●原告「これからも郷土のために」
池上さんは判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開き、「非常に良い判決をいただいた。ハンターとしての矜持を持って、これからも郷土のために協力していきたい」と述べた。
また、近年相次ぐ熊による人的被害について、現場での緊迫感を説明し「人間が熊の被害に遭うというのは、生きたまま食べられるということ。『熊との共存』と言う人はそういう実態を知って、被害にあった人がどう思うかを考えないといけない」と語った。
池上さんの代理人をつとめた中村憲昭弁護士は「上告審では控訴審の事実認定に拘束されるのでやむを得ないが、縛りがある中でも、今回池上さんの発砲について、行政が処分することが裁量権の逸脱になるんだと判断してくれた。現場のハンターには心強い判決になる」と評価した。
●最高裁判決を受けて弁護団が出した声明の全文
本日、最高裁判所第三小法廷は、北海道公安委員会による猟銃所持許可取消処分(以下「本件処分」といいます。)を取り消す旨の判決を言い渡しました。
最高裁が差戻しではなく破棄自判したことにより、池上さんの完全勝訴が確定しました。池上さんがライフル銃を取り上げられてから7年以上もの時が経過しましたが、銃を取り戻せる可能性が高まったことは、弁護団としても評価したいと思います。
そもそも本件処分は、有害鳥獣であるヒグマの駆除という、危険な公益活動に従事したハンターの発砲行為が問題とされた事件です。臨場警察官も発砲に問題があったと考えていなかったうえ、刑事事件(銃刀法違反・鳥獣保護管理法違反)では不起訴とされたにも関わらず、現場にいなかった北海道公安委員会が池上さんの猟銃所持許可を取り消す行政処分を下したという、極めて特異な事件でした。
幸いなことに一審判決は、本来争点とは無関係であると述べつつも、事案に鑑み詳細に共猟者の証言を検討してその信用性を否定しましたが、札幌高裁は共猟者の証言の信用性に一言も触れることなく跳弾の事実を認定し、公安委員会の処分を追認して一審判決を破棄しました。札幌高裁の判決には、公益活動に従事したことへの配慮は微塵も感じませんでした。
札幌高裁が跳弾の危険性を過度に重視したせいで、有害鳥獣駆除に従事するハンターの間に不安が広がりました。ハンターを処罰の危険に晒さないために新設された緊急銃猟制度のガイドラインにも高裁判決が大きな悪影響を与えました。
本日、最高裁判決は、上告人側が上告受理申立理由書で述べたとおり、銃刀法の趣旨のみならず、住民を始めとする農林水産業に従事する者等の生命、身体、財産又は生活環境に係る被害を防止するという鳥獣被害防止特措法の趣旨にも照らし、猟銃の発射行為が同法に規定される鳥獣被害対策実施隊員であった場合で、出動要請を契機に行われたときには、猟銃許可処分の取消処分をすることが特措法の趣旨に沿わない事態を招くおそれを生じさせることになるという事情を裁量判断において考慮できると述べました。
その上で、池上さんの発砲行為は市からの出動要請に応じたものであり、公益に資するものであることなどから、上記のような事情を考慮し、裁量権の逸脱・濫用があり猟銃所持許可の取消処分は違法である旨述べました。
本日の最高裁判決は、札幌高裁判決の不当な論理を木っ端微塵に打ち砕くものです。
最高裁が本件猟銃所持許可取消処分につき裁量権行使の逸脱・濫用があると認めたことで、ハンターが有害鳥獣駆除に安心して従事出来る一助となることを期待します。 北海道公安委員会および北海道警察は、この逆転判決を真摯に受け止め、自らの過ちを認めて池上氏に深く謝罪し、銃の所持許可更新を速やかに行うべきです。

