には物を置かないようにする
動線にコンセントのコードを置かない
コードは壁や部屋の奥にまとめる
小さい段差はスロープを設置する
大きい段差の前には台やイスを設置する
廊下や階段には手すりを設置する
浴室には滑り止めマットを敷く
生活環境を確認し、危険と思われる場所を見直すことで、転倒リスクの軽減につながります。
リハビリによる身体機能の維持・向上
リハビリによって身体機能の衰えを防ぐことで、転倒予防が期待できます。また、適度な運動は認知症対策に有効という報告もあります(7)。運動内容はきついものではなく、無理のない範囲で行える筋トレや有酸素運動がおすすめです。筋トレの場合、以下のような自宅でも気軽に行える自重トレーニングで足腰を鍛えられます。
もも上げ
膝伸ばし
スクワット
かかと上げ
腹筋運動
このような運動は、実際の臨床現場でも認知症に対するリハビリとして行われることがあります。有酸素運動の場合は、負荷量が軽いウォーキングからはじめてみましょう。有酸素運動は45〜60分間の運動を週に3回行うことが推奨されていますが、難しい場合は頻度や時間を調整して、継続できる範囲で行うことが大切です(7)。家でこうした取り組みをするのが難しい場合、通所リハビリや訪問リハビリなど、リハビリを受けられる介護サービスを利用するのもおすすめです。判断に迷う場合は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみましょう。
服用している薬の見直し
服用している薬の種類や量によっては、副作用で転倒リスクが高まる恐れがあります。もし気になることがある場合には、薬の種類や服用時間の調整について早めに医師に相談することが大切です。また、医師や薬剤師から指導を受けることで副作用への理解が深まり、上手な服薬管理を行えます。服用している薬が気になる場合は、決して自己判断で服用を止めたりせず、必ず医師に相談しましょう。

