アスベスト以外の中皮腫リスク因子

ここでは、アスベスト以外に中皮腫の発症に関わるとされる要因を解説します。
エリオナイト(天然鉱物繊維)などの鉱物
エリオナイトとは、アスベストとよく似た構造を持つ天然の繊維状鉱物で、特にトルコやアメリカの一部地域の火山性岩石の中に自然に存在しています。エリオナイトのほかに、ウォラスナイト、耐火セラミック繊維などもアスベストと同様に中皮腫のリスクになることが知られていますが、報告は少なく、かつ日本国内では、こうしたアスベスト以外の鉱物による影響は極めてまれであると考えられます。
放射線治療
がん治療の一環として受けた放射線治療が、後年になって中皮腫の発症に関与することがあります。特に、胸部への照射を受けた方で、数十年後に胸膜中皮腫を発症したという報告があります。
遺伝的要因
一部の中皮腫の発症では、遺伝的な要素が関与している可能性がわかっています。特に注目されているのが、BAP1(バップワン)遺伝子です。大変まれですが、生まれつきBAP1遺伝子の異常を持つ家系では、以下のような複数のがんの発症リスクが高くなることが海外で報告されています。
悪性中皮腫
腎がん
悪性黒色腫 (皮膚や眼のブドウ膜)
日本ではこの遺伝子異常を持つ方は大変まれとされています。
アスベストを吸引した場合の対処法

アスベストを吸い込んでしまったかもしれない、あるいは過去にアスベストを取り扱っていたことがある方が出来る対処法について解説します。
医療機関を受診する
アスベストを扱った経験があり、息苦しさや胸の痛み、長引く咳などの症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。中皮腫などのアスベスト関連疾患は、数十年の潜伏期間を経て発症するため、症状が出てから気付くケースも少なくありません。
ただし、明らかな症状がない場合に必ずしも急いで医療機関に受診する必要はありません。定期的な健康診断で胸部単純写真(いわゆるレントゲン)を撮影し、異常を指摘された際に医療機関に受診することをおすすめします。ただし、過去の曝露が心配な方は、一度医師に相談してみるのも選択肢のひとつです。
アスベストに曝露した日時を記録しておく
中皮腫は発症までに長い潜伏期間があるため、将来の備えとして、曝露の記録を残しておくことが重要です。以下のような情報を記録しておくと、診断時や制度申請時に役立ちます。
曝露した時期(年代)、作業内容や取り扱った物質、作業した建物や場所の名称、防護具の使用状況など
また、これらの情報はご家族とも共有しておくことも大切です。症状が出た場合の受診の際にも、正確な情報が診断の手がかりになります。

